ー朱璃 Ⅱー
「では、朱璃さま。
これを詠ってくださいませ。」
「花よ花よ
桜色の唇をした姫は歌った
さらりさらりと
あおぐとき、舞のごとく踊る花よ
花よ花よ
その姿はいつ見ても飽きぬ。」
「意味はわかりますかな。」
「そんなことわかるよ。
お姫さまが、散っていく桜の花びらを見て詠ったんでしょ。」
「そうでございます。
詳しくいうと、舞のごとくは落ちていく花びらの姿を例えてますな。
日本人は散っていく美しさが好きでございます。
だから、春の姫の物語で使われたのでございましょう。」
「ふーん。
でも、夏の姫の物語は少し色がかわってるよね。」
「おや、お気づきで。」
「うん。
だって、春では桜の美しさ、秋では紅葉の美しさ、冬では雪の美しさ。
それぞれ日本の四季の美しさを詠っているのに、
夏は海とか草とか陽の美しさじゃないくて風の乱暴さを詠ってるでしょ。
なんでなの?三和じい。」
「それはきっと、犀乃というこの歌の作者の叫びでしょうな。」
「叫び?」
朱璃はキョトンとして問いかけた。
「そうです。叫びです。」
三和じいは静かに呟く。
「ねえ、教えてよ。叫びって?
なんの叫びだっていうの?三和じい。」
「朱璃さま・・・」
「教えてあげなさい、三和じい。」
「これは、シナさま。」
「シナ!」
真っ白な衣装をまとった銀色の長髪。
女のように見える美しさをもつ、この者は
王族に仕える占者であり、朱璃の家庭教師・シナだった。
「三和じい、朱璃はもう8歳です。
この世の中におかしさを感じ始める年頃・・・
そろそろ話してあげても、いいじゃありませんか。」
「シナ・・・?」
「朱璃、今からいうことをよく、お聞きなさい。
王族の貴方に言うべきことではないかもしれません。
その小さな体で受け止められますか。」
「うん。聞くよ、シナ。」
シナは小さく頷いた。
「少し、過去の話をしましょうか。」
ナギは静かに話し始めた。
どんどんいっちゃいまーす!