表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の墜落詩  作者: 忍霧麒麟
失楽園の王子
8/38

07 人生は簡単に幕を引く。

 R15から脱してしまうかも知れなかったので、急遽後半の内容を変更いたしました。ご了承ください。

 浴室とトイレを仕切る、防水加工された、少し厚目のベージュのカーテン。

 この部屋は本来、一人用として設計されているため、浴室とトイレを仕切る壁を節約し、カーテンとして用いている。

 だから、当然このような事故が発生する可能性を、俺は最初に考慮すべきだった。

 いや──。考慮したからこそ、ナツメが就寝した後に入浴を試みたのだが。


 その試みも失敗に終わった。

 いや、大変なのはこれからだというのは、だいたい俺にでも予想はできた。


 二人の間に、沈黙が流れる。


 ナツメの視線が、俺の顔からだんだんと下に降りていく。

 そしてその双眸は、ウィリアムのとある場所で停止した。


「こ、この……」


 不味い!ここで叫ばれたら本当に不味いことになる!


「いや、ちょっとまってこれは──!?」


 ──理不尽すぎるだろ!?


 ナツメの体から黒いもやが現れ、それが拳を形成する。


「──変態!」


 その鉄拳は俺の顔面を叩きつけた。


「──ふぐおっ!?」


 明滅する視界。

 頭の中に流れ込む情報の渦。

 しかし、俺はそれに気がつくことなく、頭を壁に叩きつけられて気絶した。


「はぁ、はぁ、はぁ……や、やってしまった……」


 そこには、頭を抱えた幼女の姿があった。


















 気がつくと、俺は寝室のベッドで眠っていた。


「俺は一体……」


 少し頭がぐわんぐわんと揺れる。

 頭痛はするが、しかし吐き気はない。


 ふと、横を見ると、椅子に座ってベッドにうつ伏せになっているナツメの姿が見えた。

 このままだと風邪を引くだろうと、俺は彼女に布団をかけてやった。

 俺の服は着替えさせられていたので、おそらくそれも彼女がしてくれたのだろう。


 ……もしかして、見られた?


「いやいやいやいや」


 俺は頭を振って、思考を強制的に終了させた。


「んぅ……なんだ、起きていたのかウィリアム」


「あ、起こしちゃいましたか?」


「いや、かまわん」


 彼女は目を擦ると、くしゃみをひとつした。


「ひくしゅん!……あー、その、悪かったな。いきなり殴ったりして」


「いえ、大丈夫ですよ」


 彼女にティッシュを渡して、俺は首を横に振る。


「そうか、そう言ってくれて助かる」


「そういえば、ずっと看ていてくれてたんですか?」


 すると、彼女は頬を赤らめて、そっぽを向いた。


「ま、まぁな。私も、ノックしなかったことは悪いと思っているし、これくらいはな」


 罪悪感、というのを経験したのは、これで人生二度目か。

 恥ずかしそうにそう言う彼女に、俺は何か微笑ましいものを見たような気がして、少し笑みがこぼれた。


「何だ、その顔は?気持ち悪いな」


「酷くないですか、それ!?」


 こうして二人の夜は、無事に明けていく。

 もし、そうだったらいいな、と、俺は思った。

 そう思い直した切っ掛けというのが──


 ピンポーン!ピンポンピンポンピンポーン!


 ──このチャイムであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ