表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生魔王の墜落詩  作者: 忍霧麒麟
失楽園の王子
13/38

12 寮の幽霊-1

 ──恐怖にも似た驚愕が、俺の心を支配した。

 それは例えるなら、ティッシュペーパーの角から、吸収した水が、全体に広がっていくような感じだ。


 相手の見た目は、さっきも言った通りたた●神みたいな感じである。

 といっても、さほど大きくはない。

 全長は俺より頭1つ分低いくらいで、液体というよりゲルに近い感じのナニカが、そこらから溢れだしている。


 ……はっきり言って、気持ち悪い。


「……どうしたの、おにいちゃん?」


 再び、あの声が発せられた。

 先程のどす黒い何かとは違う、透き通った音声だ。


 そういえば、映画でもこれを手で引きちぎってるシーンあったよな。

 でも、これをさすがに素手でっていうのは、なんか嫌だな。

 こう、ティッシュとか軍手を通してさわっている感じもなんかグニグニしてそうで気持ち悪いし。


「……ねぇ」


 そう思案していると、ソレはずるりとこちらに迫ってきた。


「ひっ!?」


 思わずそんな声が漏れた。


 いや、だって今、じゅるりとかずるりって音が聞こえたんだそ?

 思わず悲鳴が漏れたとしても、それは勘弁してほしい。


(しかし、そうだな、これはどうだろうか?)


 俺は、いつの間にか使えるようになっていた、黒いモヤモヤしたやつが手の形になって、物とか掴める魔法を発動した。


 手で触れるのが嫌なら、棒とかでつつけばいい。


 ウィリアムはおそるおそる、その手であの黒いゲル状の物体を引き剥がしていった。

 ゲルみたいなあれは、簡単に引っこ抜くことができた。

 抜いていく間に、それが衝撃緩衝材だっけ?あのプチプチを潰していくような気持ち良さを覚えていった。


 しばらくそうしてそのゲル状の触手みたいなやつを引きちぎっていると、床がびちびちとそれで水溜まりみたいなものができる頃には、彼女の頭頂部が、その隙間から垣間見えていた。


 青い頭髪だ。

 艶のある、青の勝った黒髪である。

 クラスの中にも、緑とかピンク色の髪の毛の生徒も居たし、ここではそれが普通なんだろう。


 そんなことをしげしげとおもいながら、作業を続けた。

 作業を続けること十数分。

 結構な眠けが自身を襲うころ、ようやく彼女の全体が、あの触手から解放された。


 すると、それまで黙ってじっとしていた彼女が、ついに口を開いた。


「……ありがと、おにいちゃん」


 おにいちゃん、か。

 これはちょっと、危ない香りがする発言だな……。

 よし、呼ばせ方を変えさせてみるか。


「どういたしまして。俺の名前はウィリアム・マーキュライトだ。ウィリアムって呼んでくれ」


「……わかった、うぃる」


 いきなり略称か……。

 ま、いいだろう、別にそれくらいは。


「……おなか、すいた。うぃる、ごはん」


 すると彼女は、こちらの顔を見上げながら、そう言った。


 あ~、そういえばそんなこと言ってたっけ。

 こんなアクシデントがあると思ってなかったから、風呂上がったら作ってやるって言っちゃったんだよな……。


(ま、いっか。それくらいは)


「わかったよ」


 ウィリアムはそう答えると、ダイニングへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ