第四十四話 忍びごっこ
少々つまらない話かと......。ストーリーにはあまり響き
ませんので飛ばしていただいても大丈夫です!
二神はまず柱の裏に隠れた。
先程から聞こえてくる声はだんだん大きくなり、五神の神が塔に入ってきた。
やはり家族で来ていたようだ。
母らしき神が子供三神の頭を撫でると、子供神は笑顔で手を振り、一神ずつ、陣の上に立ち消えていく。
続いて母神も立ち、最後に父らしき神の姿が見えなくなると、天俊熙と天光琳は外の様子を確かめ、誰もいないのが分かると、勢いよく塔から飛び出した。
天光琳はまず、塔の近くにある木の後ろに隠れた。天俊熙は小さな小屋の裏に隠れた。
二神は顔を合わせ、ニヤリと笑う。
そして天光琳は木の上に上り、近くの家の屋根に飛び移った。
屋根の上だと見つかることは少ないだろ。
(あーずる)
天俊熙も真似して屋根の上に飛び移る。
そして先程天光琳が立っていたところを見ると、天光琳の姿は見えなかった。
「なっ」
天俊熙は城がある方向を見たら、天光琳の姿が見えた。天光琳はレンガでできた丈夫な屋根の上でスキップしている。
(余裕そうだなぁ!?)
天俊熙は走って天光琳を抜かそうとする。
(あ、きたきた!)
天光琳は天俊熙が走ってくることに気づき、隣の屋根に飛び移った。
しかしそれは家の屋根ではなく、倉庫の屋根だった。その倉庫は鉄の板でできていて、飛び移った瞬間大きな音が響いた。
「なんの音?」
「爆発した音みたいだったね...」
「あっちから聞こえた気がする...」
(やば!)
天光琳は急いで木に飛び移った。
(くそ、あいつ...!!)
天俊熙も慌てて、屋根の上から降りる。
ここは天桜山の近くで、木がたくさんある。
天光琳は猿...いや忍びのように素早く前の木へと飛び移っていく。
天俊熙はそんな器用なことはできないため、木に隠れつつ、下から走って抜かそうとする。
...やはり修行を頑張り続けている天光琳には勝てそうもない。
(まぁ結果は分かっていたんだけどな!)
それでも諦めずに追いかける。見失っている間に、悪神が現れたら大変だ。
(あーでも、そろそろ......)
天俊熙はニヤリと笑った。
「光琳〜......」
天光琳は振り返り、天俊熙が死にそうな顔をしているのに気づいた。
(しまった......)
天光琳は木の上から降り、天俊熙の近くまで行った。
「ごめんね、大丈夫?」
「はぁ...はぁ......大丈夫な訳......ふ、ははっ、騙されたな!」
天俊熙は心配してくれている天光琳を抜かし、そのまま走っていった。
「あぁっ!!騙したなぁ!」
天光琳は騙されたとようやく気づき、怒ってまた走り出した。
「お前騙されやすいって言われない?」
「うぅ......。でもそれは卑怯だぞぉー!」
天光琳は素早く木に捕まり、勢いをつけてまた木の上に上がった。
「俺はそれも卑怯だと思うんだが?」
「じゃあ降りますよー」
天光琳はそう言うと、足に力を入れ、高くジャンプして地面に着地した。
そして素早く走り、天俊熙を抜かした。
(でしょうねーっっ!)
天俊熙は最終的には抜かされることは目に見えていた。
そのため抜かされて悔しい...というはなかった。
「やるなぁ、光琳!」
「負けないからねっ!」
神通り(ひとどお)の少ないところで走っているため......忍びごっこ...よりリレーになっているのだが......。
二神は全力で走る。
もうすぐ城に到着するだろう。
(...そろそろマジで限界だ......)
天俊熙は息が荒くなり、走るスピードも遅くなってきた。
「はぁ...はぁ...、はぁ......なぁ、光琳......俺もう死にそうなんだけど」
「ほんと?嘘じゃなくて?」
天光琳は走るスピードを落としてくれたが、止まりはしなかった。
疑っているようだ。
「ごめんて......本当なんだって......」
「ふふん、もうその手には引っかからないぞ!」
「ちがっ、ちょっと、待ってください天光琳様!」
そう言うと、天光琳は離れたところで止まり、後ろを振り返った。
天俊熙はヨタヨタと走っていたが、ついに苦しくなり、走るのを止めた。
そして木に手を抑え、しゃがみ込んだ。
「あぁ......疲れた......」
「僕が勝ちって事で良い?」
天光琳は警戒しながら天俊熙に近ずいた。
また騙している可能性だってある。
そしていつでも走り出せるように、構えている。
「ダメー...でもちょっと待って......」
「ふーん、なら先に行っちゃうよ?」
そう言うと、天俊熙はフラフラと立ち上がり、深呼吸をしてまた走り出した。最後の力を振り絞って走っているようだ。
(おぉ...本気だ......)
天俊熙は小さなことでも本気になると最後までやり切りたいタイプの神だ。
...とはいえ、倒れたら困るので天光琳は天俊熙の様子を見ながら走ることにした。
...先程より少しスピードを落としてゆっくりと。
もう城が見える。
そして木が少なくなってきた。
城の近くは神が多いため、また隠れて進まなければいけない。
...天俊熙にはそんな体力は残っていないようだが...。
......とその時。
「...あ、草沐阳老師ー!!」
草沐阳の姿が見え、天光琳は飛び跳ねながら手を振った。
それに気づいた草沐阳は手を振り返した。
「買い出しかな?こんな所にいるなんて珍しい...」
天光琳はそう言って、天俊熙にそう言うと、天俊熙は止まり、天光琳に言った。
「お前...負けだぞ......」
「......あ」
天光琳はまさかの自分から声をかけてしまった。
有利だったはずなのに......。
「......いいよ、俺も負けってことで......老師ー!」
天俊熙はフラフラだったが、草沐阳に笑顔で手を振った。
すると草沐阳は天俊熙にも手を振った。
「これで引き分けだな」
「あーぁ、悔しい。でもありがと」
さすが兄のような天俊熙だ。
これで二神は他神に見つかったので引き分けだ。
「なに、二神そろっていい歳して忍びごっこか?」
草沐阳は片手に紙袋を抱えながら歩いてきた。
二神は『あはは...』っと微笑した。
「草老師はどうしてここにいるのですか?」
「あー、剣や刀の手入れ用の材料を買いに行っていたんだ」
草沐阳は幸せそうな笑顔で言った。
...手入れするだけでも幸せなのだろう。
「そう言えば、剣戻しに行けてないんだった!」
天光琳は思い出した。
ずっとベッドの横に立てかけてあるのだ。
旅から帰ってきてから天桜山に行けていない。そのため、武器が置いてある小屋に戻しに行けていないのだ。
「あー、あれは光琳の剣だ。それにまたいつ悪神が襲ってくるかわからん。だからずっと持っていても良いぞ。...というか、常に装備していた方が良いのではないか?」
確かに...っと天光琳は思った。
今は持っていない。
何かあった時に、部屋にある...では困る。
剣は腰に付けれるので、持ち歩いても邪魔にはならないだろう。
「だが、修行の時にちゃんと持ってくるんだぞ」
「はい!」
そう言って、二神は草沐阳に手を振り、城に戻ることにした。




