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月蝕兎

外に出ると、ポラリスが再度ポータルを行使、今度はちゃんとゲートが開く。


ゲートに入ると着いた先は・・・月兎の生息地。


「月兎かあ。確かに強いし可愛いよなあ」


俺が頷くと、


「でしょ、でしょ。さあ、シルビアさんから離れて、好きなだけテイムすると良いですよ」


ポラリスが得意気に言う。


月兎、青白い色の体、真っ赤な目。可愛い系ペット人気では、上位の常連だった。


「ん〜・・・なんかしっくり来ないですね」


レイが困ったように言う。


「レイ、何か希望とかないのか?大きさとか、色とか」


「んーっと・・・リーちゃんくらいインパクトあれば」


無理だ。


「リーちゃん?それはどんなモンスターですか?」


ポラリスがきょとんとして聞く。


「えっと・・・確か・・・リヴァイアサン?」


「・・・え?」


「リヴァイアサンのリーちゃんです」


レイのお気に入りだし、主人の俺よりレイに懐いてる。世話もしてるしな。でも俺のファミリアなので、レイは連れ歩けない。譲渡はシステム上は可能だが、高い価値があるファミリアの為、あげるのも気が引ける。


「え・・・リヴァイアサンってボスだからテイムできない、というか、そもそも倒せないというか・・・」


「マスターのペットです」


「ああ、シルビアさんなら確かに」


おい、何でそこで納得した。違うからな。大陸ダンジョンのボスがポーズとる為に召喚したリヴァイアサンがボス属性付いてなかったから試してみたら行けただけだからな。


「とりあえず、リヴァイアサンクラスのインパクトのあるモンスターは、まずいないし、テイムも出来ないわ。諦めなさい」


「むう・・・」


ガサッ


茂みが揺れ、巨大な兎・・・兎?もふもふの青い毛玉っぽいのが出てくる。月蝕兎、と呼ばれるボスモンスターだ。


「テイムしてみる!」


レイがててっと寄っていき、テイムアイテムを投げつける。パシッと弾かれる。ちなみに、見た目は可愛いが、適正レベルが200以上ある、上級者殺しとか言われるボスだ。リポップまでの時間が1週間前後、と長い為、姿を見ただけでもラッキー、と言われたりもする。


ヒュッ


月蝕兎の衝撃波がレイを襲うが、ひょいっと躱す。次々と衝撃波を撃つが、ひらひらと躱している。何というか・・・見ていると1人と1匹で踊っているかのようだ。ただ躱しているだけじゃない。流れに沿って動いていて、演舞のようになっている。ついつい惹き付けられて見てしまう。良く見ると、月蝕兎も、誘導されて衝撃波を撃ってる感じがある。


30分も踊っていただろうか。月蝕兎がへたり込む。魔力切れ、だ。レイがえいっとテイムアイテムを投げる、が、やはりペシッと弾く。ひょっとしたらいけるかと思ったが、無理らしい。


「ボスはボス属性があるからテイムできないよー」


ポラリスの言うとおりだ。システム上無理な物は無理。


「うー・・・ねーねー、兎さん、私のペットにならない?」


ヒュッ


月蝕兎が噛みつこうとするが、レイがひらっと避ける。諦めないなあ。


月蝕兎の後ろに回り、抵抗できないようにしてから、囁く。


「『私のペットになりたい』よね?」


それまで何とか振りほどいて攻撃しようとしてた月蝕兎が、ぴくっと動く。


「『一緒に踊って楽しかった』よね。『一緒に行こう』よ」


ぴく・・・ぴく・・・震える月蝕兎。あ、効いてる。


「むー・・・」


レイが困ったように呻く。抵抗が強いらしく、突破は難しいようだ。


「あれ・・・どうなってるんだろ・・・」


月蝕兎の動きが鈍っている事に、ポラリスが信じられないといった風で呟く。


「いつかはテイムできるアイテムも手に入るかもしれない。そうなってからまたチャレンジするのがいいかもしれないな」


俺がレイにそう言うと、レイが諦めたらしく、


「・・・うん、分かった」


と言う。


で、月蝕兎を担ぎ上げる。


「とりあえずこの子はアジトに連れ帰って、テイムできるまでは飼う事にするよ」


そんなシステムはない。ボスモンスター拉致したら、再度沸くのだろうか?


「ちょ、危ないわよ?!」


月蝕兎は適正レベル200オーバーのボスだ。暴れたらかなり危険な存在である・・・が、葛藤するかのようにぶるぶる震えてるから案外大丈夫かも知れない。


「分かった。じゃあ帰ろうか」


俺がそう言うと、


「いいの?!」


ポラリスが驚く。


「まあ、アジトは広いしなんとかなるだろう」


密猟者の気分だ。


ポラリスに魔道士ギルドに送って貰い、アジトまで運ぶ。ポラリスは別れを惜しんだが、危険な存在を何時までも街の中に置くわけにも行かず、早々に別れた。目に付かないように、月蝕兎は袋に包んで持ってきた。


レイが月蝕兎を説得している。


「『きみは私のペット』だよ。『きみのご主人様は私』だよ。」


「わ、またボスが増えた」


やって来たエレノアが、月蝕兎を見て言う。あの調子ならその内ペットにできそうな気もする。レイがまたテイムアイテムをかざし・・・集中する。光が集まり・・・テイムアイテムを月蝕兎に投げつけると・・・光の渦が月蝕兎に吸い込まれ、テイムが成功した。・・・まだ何か知らないスキル持ってそうな気がする。


「やった、成功した。よろしくね!」


「きゅ・・・きゅう・・・」


ぐでっとして月蝕兎が鳴く。


「お疲れ様」


ぽんぽん、とレイの頭を叩くと、


「ありがとう!」


レイはにっこり微笑んだ。

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