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ペテン師の流儀

 副将軍の銃から放たれるすさまじい魔力を感じて、俺の右手がうずきはじめた。

『早く撃て』とわめくその手を抑えながら、俺は間を持たせるための嘘をついていた。


「副将軍、俺が見聞きしたことは、何かの間違いだと言ってください。アーディナル東軍の副将軍ともあろう者が、アイズマールのようなマフィアに与するなんて! いったいどんな理由があってこのようなことを!」


 炎を背にした副将軍の顔には吸い込まれそうなほど暗い影が落ち、感情の動きも、呼吸も、一切読み取れなかった。

 目だけが生命を持っているかのようにギラギラと輝き、口を開くわずかな動作すら読み取ることはできなかった。

 ただ、漆黒のディスプレイに浮かび上がる緑色の文字のような無機的な声だけが、副将軍の意思を忠実に伝えた。


「与する? いったい何の事だね。彼の一族は中世の時代よりミッドスフィアの王族の影の仕事をこなしてきた海賊団。市民革命のときに我が一族を命がけで守り抜いた優秀な騎士達だよ」


 はっ、これは笑わせる。あのアイズマールが、騎士様だって?

 だが、これではっきりとした、ブーレンス副将軍だったんだ。

 アイズマールの背後にある後ろ盾って言うのは。


 そういえば、サテモが言っていたな、あいつらの背後にいるのは王族の末裔だとかなんとか。

 しかもアーディナル46勇士か。

 くそったれ、賞金稼ぎギルドなんかが迂闊に手を出せないわけだ。


「本当に、あんただったのか」


 同じ質問を繰り返しながら、俺の手は強く銃を握り締めていた。


「君は今の平和が帝国軍という外敵の脅威によって保たれている仮初の物だという事を理解しておらんようだな。君が除隊して遊びほうけている間にも、世界の情勢は刻一刻と変わっているのだよ」


 不意に、横合いから銃撃を受けた。

 俺は適当に2発そちらに撃って、すぐにコンテナの陰に隠れた。

 弾の残りは約200発程度、相手の人数はそれをはるかに上回っている。


 ここから逃げるしかない。

 銃倉を取り替えて、新しい弾を補給した。

 俺はコンテナの間を駆け巡り、行く手をふさぐアイズマールの部下達を次々と倒していった。

 もういくら賞金を手に入れたかなんてわからない。

 今までの苦労がうそだったみたいに、俺の獲得賞金は桁を飛ばして膨らんでいった。


 再び磁気嵐のような魔力を感じて、俺は慌てて振り返った。

 あまりに濃密な魔力で、向こう側の様子が隅々まではっきりと見えたほどだ。


 コンテナの向こうに副将軍の立ち姿が見えた。

 銃の先端が火を吹き、光線のような軌道を残しながら素早く視界を横切っていく。


 その直後、積み上げられたコンテナの山が爆発で一気に崩された。

 炸裂弾でもあんな火の玉は吐けない。

 まるで強力な魔法を放っているような破壊力だ。


 副将軍の声が、倉庫内に稲妻のようにとどろいた。


「見ているか、リゲル=シーライト! これがマクファーレン式三価魔法銃、通称MLPKだ! 通常の二価魔法銃の性能にくわえ、薬室チャンバーに装填された銀の弾におよそ3・65sppmの高濃度で魔力圧を加える事によって、弾に第一級魔法までの破壊力を付与することを可能とした我が東軍の新兵器だ!」


 副将軍は再び弾を装填した。

 鳥肌が立つような電子音と供に、銃の放つ魔力が急激に高まっていく。


「君はよもや帝国軍の恐ろしさを忘れたわけではあるまい。我々は終戦直後から、死に物狂いで奴等に抵抗しうる術を模索してきた。『現実世界リアル・ワールド』と唯一まともに渡り合うことのできたあの英雄はもうこの世界にはいないのだ! そして我々がミッドスフィアの魔石工学の粋を集結し、30年の歳月をかけてようやくたどり着いた答えがこのMLPKだ!」


 俺は壁に背をついて身を隠し、弾を補給する事に専念した。

 あと160発。

 銃にこもった熱で、指の皮がむけていた。

 ちくしょう、火傷なんか気にするな。

 この弾をこめられなければ死ぬんだぞ。


「混乱を避けるために軍関係者以外には伏せられている情報だが、君には特別に教えてやろう。

 停戦から30年間の長きにわたって動きを見せなかった帝国軍が、つい先日、アーディナルの海域で軍艦を走行させている現場が目撃されたのだ。これは間違いなく、世界大戦が再燃しようとしている兆候だ!

 ところがいざ戦争が始まろうとしているときに、肝心の武器の素材となる魔石は価格が急騰し、さらにミッドスフィアは国外労働者の流入によって慢性的な不況に陥っている!

 この重大な局面で平和ボケした賢者の塔は軍事予算を大幅に削減し、財政の建て直しと社会保障に莫大な予算を充てるとぬかすものだからな!

 ふざけるな、戦争はまだ終わってなどいない! 否、数多くの勇士の犠牲を生んだまま、この戦争をただの痛み分けなどで終わらせてはならないのだ!」


 ふざけるな、どんな理由があろうが、お前のしでかした事は立派な犯罪だ。

 相手の声に耳を貸さぬよう、冷たい壁に背中を張り付け、気持ちを静めながら弾倉に弾をひとつひとつこめていった。


「リゲル=シーライト君、実のところ、私は君に感謝しているのだよ。君が伝説の剣を我々の元に持ってきたことにね。

 我々の公算では、なんと剣の柄に埋め込まれた石ひとつで3000丁ものMLPKの開発予算が浮く! この剣1本で、最新兵器を装備した1個師団をそろえるには十分な売値になるのだよ!」


 弾を込める指がどうにも震えて仕方がなかった。

 ちくしょう、なんでこんなに震えるんだ?

 地面が揺れているのか、それとも俺が震えているのか?


 コンテナのすぐ向こうを敵がうろうろしている。

 相手の銃は魔力が限界まで高まっている。

 残されたこの壁もいつ吹き飛ばされるか分かったものではない。

 そりゃそうだ、この状況下で落ち着いて作業していられるはずがなかった。


「時代遅れの剣のために、むざむざ自分を犠牲にするなど、じつに英雄気取りのイーサファルト人らしいじゃないか!

 そういえばアイズマールに襲わせた憲兵団大佐は、君と親しい間柄の者だったそうだな。敵討ちでもするつもりだったのかね! これはますます泣けてくる!

 だが君に英雄になることは無理だろうな。しょせん賞金稼ぎに落ちぶれた元軍人ごときは、本物の英雄の足元にも及ばんのだよ! ついでに君に与える予定だった報奨金も、すべて軍事開発予算にまわすことにしよう!」


 俺は弾を込めるのを諦め、弾倉を銃に戻した。

 もういい、予定変更だ。

 残り7発であのジジイを仕留めてやる。


 勢いよく物陰から飛び出し、兵士達の群れの奥にいる老人に向かって発砲した。

 白髪の老人は射程範囲ぎりぎりのところで俺に背中を向けていた。


 この距離で外す俺ではなかったが、相手もさるものだ。

 彼はまるで踊るような足さばきで身をかわし、さらには銃声だけを頼りに俺の方にぴたりと銃口を向け、さらに空中に座るような不安定な姿勢から一発、精密射撃を放ってきた。


 目の前で何かが一瞬白く光った。

 恐らく老人の放った銃弾だと思われる。


 その光は凄まじい速度で膨らみ、床や、コンテナや、目に見えるものすべてに霰のような氷の塊をぶちまけた。

 俺は辛うじて目を護ったが、銃弾に右足を貫かれ、走っていた勢いのまま横に転び、凍てついた床の上を滑っていった。


 とつぜんすさまじい冷気を浴びて、指先に力が入らなくなった。

 2丁の銃は不覚にも俺の手を離れて、くるくると回りながら床の上を滑っていった。


 震えながら見渡すと、周囲は一面氷が張って、辺りは霜が降りたように白くなっている。

 どうやら魔法の種類も変更できるらしい、凍結魔法アレッチだ。


 全身が凍り付いて、しかもどんどん動きづらくなってきている。

 かじかんだ手で脚を押さえると、まるで氷のように冷たい。

 痛みはそれほど感じなかったが血が大量に出ていて、それが次第に凍りついて地面に張り付いてゆく。


 血が凍るとかどんな魔法だ、身動きひとつ取ることさえ困難だった。


 くそったれ、レベルが違いすぎる。

 薬室から弾を抜いて、魔法銃を兵士に手渡す副将軍の姿が見えた。


 鹿でも仕留めたように満足げな笑みを浮かべていた。

 どこかで観察していたのか、副将軍の騎士アイズマールが不快な笑い声を立て俺の様子を見に来ていた。


「ふひひひひ、お見事で!」


 なにか汚らしい言葉を喚いていたようだったが、耳が遠くなっていてなにも聞こえなかった。


「後始末をしておけ」


 副将軍はそういい残して去っていった。


 時代の壁の厚みを感じながら、俺は冷たい床に額を押し付けていた。


 確かに、こんな強い火器があれば、英雄なんかいなくても帝国とまともに戦えるのかもしれない。

 冷たい時代が再びやってこようとも、この世界を守り切ることだってできるのかもしれない。


 でも、忘れたのかよ。

 英雄がいた頃の俺たちは、もっと強かったじゃないか?


 帝国の占領下で武器を満足に調達できなかった時代も、それぞれの国がお互いに力をあわせてなんとか集めきったんじゃないか。

 金なんかなくても、お前たち連合軍には人の心を強く惹きつける力があったじゃないか。


 お前たちがこの30年で失った一番大切なものは、決してたったひとりの英雄なんかじゃないぞ。

 それはお前達自身の正義だ。

 情けなくて涙が出そうだった、とても俺に言えた義理はないじゃないか。


 できれば、副将軍の背中に向かって銃を構えるか、大声で罵ってやりたかったが、もうまともに喉を震わせることも出来なかった。


 腹にブーツの先端で蹴られる痛みを感じて、俺はバリバリと地面から引き剥がされた。

 仰向けに寝転がると、どうやら後始末を任された兵士が数名、真上から俺のことを覗いていて、そのうちの1人が俺に向かって銃を構えているらしかった。

 俺の負け犬の遠吠えは、ただ白い息になって消えただけだ。


 ああ、この世とも本気でお別れみたいだな。

 ずっと昔に誰かに言われた気がするが、やっぱり俺は碌な死に方をしないみたいだぜ。


 誰に言われたのかは、とうとう思い出せそうにない。

 まあいい。

 いずれにしろ、俺みたいな悪党に残された人生はそれほど長くはなかっただろうからな。

 とうとう観念して、俺は目を硬く閉じた。


 しかし、銃撃はなかなかやってこなかった。


 死の間際に、俺は異様な物音を耳にした。

 どこかで聞いた覚えのある、獣の唸り声のような音。

 それと共に、激しい地鳴りが地面から伝わってくる。

 どこか遠くで銃を撃つ音も混じっていた。


 最初は耳鳴りかと思ったが、どうやらそうでもなさそうだ。

 凍ったまつげをこじ開けながら目を開くと、兵士もなにかの異変に気づいて辺りを警戒していた。

 そいつらの間で、天井から垂れ下がった氷柱がぐらぐらと揺れているのが見えた。


 俺がまだ生きている、ということも異常なことだったが、外では何かもっと異常なことが起こっているらしい。

 今の内だ。


 今すぐ、ばっと身を起こして、目の前の兵士の銃を奪って、ここから逃げ出すんだ。

 俺の右手はしきりにそううずいているが、無茶言うな。凍り付いて動けないんだぜ。


 ほら、お前ら行けよ?

 もしお前ら裏切り者の兵士たちが副将軍の選りすぐりの人材だったら、要人の安全確保を最優先にするべきじゃないか?


 こんなところで、どうでもいい雑務をこなしている場合じゃないぞ。

 ほら、行った行った。


 俺の得意技である二枚舌も出せなかったが、目の前の兵士達は軽く頷き交わして、そういった内容の事を確認しあっていたようだった。

 数名の兵士たちがその場を離れていった。


 そして、残った兵士がさっさと俺の後始末を終わらせることになったらしい。

 俺の胴体を跨ぎ、動くことの出来ない俺の額に向かって、冷たい小銃の先端をつきつけた。


 ちょっ、待て、まじか、心の準備が……。


 俺が目を閉じる間もなく、耳を劈くような銃声が響いた。

 俺に銃を向けていた兵士も、驚いた様子ですばやく体をひねり、銃を窓のある方向に構えた。


「敵襲……散れっ!」


 どうやら、この建物が銃撃を受けたらしい。

 兵士達は動くことのできない俺を置いて、次々と物陰に身を潜めた。


 俺の目の前を4、5発の銃弾が火の玉のようにびゅんびゅん飛んでいくのが見えて、生きた心地がしなかった。

 ガラスの破片が辺りに散乱する音がした。

 ここからじゃ窓が見えない。

 くそっ、一体何が起こっているんだ。


 兵士たちはコンテナの陰に隠れ、ずっと外の様子を伺っていた。

 リーダーは残りの兵士に手で合図をした。


「GO! GO! GO! GO! GO!」


 銃を構えた兵士達は背を低くして、1人ずつ物陰から順に飛び出していった。

 どうやら全員ここから出ていくらしい。


 やれやれ、命拾いしたぜ……と思ったそのとき。

 天井の氷柱の1本がぽきりと折れて、真っ直ぐ俺に向かって落ちてくるのが見えた。


 おい、ウソだろ――。


 見た事もないぶっとい氷柱が、俺の身体の中心目がけて落下してきた。

 これは直撃するだろうなという予感はあったが、不思議と恐怖心はなかった。

 氷柱が胸につき刺さって死ぬなんて、地中海育ちのイーサファルト男児にはあまりに非現実的で、実感なんて沸いてこなかった。

 けれども、あの大きさの氷が直撃したら、普通に死ぬだろうな。

 そう思ってぼんやり見上げていると、さっきの兵士の顔がひょっこり現れて、その氷柱の前に立ちふさがった。

 俺の身体を跨ぎ、ふたたび頭に狙いを定めたその兵士の兜に、氷柱が直撃し、粉々に砕けて辺りに散らばった。

 兵士は俺に覆い被さるようにばったりと倒れた。


 ――生きてやがる。

 やれやれ、世の中ほんっとうにどうなるか分かったもんじゃないな。


 外ではまだ銃撃戦が続いている。

 倉庫の中に、凍りついた俺と倒れたその兵士だけが取り残されていた。


 生を実感するにはあまりにもギリギリで綱渡り的な状況だったが、俺はまだ、ほんの少しだけ生きていくことが許されたみたいだ。

 俺は渾身の力を込めて、再び体を動かそうとした。


 すると、氷の戒めも徐々に溶けていった。

 体の下で、みしみしと音を立てて溶けている。

 どうやら凍結魔法そのものが解け始めているらしい。

 安心したのもつかの間、天井からは次から次へと氷柱が落ちてきた。


 俺は何とか地面から背中を剥がして、撃たれた右足を引きずりながら、その場から離脱した。

 氷柱の直撃は免れたものの、岩みたいな破片が飛んできて腹や背中を容赦なく打ちつけた。


 冷えきって感覚のない体を、どうにかして引っ張ってゆき、床の上に丸く残った氷のフィールドから出ていった。


 銃傷はたいしたことない、このぐらいの傷なら戦争で嫌と言うほど経験してきた。

 問題なのは、全身がひどい凍傷になっていたことだ。

 はやく治療をしなければ、手足が回復不能になる。


 道具袋から液体ポーションを取り出したが、どうやらポーションまで凍結していたらしい。

 瓶を逆さに振っても出てこなかった。

 仕方なく、ザクセンの薬草売りに貰った薬草を噛み砕こうとしたが、これが煙草くさい上になかなか唾液が出てこなくて焦った。


 どうにかこうにか応急処置をしている間にも、倉庫の外の銃撃戦はますます激しさを増していった。

 ルイーズが麓から援軍を呼んだのだろうか。

 だとしても、この妙な動物じみた唸り声は何だ。

 俺は激痛と寒さに耐えながらふらふらと立ち上がり、窓の外を見やった。

 身を隠しながら、彼等と激しい闘争を繰り広げている連中の姿をそっと見たとき、思わず口から言葉がこぼれた。


「あ、牛か」


 声さえ出れば、あらんかぎりの声を振り絞って「牛か――――っ!」と叫び出していただろう。

 恐ろしい光景だった。

 山奥の集積場一帯を、とんでもない数の牛頭のイリオーノの群れが埋め尽くしていたのである。


 おいおいおいおい、いったいなんでこいつらがここにいるんだ?

 バーリャで出会ったペテン師族じゃない、よく見ると、どれも本物の牛頭だ。

 そいつらに必死になって銃を撃ち続けているのは、アイズマールの部下達だった。


 牛達は、銃弾をまともに食らってもゆるゆると前進し続け、もーもー唸りながら杖を振りかぶって攻撃を繰り出し、その数と体力で敵を圧倒していた。

 そのうち、牛達のリーダーが前に進み出てきた。

 どこかで水もたらふく飲んできたのか、喉の毛皮からぽたぽたと水が滴っている。

 銃弾を体に食らってもびくともしない、泥の壁のように奴らの前に立ちはだかって、空に向かってけたたましい声で吼えた。


「ウオオオオオオオモオオオオオオオオオオッ!」


 ビリビリビリビリッ!


 倉庫の窓が一斉に震えて、そのうち何枚かは割れた。


 それは初見ではない俺もちょっと引くほどの破壊力だった。

 アイズマールの部下達は次々と武器を取り落とし、地べたに座り込んでしまった。


 すっかりあのペテン魔術にかかってしまった様子で、口々に「お、オーノッ(化け物)!」と叫びながら退散していった。

 やったぜ、さすがはペテン師族のリーダーだ。そのゴテゴテに飾られた杖が、今は神々しくさえ見える!


 リーダーは、馬のようにぶるると鼻を鳴らすと、空を仰いで、何かを叫んでいた。

 咆哮とほとんど変わらないおぞましい声で、耳慣れた単語なんてひとつもなかったが、俺には連中が呼びかけている相手だけははっきりとわかった。


 彼の咆吼に合わせ、びりびりと震える、まるで液体のような魔力がある。

 俺は、地上の牛達がつぶらな瞳を向けている方に視線を向けた。


 おそらく、麓の村との通信に使われるのだろう、ひときわ背の高い塔。

 屋上に飛空艇が待機している、その塔の外壁をぐるぐるとらせん状に登ってゆく階段の途中に、牛達に追い込まれ、苦渋の表情を浮かべて大地を見下ろす副将軍の姿があった。

 その手に提げているケースから、魔王の剣の凄まじい魔力が発せられている。


 どうして誰も気づかなかったんだ。

 英雄の剣を返還することになったのは、あの剣がある東部に大量の獣人たちがあつまってきて、大混乱になったせいだったじゃないか。

 剣を運んでいた列車はイリオーノの蛮族に襲われていて、鉄砲水に気づかなかったじゃないか。

 剣をバーリャから持ち帰った英雄は、とつぜん現れた黒竜と戦って石になったじゃないか。


 サテモが動物を呼べるように、魔王の剣は、従僕である魔物たちを呼び寄せるんだ。


 そうだ、この牛頭の部族は俺と同じ『魔力の読み手』だったんだ。

 俺もこいつらも、知らず知らずのうちに、あの剣の呼び声に吸い寄せられていたんだ。


 まったく……なんて剣だよ。


 そのとき、俺の右手は塔の方から放たれる、もうひとつの異質な魔力を感じ取っていた。

 今度は熱くもなく冷たくもない、圧迫されるような力だ。


 そこかしこの影の中を、邪悪な小人がうぞうぞと動き回る気配がする。

 嫌な予感がして魔力の源を探すと、魔法を使おうとしているのは、副将軍を護る勇敢な騎士、アイズマールだった。


 アイズマールは、両足を家の土台のように広げ、両手を顔の高さにあげ、次々と複雑な手の形を作っていく。


 発声による呪文とは違って、長時間同じ形を保っていられる手印術は、同じ物質を莫大な量生み出す土魔法に向いたものだ。

 だが、これはまずい。

 あいつの練り上げている魔力の量が尋常ではない。


「あいつ、下に自分の部下がいるのもお構いなしかよ!」


 奴が使おうとしているのと同じ型の魔術は、俺も今まで何度か読み取ったことがある。

 ここにいたら、俺も巻き添えは必死だった。


 俺は最後の根性を振り絞って痛む脚を引きずり、高い場所を探した。

 コンテナの山はあらかた崩れてしまっている、ベランダだ。

 ようやく壁際の階段にたどりついた途端、扉をつき破って大量の水が倉庫に流れ込んできた。


 背後に水が迫ってきて、唐突に湧いてきた最後の力を振り絞った。

 間一髪、流れに飲み込まれるよりも早く階段を登りきる。


 モーモーと悲鳴をあげる牛や、助けを求めるアイズマールの部下たちや、持ち主のない銃や、とにかくいろんな物がごちゃごちゃになって流されていた。


 息を切らして二階の窓によりかかると、丁度アイズマールが魔法を構成し終わった後だった。

 両手の指先をそろえてぴんと伸ばし、がに股にひらいた足の方向に振り下ろすと、塔の両脇から大量の水が噴出し、空高く昇っていった。


 こいつ、山で津波を呼びやがった。

 なんて海賊らしい技を使う奴だ。

 地上では激しい渦が生じ、辺りを埋め尽くしていた牛達が瞬く間に押し流されていった。

 アイズマールの不快な笑い声がこんなに似つかわしい光景は、この世に二つとないだろう。


「ふぅーわっひゃははひゃあははひは! 恐れ入ったかァ、化け物どもォッ!」


 さすがの牛達も、この魔法にはお手上げのようだった。

 バーリャ育ちの彼らは水が弱点だ。

 銃ではびくともしなかったリーダーも杖を地面について、濁流に流されないようにするのがやっとの様子だ。


 俺の右手が、再びうずいた。

 ああ、分かっている。

 手を貸してやりたいのは山々だが、銃のない今の状況ではとても手が出せない。

 というか、牛頭の連中に手を貸したところで、俺を生かしておくかどうか、はなはだ疑問だぞ。


 塔のほうを見やると、副将軍は階段を登りつかれたのか、少し苦しそうに咳き込んで、その様子を見下ろしていた。

 満足げな笑みを一瞬浮かべたが、やがてよろよろと壁際の方に後ずさってゆき、壁に背中をぶつけた。


 その様子に、俺は眉をひそめた。

 なにか恐ろしいものでも見るように顔をこわばらせ、表情を青ざめさせ、喉をかきむしるようにおさえていた。


 よく見ると、ゆっくり体が宙に浮かんでいく。

 両足はばたばたと、まるで水中にいるようにもがいていた。


 俺がその不可解な瞬間を目撃した、唯一の人物となった。

 塔の下に気を取られていたアイズマールは、その様子に気づいていない。

 彼の背後で、副将軍は溺れてしまい、力尽きたようにばったりと倒れてしまった。


 水のない所で溺れてしまった。

 こいつは、『即死魔法ドロウン』だ。

 一体誰がこんな魔法を――。


 革のケースは、塀のない階段をがたがたと転げ落ち、塔からまっさかさまに転落していった。

 それに気づいた護衛の兵士達が慌てて飛び掛ったが、もう遅い。


 黒いケースは、丁度空と地面の中間あたりでくるりと一回転し、はずみで蓋が開いた。

 中から黄金の光をみなぎらせた剣が飛び出し、激しい水流の中にぼしゃんとしぶきを上げて落ちてしまった。

 魚みたいだった。


 ようやくその異変に気がついたアイズマールは、ゆっくりと振り向き、驚愕に目を見開いた。


「殿下ァーッ!」


 アイズマールはこの世の終わりのような絶叫を上げ、呆然とする兵士たちをかきわけて、真っ先に副将軍の元に駆け寄っていった。

 彼が抱えあげても、副将軍は目を閉じたまま、ぐったりとして動かなかった。


 あまりにも突然の主君の死に、彼を護ってきたアイズマールとその部下達は、悲痛な泣き声をあげた。

 不運、であるかのように思われた。

 まるで本物の騎士みたいに、彼等は天を仰ぎ、運命を呪っていたが、俺にはそれが剣の意思だったように思えてならなかった。


 ああ、アイズマール。

 水の精霊の前で、水なんて呼ぶからだ。


 アイズマールが魔法を中断していたため、山中をかけめぐっていた津波はあっという間に引いていった。

 周囲の禿山から流れ出た土砂で、地面は泥沼と化していたが、やがてその泥の中から何者かがむくりむくりと立ち上がってきた。


 全身泥まみれで、もはやいったい何の部族だったか分かりはしない。

 だが、それでも連中はもーもーとわめき、集積場のあらゆる方向から塔を目指して群がっていった。


 魔物達がわらわらとよじ登ってゆく塔のてっぺんで、行き場を失ったアイズマールは怒り心頭の様子だった。

 曲刀を抜き、みずから牛達と立ち向かわんばかりの勢いで、兵士達にわめき散らした。


「ちくしょう! 貴様ら、剣を探せ! 獣人ごときに後れを取るなッ!」


 塔に残された騎士達と、牛達の戦いは見物だったが、よくよく考えてみたら、どっちが生き残っても俺を生かしておくつもりはないだろう。

 これはやばいな。

 幸い水は引いているので、今のうちにさっさと退散することにした。


 痛みを堪えながら階段を降りているうちに、懐の中で何かがちゃぷちゃぷと音を立てている事に気づいた。

 どうやらポーションが溶けて使用可能になっていたらしい。

 俺は頭からそいつをかぶって傷を癒し、大洪水の後のようにぐしゃぐしゃになった倉庫の中を駆け抜けて、塔の反対側から出て行った。


 集積場から立ち去る前に一度アレルカンを取りに戻ったのだが、どうやら津波はこの辺一帯の山をかなり削り去ってしまったらしく、隠しておいた岩ごとどこかに消え失せていた。


 さんざん禿げオヤジを罵倒しながら山の中を探し回った挙句、崖の下の道にぽつんと黒い点のように落ちているケースを見つけ、安堵の息を漏らした。


 やれやれ、拳銃は2丁ともどこかにいってしまったし、あれだけ賞金首を倒したのに証拠がひとつも手元に残っていないなんて。

 まあ、命があっただけましとするか。

 ため息をついてケースを拾い上げてみると、アレルカンにしては、やたらと重い。

 ふと顔を上げると、俺のアレルカンはその少し先の道の真ん中に落ちていた。

 どうやらケースの中から飛び出していたらしく、その帯には見覚えのある黄金色の大きな剣が絡みついていた。

 さすが俺の相棒だ。

 突然ケースの蓋が開いて、中に入っていた大量の水が俺の足元にこぼれた。


 * * *


 また機嫌を損ねられると恐ろしいので、代わりに魔王の剣をケースに収めて歩いた。

 アレルカンを肩に担いでいると、まだ革のケースが配給されなかった頃を思い出す。


 水の中を泳いでだいぶん機嫌がよくなったのか、剣が放っていた魔力はまた弱まって、俺の歩調にあわせてじゃぶじゃぶと揺れていた。

 なにか得体の知れない魚が入った水槽を運んでいるような気分だった。


 やれやれ、つくづくとんでもない剣と関わり合いになってしまったもんだ。


 分水嶺を越え、乾いた道に沿ってしばらく歩いていると、いくつもの轍が残った地面の上に、さきほど眠らせておいた少年の姿があった。

 俺は思わず苦笑いを浮かべた。

 どちらの道を選ぶのかと思っていたら、どうやら少年は、まだ西にも東にも行っていなかったらしい。

 彼は道の真ん中に座り込んで、うんうんと頭を悩ませていたのである。

 少年は俺の姿に気づくと、勢いよく跳ね起きた。


「リゲルさん!」


 喉がまだ痛むのか、声がすこし涸れていた。

 俺はにっと微笑んで、剣の入ったケースを掲げて見せた。


「俺が六だぞ」


 満身創痍になった俺の姿を見て、少年は目が点になっていた。

 やれやれ、こいつは本当に泣き虫だな。

 次の瞬間には、ぼろぼろと泣き出してしまったんだ。


 この純朴な少年に俺様の大活躍を聞かせてやりたいのは山々だったが、いまはそんな時間がない。

 かいつまんで、重要な点だけを教えてやった。


「いいか、大使館では仕方がなかったのかも知れんが、連合軍に戻るまで、もう二度と、何があっても、絶対にこのケースを開くんじゃないぞ。開いても一瞬だ。この剣は魔物を惹き付ける力を持っているからな、一刻も早く連合軍に渡さないと、何が起こるか……。

 い、いや。だが、あんまり急ぎすぎてもだめだ。特に、激しく振るのは厳禁だ。どう説明したらいいのか。……とにかくこいつはデリケートで、そのくせひどく怒りっぽい。女だと思って、丁寧に扱え。わかったな!」


 そうだ、これは獣人たちを従えるバーリャの王が持っていて、はじめて意味を持つ剣なんだ。

 こんな危険な剣は、一刻も早くバーリオ達に返すべきだったんだ。

 少年は、一言一句もらさずに俺の話を聞いて、快く頷いた。


「わかった、ぜったいに開かないよ」


「殊勝な奴だ。持ってな」


 少年に革のケースを突き出すと、彼は慎重に取っ手を持った。

 そして、少年が危なっかしそうにケースを手に提げた瞬間。


 剣はぴたりと魔力を放つのをやめた。


「――……あ?」


 俺は、呆然と立ちすくんで、少年の背中を見つめた。

 ケースを運ぶ少年はまったく気づいていない様子で、水の入った桶でも運ぶように慎重に俺の先を進んで行った。

 途中で振り返って、いつまで経っても動き出さない俺を不思議そうな表情で見ていた。


「急がないんですか?」


 一瞬、俺の魔力を読む能力が無くなってしまったのかと思った。

 ちがう。

 肩にはじんじんと熱いアレルカンの魔力が今でも感じられる。

 そうではない。

 あの剣が魔物を呼ぶのをやめたんだ。


 稀にあることだったが、唐突だったので少し驚いた。

 魔石は側にいる人間が持つ魔力に反応して強くなったり、弱くなったりするという。

 ごく稀に、完全に波長を打ち消しあって魔力を失ってしまうこともあった。

 そんな確率はごくわずかだが、魔物をひきつけるあの剣を持って平原を脱出するなんて芸当を、この子供が成し遂げたことを考えれば、よほど自然だ。


 俺は、ずっと立ち止まったまま、自分の行く末を案じていた。

 このまま何事もなく、少年と一緒にミッドスフィアまでたどり着くことができれば、どうなる。

 俺の書いた自伝は第二部が発行される事になるだろう。

 それもぜんぶ嘘っぱちじゃなく、半分くらいは本物の英雄譚として……だ。


 俺は憲兵旅団大佐を救出し、軍の裏切り者と決闘し、マフィアを壊滅させ、そして最後に、奪われた剣を取り戻した。


 ミッドスフィアに永住権を取れば、西軍の刑罰も受けずに済む。

 印税で儲けて、賞金も六割手に入れば言うことなしだ。


 映画出演のオファーもすでに来ている。

 これを機に、俳優業をやるというのもいいかもしれないな。


 官邸のパーティに出席して著名人の知り合いを作ったら、リゲル=シーライトは再び別の形で世間の注目を集めることになるだろう。


 いや確かに、副将軍の事を金の亡者だの、汚い奴だのと罵ったりもしたが、あれはぜんぶ、極限状態でのことじゃないか?

 しかも、本当は口に出して言わなかったし。

 心の中は自由だ。

 言ってみれば、生理現象みたいなものなんじゃないか。

 うんうん。


 そもそも、連合軍が失った正義って何なんだよ?

 おいおい、よくもあんな小っ恥ずかしい台詞が浮かんだもんだ。

 元軍人と言っても、ただの一兵卒でしかなかった俺がよく言うよ。


 もし口に出していたら、恥ずかしさのあまりに死んでいたかもしれん。

 仮に、もしそんなものがあったとして、いまさら俺がかつての『正義』を取り戻す事に、いったい何の価値があるっていうんだ。


 汚名返上でもしたいのか?

 ウソつきの卑怯者だって言われるのが恐いのか?


 いいか、これから俺がつくウソは、すべての人が幸福になる嘘だ。

 周りを見てみろ、悪党は倒したわ、宝を奪い返したわ、少年は助けるわ。

 俺のつくウソは、誰も不幸になんかしない。

 そうだろ?


 それに、どう考えたって、俺には賞金の六割ぐらい正当な報酬じゃないのか?

 それだけの危険を、死ぬリスクを、俺はたったいま冒してきたじゃないか。


 けれど、英雄の剣が少年を持ち主として認めた途端。

 そういった考えは俺の頭から粉微塵に吹き飛んだような気がした。


 不思議な話だが、あの剣の傍に見知らぬ人影が寄り添っているような気がしたんだ。

 俺はまだ顔も知らなかったが、真っ赤な髪をして、純白のローブを身にまとった若い女だったような気がした。


 命がけで剣を守り抜いた使者の姿が目に浮かんだ瞬間。

 俺の口からは、別の言葉が出ていた。


「行けよ」


 少年は驚いて、目を丸くしていた。


「えっ」


 ――えっ、まさか、いまの俺が言ったのか?

 おいおい、おいおいおいおいおい。(笑)

 いったい何を言ってるんだリゲル。

 ぜんぜんお前らしくないぞ。


 そんなの、ありえねぇだろ。

 この俺がそんな空耳みたいな霊感に従うっていうのか?

 せっかく目の前に未来への道が開けたんじゃないか。

 この不況の世の中で、こんなチャンスは二度とめぐってこないぞ。

 行けよ。

 ほら。

 あとほんのちょっと嘘をつくだけで大もうけ、ぼろもうけ、人生ばら色だ。

 嘘をつけよ。

 頼むから、ほんと頼むから。

 ほら、もうちょっとだ。

 嘘をつけ。

 嘘をつけ。

 嘘をつけ。

 嘘をつけーーーーッ!


 俺は、軽く口を開いて、山の空気を吸っていた。

 しばらく間を置いて、アレルカンを手に取り、突然大声で騒いだ。


「ああッ、なんてことだッ……連中がすぐそこまで追ってきている!」


 俺は、背後の見えない敵に向かって身構え、大声で吼え散らした。


「行け! 少年、ここは俺が食い止めておくから、俺にかまわず行け! 後から必ず追いつくから、早く、とっとと先に、行くんだッ!」


 少年は、革のケースを両手に提げたまま、ぽかんと突っ立っていた。

 森の木々がわっさりと梢を伸ばし、小鳥たちがちちちちとどこかで囀っていた。

 背後の道にいる少年は、やがて泣きそうになって、顔を拭いながら、ぎこちなく、うん、と頷くと、剣を抱えて東の方へと走り去っていったのだった。


 俺は、何度も東の方を振り返った。

 少年とケースの姿が見えなくなるまで、ずっと見えない敵に向かって、ただ銃を構えていた。


 やがて少年の姿が見えなくなると、ようやく荷が下りた気分になった俺は、足元にアレルカンを放り出して、後ろ向きにばったりと倒れた。


 ――俺は一体なにをやっているんだろう?


 大の字になって道の真ん中に寝そべると、空は端のほうから薄桃色に染まっていった。

 真っ黒いカラスが一羽、俺を小ばかにするような鳴き声を上げて飛んでいった。


 とたんに、笑いが込み上げてきた。


 ――まあ、こんなもんだろ。俺の物語なんて。


 とりあえず、俺は泥を払いながら立ち上がり、アレルカンを肩に担いだ。


 まずは、銀貨を投資してくれた仲間達に会って、ちゃんと謝ろう。

 西軍に逮捕されたら、もうそれどころじゃないだろうからな。


 その前に、あいつらにだけは、本当のことを話しておこう。

 そうしたらたぶん、あの酒場のテーブルから、俺の良心の根っこの部分から、全部やり直せるだろう。

 これが嘘偽りのない、これがこの俺の本物の冒険譚だ。


 やれやれ、また振り出しか。

 日の暮れかかった道路の真ん中で、俺は立ち尽くし、左右に首を巡らせた。

 ……ところで、イーサファルトはどっちだ?

(まだ続きます。)

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