表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の墜落詩  作者: 忍霧麒麟
プロローグ
2/38

01 死という考え方

 落ちる。

 墜落していく。

 とても、とても高い塔の上から、背中越しに風を切って、僕は落ちる。


 死を悲しみ、嘆く者がいる。

 反対に、死を喜び、歌う者がいる。

 人の感覚は、人それぞれだ。


 例えば質問してみようか。

 これから問う質問に対して、心を沈めて良く考えてほしい。


 貴方は何らかの罪を犯し、刑務所へと放り込まれた。

 丁度同じ時期に、異性でも同性でも、気の合う人が同じ独房へ放り込まれた。

 貴方はその人と、親友ないしは家族のように思い慕える中になった。

 何十年も共に暮らしてきて、互いの性格や、良いところ、悪いところ。癖や寝言なんかまで、お互いに笑い合える仲だ。

 そんな友人が、数十年たったある時、刑務所から解放されることとなった。

 ただし、それによって、あなたはもう二度とその人と会うことは許されない。今世に限らず来世までも。

 絶対に出会うことは二度とない。


 あなたはそんな友人の出処を喜びますか?嘆きますか?


 ……つまり、そういうことだ。


城山シロヤマ……僕はきっと君を──」


 声が風に掻き消され、塔の上に縛られた彼女には、もう僕の言葉は届かない。

 彼女の悲しい視線が──赤い瞳が、僕の死を嘆いていた。


 ……いや、哀しんでいた。


 ──死んでしまうことを嘆くか喜ぶか。人によってはさまざまな意見が飛び交うことだろう。


 例えば、大半の人は嘆く。だが、そう思っているのに、実はそうでなかったりする人もいる。

 言うなら、何をどう思うかは、そのときにならなければわからないということだろう。


 青くなった肌に、枯れた滴が伝っていく。


 僕は落下を続けた。

 未だに続くこの感覚は、正直息が詰まっているようで苦しい。

 耳元を空気が掠めていく。

 身体が塔の石の壁にぶつかって跳ねる。

 気絶しそうな恐怖と、苦しい喉と、熱い痛み。


 そんな中で、僕はふっと目を閉じた。

 意識がこの世から遠退いていく感覚が全身を襲った。

 やがて意識は暗闇へと吸い込まれていき、気絶する。


 僕は、地面に激突する大ダメージを食らってしまう前に、意識を手放した。

 そして、それから向こうの世界では、僕の脱け殻となった身体がぐちゃりと音を立てて、破散した。


 僕は……俺は、墜落しながらそんなことを考え、やがて件の如く死亡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ