ー平常心ー namiya-side
「離してください!」
「んだよ、奴隷の分際で俺に逆らう気か。」
「あたしは、奴隷じゃありません!!
普通の中町人です!」
「ふんっ、お前が中町人だろうが奴隷だろうが
貴族の俺にとっちゃあ、お前は奴隷同然なんだよ」
ぐいっと男は私の髪を引っ張った。
「・・・っい、ったい!」
涙をいっぱいにして、男を睨みつけた。
「んだよ、その目はっ」
男が、私に手をあげる。
私は固く目を瞑った。
その瞬間、フワッと髪が軽くなり、
痛みが消えた。
「大丈夫?」
キラッとした太陽みたいな明るい声が聞こえる。
目を開けると、柔らかい栗色のウェーブがかかった長い髪が映る。
「え・・・?」
「私の名前は朱璃。
あなたの名前は?」
「な、ナミヤ。」
「ナミヤね。オーケ。」
朱璃という女の人は、私よりもいくつか年上のようだ。
大きな瞳に白い肌。
お嬢様のようなのに、馬を走らせて私を襲った男に逆に襲いかかる。
その姿はどんな男よりもカッコよく見えた。
あっという間に縄でぐるぐるにまかれた男を見て、
私は内心、「ザマーミロ。」と思った。
「ナミヤ、怪我はない?」
「え?
えぇ、なんとも。
それよりも、朱璃。あなたって強いのね。」
私がそう言うと、朱璃は頬をほんのり染めて
「ありがとう。」と言う。
・・・私が男だったら、ノックダウンだ。
「でも、大丈夫なの?
この男は、貴族。あとでどんな仕打ちに合うか。」
「え?
あぁ、大丈夫よ!それに、私はこういう男はだいっきらいなの。
女を自分の道具みたいに扱う男は特にね!!」
朱璃は、男にむかって睨みつけた。
「ナミヤ、髪が切れてる・・・」
「あぁ・・・さっき、この男に切られたの。」
そう、何度か抜け出そうとすると
今まで伸ばしていた髪がナイフで切られた。
そのときは、逃れることに一生懸命だったが、
今思うと、とてもショックだ。
「もったいない・・・真っ黒で綺麗な髪なのに。」
「大丈夫よ、髪はまた伸びるもの。
でも、朱璃の髪の方が綺麗よ。栗色なんて・・・
憧れちゃうわ。」
「そんなことない。
私は、黒髪のほうがよかったな・・」
「そうかな?」
朱璃にそう言われると、自分の髪が誇らしく思えた。
「髪を、整えようか。」
朱璃は腰からナイフを取り出して、私の髪を切ってくれた。
あっという間に腰まであった髪が肩と同じ長さになる。
「短いね・・・」
「大丈夫よ。
このほうが、動きやすくていいもの!」
笑って見せた。
すると、後ろから馬の音とともに大きな声が聞こえた。
「朱璃さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ゲッ・・・うるさいのがい居たこと、忘れてた。」
朱璃の言葉に、私は?マークを浮かべた。
おぉ!
奇跡の連続更新!!
次回もよろしくお願いします!!