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鬼使神差  作者: あまちゃ
-光- 第六章 燦爛鳳条国
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第七十九話 行方不明

「伽耶斗さん、庵!!!」

「どうしたの!?」



二神の声は聞こえなくなってしまった。


すると、足音も消え、霧もどんどん薄くなって言った。



霧が消え二神の声が聞こえた方向を見ると......

岩が崩れた跡があった。



「うそ......だろ?」



天俊熙はそこへ行くと、右側は崖になっていた。


崖の下は川になっている。


岩の崩れ方を見ると、どうやら右側に崩れたようだ。


足音が聞こえた方向を見ると、そこには何もいなかった。

なんだったのだろうか。


それより問題なのは消えた三神のことだ!



「そんな......」


「下は川になっている......無事だといいんだけど......」



天麗華が驚きながら言うと、天俊熙は崖の下の状況を話した。



「川の流れはそこまで早くない......。崖もそこまで高くないから、あそこに落ちていたら......助かっているかもしれない。早くあそこに向かおう!」



皆は頷いた。


だからといって、ここから飛び降りる訳にも行かない。

皆は急いで川の方向へ向かった。



(無事でいてくれ......頼む!!)



天俊熙は三神の無事を祈った。





✿❀✿❀✿





「......うっ、ゲボっゲボゲボ」



「良かった!目が覚めた!」

「ふぅ......」



天光琳は目が覚めた。

目の前には京極伽耶斗と京極庵がいた。



「ここは......?」



「分からない......崖から落ちて......川に流されて気づいたらここにいた」



天光琳は起き上がった。

見たことの無いところだった。

霧は消え、二神の姿は見えるが、周りは薄暗く何があるかよく分からない。



「あれ?!みんなは......?!」


「はぐれちゃったんだ......」


「そんな......」



三神は下を向いた。

この状況は危険すぎる。



「とりあえず、歩ける?一応治療してみたけど......」



いつの間にか手足に包帯が巻かれていた。

落ちた時に怪我したのだろうか。しかしどこも痛まない。歩くことも可能だ。



「痛まないです......凄い......」


「これは一時的なものたがら。そのうち効果が切れるから、痛み出したらすぐに言ってね」


「はい!」



奇跡的にも、飲み物や食料、剣や扇子は流されておらず、手元にある。



「伽耶兄、ダメだ。繋がらない......」



京極庵は天麗華や天俊熙、護衛神や鳳条眞秀に連絡をしようとしたが、反応はなかった。


悪神が邪魔をしている可能性がある。


とにかく、ここにいるのは危険なため、三神は皆と合流しようと、感覚で進んでいき、戻ることにした。


京極伽耶斗は神の力を使い、皆がいる方向を示す光を出した。どうやらこれは使えるようだ。


その方向へ進んでいけばいつか出会えるだろう。




✿❀✿❀✿




しかし。

焔光山に入ってから......四日が経過した。


未だに出会えていない。



「おかしいな......なんでだろう...」



食料もそろそろ尽きてしまう。

早く出会わなければ。



「もう危険だし、一旦焔光山からでるか?」


「いや......方向が分からない......」



京極伽耶斗のこの能力は、特定の神がいるところは示せるが、出口など神以外のことは示せない。


どの方向に進めば出口なのか、全く分からないのだ。



「困ったな......」


「姉上たち......大丈夫かな......」



天光琳は不安になってきた。

あちら側は大丈夫なのだろうか。




更に二日がたった。


ずっと薄暗い森の中にいるせいで、なんだか気分も暗くなってくる。


現在炎は出せるので、なんとか辺りは見えるのだが......やはり神も太陽の光を浴びなければ精神はやられていくだろう。



「そろそろ休憩しようか」


「あぁ...」「はい...」



休めそうな広い所を見つけ、三神は座り込んだ。


足が痛い。そして寝不足だ。

一神づつ眠ることにした。



天光琳が眠り......一時間ほど寝て、次は京極庵が寝る。そして次は京極伽耶斗の番だ。



「何かあったらすぐに起こしてね」



二神は頷いた。



静かな森の中、真ん中にある焚き火の弾ける音だけが響いている。


京極伽耶斗が眠ってから三十分たっただろうか。



「庵さん。何か......話しませんか?」


「タメ口でいいよ。お前の方が上だろ?」


「いえ、上とか関係ないです。......分かりました。......えっと......何か話さない?」



また眠ってしまわないように、話をした方が良いだろう。

しかし、話すことが思いつかない。

しばらく二神は黙ったあと、京極庵が口を開いた。



「お前..."ちあき"って男神、知ってるか?」


「......ちあき...さん?」



天光琳は首を傾げた。

聞いたことがない。誰だろうか。



「そう。ソイツ、俺の幼なじみなんだ。俺の父さんと"ちあき"の父さんが仲が良くて......俺たちも同い年だから小さい頃、よく遊んでいたんだ。俺の父さんはソイツのこと、息子のように可愛がっていてな......俺達もソイツの父さんからよく可愛がられてたよ」



京極庵はどこか寂しそうに言った。



「しかしソイツは五歳の時、桜雲天国に移動してしまったんだ」


「天国に......?」



京極庵が聞いたのは、恐らく"ちあき"という男神が桜雲天国に移動したから、知っているかもしれない...と思ったのだろう。



「あぁ。ソイツの母さんの方の親戚が、天国の神なんだ。......それで何があったかは知らないが、ソイツの家族全員が天国へ行くことになった。そしてすぐにソイツの父さんは天国の護衛神になったとか聞いたんだが......今は知らない」


「なるほど......。その男神は、どんな方なの?」



天光琳は気になって聞いてみた。すると、京極庵は懐かしそうな顔をしながら言った。



「優しいんだけど周りに流されやすい性格で......好奇心旺盛なんだけど、少し怖がりなんだ。ソイツの父さんは昔、俺の父さんと一緒に狩りをするのが好きだった。アイツも狩りをするのが好きだったと思う」



へー、と天光琳がそう言うと、京極庵は再び天光琳に「本当に知らないか?」と聞いた。

しかし天光琳は"ちあき"という男神を知らない。



「そうなんだ。アイツさ、天国に行ったあと、一度だけ手紙をくれたんだけど、その手紙には『桜雲天国の王子様と遊んだんだ』って書いてあったんだ。だからてっきりお前と話したかと......」


「そうなの...?」



桜雲天国の王子は天光琳のことだ。しかし心当たりがない。



「俊熙と間違えたのかな?」


「そうかもな。アイツ、少しドジなところもあるし」



そう言って京極庵は苦笑した。



話が止まったため、今度は天光琳が質問した。



「普段は何をして過ごしているの?」


「色々だよ。街を歩き回ったり、色んな森に行って小屋を立てたり......」


「えー、小屋を立てるの...すごく楽しそうだね」



天光琳はそういう遊びをしたことがなかったため、興味を持った。



「神の力を使って作るの?」


「いや。全て手作業だ。神の力を使ったら楽しくないだろ?時間はかかるけど、やりがいを感じられるんだ」


「なるほど...」



神の力を使わずに小屋を作れると知り、天光琳は自分にも出来そうだと思った。

しかしなぜ小屋を作っているのだろう。



「なんで小屋を作っているの?秘密基地?」


「違う」



突然、京極庵の表情は暗くなった。



「家に帰りたくないんだよ」


「どうして......?」



家に帰りたくない...とはどういうことだろうか。



「俺はさ、親に......嫌われてるんだ」


「え?」



親に嫌われている......天光琳は驚いた。

そして、自分と似ているように感じた。

親......と言っても、天万姫は優しく接してくれている。しかし、天宇軒は...いつも冷たい。

きっと嫌われているだろう...と思っている。



「伽耶兄は......なんでも出来るし、気遣いもできる。俺は...いつも失敗ばかり。だから何事にも集中しちゃって、周りのことが見えなくなっちゃうんだ。それで母さん父さんにいつも怒られてばかり。......もう逃げてしまおうって。......だから家にいたくないんだ」


「そう......なんだ」



そんな悩みがあったとは。



「僕と...似てるね」


「そうか?」


「あ、こんな無能な僕と一緒にされたくないよね、ごめんなさい」


「いや、そうじゃない」



天光琳は無能神様の自分と比べるなんてあまりにも失礼すぎたと反省した。

しかし、京極庵は気にしていないようだ。



「お前は失敗しても、努力し続けてるんだろ?」


「なんで分かるの?」



天光琳は驚いた。今までサボってきただの、手を抜いてきただの散々言われたが......こうやって努力し続けた...と言われたことは、家族や美家以外で初めてだった。



「手を見たら分かるよ」


「...手?」



天光琳は自分の手を見た。しかし何も分からない。

天光琳は首を傾げた。



「マメが出来ているだろう?ほら、ここ」


「あー、これか」



マメなんて、ずっと出来ていたため、これが当たり前だと思ってしまっていた。

そのため、気づかなかった。



「ここまでボロボロの手を見たのは初めてだ。......あ、いい意味でだぞ」


「へへ」



天光琳は嬉しくなって自分の手を眺めた。



「天国の舞、見せてよ」


「ふわぁ〜、僕も見たいなぁ〜」



京極伽耶斗は起きたようで、あくびをしながら言った。

恥ずかしい...と思ったが、二神がそう言っているならやるしかない。



「分かりました!」


「やった!」「ありがとう」



天光琳は扇を持ち構えた。




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