07 人生は簡単に幕を引く。
R15から脱してしまうかも知れなかったので、急遽後半の内容を変更いたしました。ご了承ください。
浴室とトイレを仕切る、防水加工された、少し厚目のベージュのカーテン。
この部屋は本来、一人用として設計されているため、浴室とトイレを仕切る壁を節約し、カーテンとして用いている。
だから、当然このような事故が発生する可能性を、俺は最初に考慮すべきだった。
いや──。考慮したからこそ、ナツメが就寝した後に入浴を試みたのだが。
その試みも失敗に終わった。
いや、大変なのはこれからだというのは、だいたい俺にでも予想はできた。
二人の間に、沈黙が流れる。
ナツメの視線が、俺の顔からだんだんと下に降りていく。
そしてその双眸は、ウィリアムのとある場所で停止した。
「こ、この……」
不味い!ここで叫ばれたら本当に不味いことになる!
「いや、ちょっとまってこれは──!?」
──理不尽すぎるだろ!?
ナツメの体から黒いもやが現れ、それが拳を形成する。
「──変態!」
その鉄拳は俺の顔面を叩きつけた。
「──ふぐおっ!?」
明滅する視界。
頭の中に流れ込む情報の渦。
しかし、俺はそれに気がつくことなく、頭を壁に叩きつけられて気絶した。
「はぁ、はぁ、はぁ……や、やってしまった……」
そこには、頭を抱えた幼女の姿があった。
気がつくと、俺は寝室のベッドで眠っていた。
「俺は一体……」
少し頭がぐわんぐわんと揺れる。
頭痛はするが、しかし吐き気はない。
ふと、横を見ると、椅子に座ってベッドにうつ伏せになっているナツメの姿が見えた。
このままだと風邪を引くだろうと、俺は彼女に布団をかけてやった。
俺の服は着替えさせられていたので、おそらくそれも彼女がしてくれたのだろう。
……もしかして、見られた?
「いやいやいやいや」
俺は頭を振って、思考を強制的に終了させた。
「んぅ……なんだ、起きていたのかウィリアム」
「あ、起こしちゃいましたか?」
「いや、かまわん」
彼女は目を擦ると、くしゃみをひとつした。
「ひくしゅん!……あー、その、悪かったな。いきなり殴ったりして」
「いえ、大丈夫ですよ」
彼女にティッシュを渡して、俺は首を横に振る。
「そうか、そう言ってくれて助かる」
「そういえば、ずっと看ていてくれてたんですか?」
すると、彼女は頬を赤らめて、そっぽを向いた。
「ま、まぁな。私も、ノックしなかったことは悪いと思っているし、これくらいはな」
罪悪感、というのを経験したのは、これで人生二度目か。
恥ずかしそうにそう言う彼女に、俺は何か微笑ましいものを見たような気がして、少し笑みがこぼれた。
「何だ、その顔は?気持ち悪いな」
「酷くないですか、それ!?」
こうして二人の夜は、無事に明けていく。
もし、そうだったらいいな、と、俺は思った。
そう思い直した切っ掛けというのが──
ピンポーン!ピンポンピンポンピンポーン!
──このチャイムであった。