【プロローグ】オルディネア大陸
はじめまして。
本作は、没落寸前の小貴族に生まれた少年ノアが、仲間と出会い成長し、やがて王都・大陸、そして世界へと歩みを進めていく物語です。
重厚な王国ファンタジーでありながら、主人公の成長を軸にした“英雄譚”を描いていきます。
どうぞお楽しみください。
遥か数千年前、このオルディネア大陸では幾多の小国と部族が互いに争っていた。
その混乱に終止符を打ったのが、一人の勇敢な戦士アルテナ――後に「英雄王」と呼ばれる存在である。
アルテナは卓越した剣技と知恵、そして人を惹きつける不思議な力を持ち、散り散りの民をまとめ上げ、大陸全土を統一した。
彼の治世のもと、人々は初めて「平和」を知ったと伝えられる。
――そして、英雄王の死から二百年後。
大陸を覆っていた平穏はひび割れ、やがて崩れ去る。
統治の理念を巡って諸侯が割拠し、王国はついに分裂した。
英雄王の偉業は次第に語り草となり、やがて子供向けの御伽話へと変わっていった。
そして現代。
大陸には、それぞれが己の理想と野望を胸に、時に結び、時に争いながら存在している。
その中のひとつが、領土も軍事も大国に劣る小国――アストリア王国である。
だが、過剰な武力に頼らず、民を重んじる王の姿勢と穏やかな国風によって、周辺諸国からも「平和を好む小国」として知られていた。
その頂点には、現王セラン=アストリアと王妃エルヴィナが君臨している。
王を支えるのは三つの大貴族。
筆頭は、広大なベルフォール領を治めるグランテリア家。
当主ライオネルは強大な軍事力と財力を誇り、実質的には王国の片腕とされる存在である。
対して、イストレナ領を治めるヴェルメスタ家。当主セドリックは調停役として知られ、武辺一辺倒に傾きがちな国政の均衡を保っていた。
そして最後の一つが、セリダール領を治めるリュヴェール家。
かつては栄華を極めた名家であったが、いまや没落寸前。王家との縁によって、その地位をかろうじて保っているにすぎなかった。
そのリュヴェール家に、待望の一人の少年が生まれた。
名をノア=リュヴェール。
彼は生まれながらにして衰退する家の運命を背負わされ、やがて数奇な道を歩むことになる。
やがて、王族と貴族の思惑が交錯する中、没落の家に生まれた少年は、どのような選択をし、いかなる未来を掴むのか。
これは、その始まりの物語である。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回から第一章が始まります。
ブックマークや感想などいただけると、とても励みになります。