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第七話 市場

ここからは主人公天光琳と周りの仲間たちの関係について知って頂けたら良いと思っております。

盛り上がりが少なく、少しつまらない話が続くかと思いますが、じわじわと盛り上げていくので、最後まで読んでくださると嬉しいです。

「ごめん!遅くなっちゃったよね」



天光琳は天宇軒の前から逃げ出し、そのまま天俊熙との待ち合わせの場所まで走っていった。



「大丈夫...だけど......、どうした?目が真っ赤だぞ、何かあったのか?」


「えっ」



天光琳は先程の涙のせいで目が赤くなっていることに気づかなかったため、慌てて目を擦り、眠いふりをした。



「まさかまた......」


「あ、うんん、なんでもないよ!!眠たくなっちゃっただけ、大丈夫!」


挿絵(By みてみん)


天光琳は笑って誤魔化した。これから楽しむ予定なのに、心配されては困る。


天光琳はよく馬鹿にされたり笑われたりする。恐らく『まさかまた...』とは、馬鹿にされたり笑われたりしたのか...という意味なのだろう。


天光琳はこの国の王一族、王の息子でありながら評価を下げた神なのだ。


城には天家一族と天家に使えてる神、天宇軒が許可した神しか入れないのだが、その神の中でも天光琳をよく思っていない神は沢山いる。そのため陰口などもよく耳にしてしまうのだ。



「そう...か...?」


「うん!大丈夫、大丈夫!」



天俊熙は疑っているがこれ以上聞くと空気が悪くなりそうだと思ったためやめた。



「......遊びに行く...って言っても何して遊ぶの?......さすがにこの歳だと昔みたいにかくれんぼしたりは無理だよね」



天光琳は話を変えた。

天光琳たちはよく隠れんぼをしていた。


だが、この歳に隠れんぼで遊ぶのは無理がある。また昔は天光琳にも沢山の友達がいた。


しかし、十歳になり、人間の願いを叶えられず天光琳が国の評価を下げたことより、どんどん友達は離れていった。現在仲が良く、歳の近い話相手は天俊熙しかいない。


従兄弟であり、小さい頃から一緒にいる天俊熙は天光琳の努力を知っているため、皆が天光琳から離れていく理由が分からなかった。



「そうだな......じゃあ市場に行かないか?最近言ってないだろ?お前が好きな緑豆糕(リュウトウガオ)や金平糖だってまだ売ってるぞ」

「緑豆糕...金平糖!!行きたい...!」


天光琳は目を輝かせながら言った。

緑豆糕とは緑豆を蒸して作ったお菓子だ。


天光琳は緑豆糕と金平糖が大好きだが、残念ながら城では出されず、なかなか食べられない。


そのため、市場に行かないと食べられないのだが......最近暇がなかったため、行くことが出来ず、しばらく食べれていない。



「......あ、そうだ。光琳、そのままの格好で市場に行くのは危なくないか?」


「大丈夫。布持ってきたから」



天光琳は白い布を取りだし被った。その布は大きく頭から足首まである。


天家の者が市場を歩くのはよくある事だ。しかし、天光琳は神の力を使えない神で有名だ。


市場で楽しそうに遊んでいたら、きっと馬鹿にされてしまうだろう。



「これなら大丈夫だな!」


「うん!」



確認したあと、二神は市場へ向かった。



✿❀✿❀✿



市場には神がたくさんいた。神も人間と同じで商売をする神、農業、漁業などをする神など沢山いる。


神界では神も、人間と同じような生活をしているのだ。


だが、違う点もある。それは、生きるためにお金を稼ぐ、そのためにやっているのではなく、皆好きでやっているのだ。


人間の願いを叶えられれば、ある程度お金は手に入る。そのため本来ならば働く必要は無い。


しかし、神の力が高くなると手に入る能力が商売に関わる能力ばかりの神もいる。そのためその能力を使いたいから...もう少し稼ぎたいから...という理由でやっている神も多いのだ。


「いらっしゃいませー、美味しい山査子(サンザシ)だよー!」


「アクセサリーはいかが?綺麗ですよ!」


「人間界で大人気、冷たいアイスクリームですよ〜!」


「輪投げやっていきませんか?景品は豪華だぞ!!」


市場は賑わっていた。

神界の市場の建物は白色が多いためシンプルだが、窓や壁などに工夫がされており高級感のある建物ばかりだ。


店の前には屋台が並んでおり、屋台には唐揚げや串カツ、小籠包などの食べ物の店が多く並んでいる。


また道が広く、道の両端にはベンチやテーブルなどが置かれていて、そこで休んだり買ったものを食べたりする神もいる。


上には沢山の提灯が吊るされており、夜の市場も美しい。

また店と店の間には桜の木があり桜の花びらが散っていてとても雅だ。


目の前で小さい子供が追いかけっこをしていたり、酒を飲んでいる男神たちがいたり、賑やかだ。



「どう、何か食べたいものとかある?」



キョロキョロと色んなところに興味を引かれ、楽しそうに眺めている天光琳に天俊熙は聞いた。



「んー、ありすぎて迷ってる」


「だよな、俺もそう」



店や屋台の数はとても多い。

特に食べ物が多いのだが、様々な食べ物がありどれも美味しそうだ。



「何年ぶりだろう......お店、結構変わってるな......あれ、ここに人気の酒場なかったっけ?」



天光琳は辺りを見渡しながら言った。



「ああ、"桜の宴"か。ここは狭いからって別の場所に移動したんだよ。」


「そうなんだ...良かったぁ」


「なに、酒が飲みたいのか?」


天光琳は安心したかのように言ったため天俊熙は天光琳の腕をつんつんしながら言った。



「そう言う俊熙こそ飲みたいって顔してるけど?」



天俊熙が嬉しそうに言ったため、天光琳は天俊熙の顔を見てニヤニヤしながら言った。



「バレたかぁ...」


「わかりやすいよ」



実は天俊熙はお酒が大好きなのだ。

十三歳の時に一緒に桜の宴で飲んだことがあるのだが、まだ子供だというのに、今まで店に来た客の中で一番飲んだ。

天家は代々酒好きが多いのだが......天俊熙は異常なほど酒好きだ。


そのため、桜の宴の店長や常連客とはとても仲が良い。よく夕食の後や舞を舞ったあとに飲みに行っているらしい。



「よし、行くぞ!ついてこい!」


「あ、待って!!僕、どこにあるのか知らないから迷子になっちゃう!!」




天俊熙は走って桜の宴に向かった。天光琳も天俊熙を見失わないように急いで後ろをついて行った。


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