ー朱璃 Ⅲー
「今から約、300年ほど前のことです。」
「300年?」
朱璃の問いのシナは頷いた。
「1代目王・・・つまり、朱璃のお父上の祖母のことです。」
「確か、優璃様だよね。
紅南国の初代王は女性だって聞いたことがある。」
「そうです。
その方が朱璃、あなたのひいおばあさまですよ。」
「うん・・・ひい、ばあちゃんだよね。」
「そうです。」
「でも、ひいばあちゃん・・・初代王がどうかしたの?」
「少し、長くなりますが聞いててくださいね。」
シナの言葉に朱璃は無言で頷いた。
「今から、もう何千年前のことかはわかりません・・・・・
今、西暦は2×××年ですが、これは定かではないのです。
初代王・・がまだ17歳のころ。
爆発的な火山噴火が予想されました。
いくつもの火山が噴火し、地球の島という島を全て包み込んでしまう、
といわれたほどの。
それを予想したのは、日本でした。
その頃の日本は、もっとひどかったそうです。
亜米利加 英吉利 仏蘭西
という沢山の国々の中で一番の発展国になった日本は、どこかおかしくなってしまったのでしょう。
人の足元を見るような、腐りきった世の中になっていったそうです。
そんな日本を見かねた世界の国々は当然離れていきました。
最後の最後まで味方についてくれていた亜米利加も、ついには・・・
逆ギレ・・・というのでしょうか。
日本は全ての国を敵に回したのです。
ですが、そんなときに火山噴火を予想した日本は、どうしたと思います?
どこの国にもそのことを知らせずに、自分たちだけ残ろうと考えたのです。
沢山の対策が練られました。
大きなハコのようなものをつくって、何年も暮らせるようにする。
火山をどうにかできないか。
そんななか、最終的に決まったのが人々の仮死化でした。
人を仮死の状態にして、何年も生かす。
そんな、魔法みたいなことを、当時の日本はできてしまったそうです。
そこで、何千人もの中から、人選がはじまりました。
日本人、全ての人を仮死化するには、莫大な費用がかかったそうです。
そのためには、30歳以上ははねられ、10歳以下もはねられた。
11~30くらいの人選がはじまったのです。
ですが、大体は15~18くらいだったそうですよ。
そこで、選ばれたのが初代王、優璃さまです。」
「ねえ、シナ。
そのころの日本て、この地図みたいだったの?」
朱璃が出してきたのは、古い地図だった。
「そうです。
美しい列島でしょう。」
前の、日本列島が描かれていた。
それだけではない。
亜米利加、英吉利、仏蘭西・・・
他の国・・・いわゆる、世界地図だった。
「それが、今のにほんの形になってしまったのは、
昔の、火山噴火が原因でしょう。」
「そう、なんだ。」
「初代王がいた日本も、今のような苦しい時期だったようですが
その前はもっとちがったんですよ。」
「違うって?」
「平和で、穏やかで・・・
皆で助け合って生きてきた時代が、日本にもあったのです。」
「本当?」
「本当です。
それは、初代王が何年も願ってきた、夢なのですよ。
いつか、元の日本に戻す。
その夢・・・そう思って作った紅南国・・・どこでどう間違えてしまったのでしょうね。」
「シナ・・・」
「その歌をつくった犀乃はちょうど、おかしくなってしまった
ころの時期なのです。」
歌が書かれた真っ白な紙を持ち上げてシナは言った。
「さあ、朱璃。
夏の姫の物語・・・詠ってみなさい。」
「うん。」
シナから受け取って詠った。
「風よ風よ
空色の瞳をした姫は問うた
びゅうびゅうと
疾風のごとく吹く風よ
草の声は聞こえぬか
大地の、菜の花のぬくもりは感じぬか
風よ風よ
この美しい自然の一部になってはみぬか」
「朱璃、この歌詞の本当の意味はわかりますか。」
「うん・・・わかる。」
「言ってみなさい。」
朱璃はまぶたを伏せた
「この風は、王族のことでしょう?
草の声は、農民の声だ。
大地の、菜の花のぬくもりは・・・
人の、本来持つべきの心の温かさ。」
「そのとおりです。」
「この、犀乃という女性は必死に訴えてたんだね。
王族を、うらんでたのかな・・・」
「それは違います。朱璃。
彼女はそうじゃないと思いますよ。
犀乃は初代王と仲がよろしかったらしいです。
初代王が王として定着し、10年経った頃、彼女は朱璃位の年で
よく、日本のあるべき姿を語っていたらしいです。」
「初代、王が?・・・優璃ばあちゃんが?」
「そうです。
彼女は決して恨んでいたわけではありません。
訴えたのです。これは間違っていると・・・」
「でも、お父さんも、王族・・・みんな、感じ取ることができなかったんだね。
三和じい・・・」
三和じいの胸に顔をうずめた。
「これ、朱璃さま。
赤ん坊のようですな。涙なんか流さずともよいのですよ。
貴方のお父上様はとても立派なかたです。」
「だけど、だけど・・・
この訴えを感じ取れなかった・・・
日本を立て直そうと考えてないもん。」
「そうかもしれませんね。」
「シナさま!」
「三和じい、大丈夫ですよ。
この子は何もかも、悟ってます。この年で。」
「ですが・・・」
納得のいかなさそうな顔をする美和じいにシナは優しく微笑んだ。
「朱璃。
貴方がこの世の中を変えるのです。」
「私が?」
「そうです。
初代王が夢見た世界を、貴方の手で、かなえるのです。」
「・・・シナ。」
「落ち着いたのなら、向こうで新しく入荷した書物を御覧なさい。」
「・・うん。」
てててっと三和じいから離れて書斎へ向かった。
「シナさま、あんなこと言ってもよろしかったのですか?」
「えぇ。
大丈夫だと信じましょう。
私はあの子が生まれたときから未来が見えているのです。
彼女が剣を片手に人々を誘導しているところを。
あの子が革命家だと、私自身が予言しました。」
「そうでしたな・・・」
「あの子ならやれます。
あの子は運命の星のもと生まれた神の子、ですから。」
書き終わってからの脱力感・・・
半年以上も書いてないとこうも違うって実感させられました・・・