第四十三話 対策
食事終えた後、また昨日の夜のように残ってもらった。
そして、天万姫は昨日、天光琳の耳元で悪神の声が聞こえたことを細かく話してくれた。
皆は驚き、昨日天俊熙が言った『今も近くにいたり...』と言うことも可能性はゼロではなくなった。
「そんな事があったのか......大丈夫か...?」
天俊熙は天光琳を見て心配そうに言った。
「母上が助けてくださったので大丈夫でした」
そう言うと、天俊熙、として天麗華もホッと息を吐いた。
「だから...光琳を一神にするのは危険だと思うの......」
天万姫がそう言うと皆は考え込んだ。
(...神の力が使えない、みんなにいつも迷惑を掛けてしまっているのに、さらに迷惑をかけることになる...)
天光琳は申し訳ない気持ちになり、下を向き、両手を膝の上で強く握りしめた。
天光琳のそばに必ず一神いるとなると、その一神の分の仕事を誰かが変わりにやらなければいけないことになる。
迷惑な話だ。
「皆さん忙しいと思うので......護衛神の方に傍にいてもらうことにしようかと......」
「それはダメよ」
天光琳が顔を上げ言うと、天万姫は否定した。
天光琳には何故ダメなのか分からなかった。
......天光琳が人見知りな性格だからだろうか。それとも護衛神だと信用出来ないからなのだろうか...。
「言いにくいのだけれど......護衛神の中には貴方を悪く言う神だっているわ。見かけたら直ぐに注意しているけれど......貴方が悪口を言われないか心配なのよ......」
なるほど、と天光琳は納得した。
...いや、自分が神の力を使えればこんな事にならないので納得はしたくないのだが...。
花見会の時、天光琳が美しい舞を披露したことにより天光琳への考え方が変わった護衛神もいるのだが......やはり考え方が変わらず、天光琳を嫌う神が多くいる。
中には周りの意見に流されているものだっている。
天万姫達は天光琳の悪口を言っている護衛神を見つけると、すぐに注意している。それでも治らなかった場合、城から追放したりしている。
しかしその事は天光琳には言っていない。
自分が神の力の力を使えていれば...なんて自分を責めてしまう性格だからだ。
「なら私が...」
天麗華は言いかけたが、天宇軒が首を横に振ったため、言うのを辞めた。
「天俊熙はどうだ」
何故天俊熙なのだろう。
何か理由でもあるのだろうか。
天光琳が天俊熙の方を見ると、天俊熙は目を大きく見開き、天宇軒の方を見た。
「あぁ確かに」
「同い年だし、いいと思うわ」
天浩然と天語汐がそういい、天俊熙の方を見ると天俊熙は考え事をしているようで、下を向いていた。
「俊熙...?」
天李偉が聞くと、天俊熙は我に返ったようで、顔を上げた。
「......あ、はい!俺もそうしようかと思っていたので大丈夫です!」
嫌なのだろうか。......いや、そうには見えない。
天俊熙は笑顔で答えたあと、一度天宇軒の方を見た。
そして皆が天俊熙から視線を逸らすと、天俊熙はまた考え込んだ。
(...?)
その様子を天光琳は見逃さなかった。
何か天宇軒を疑っているような感じがした。
確かに姉である天麗華ではなく天俊熙を指名したところに違和感がある。天光琳もそれは不思議に思った。
しかし天俊熙はそれだけでは無さそうだ。
天宇軒が指名したあと、驚いていた様子だったのも不思議だ。
天宇軒も天俊熙も何か考えがあるようで、それが何かは全く分からない。
(...どうしたんだろう......)
天光琳は考えすぎて頭が痛くなった。
「俊熙、頼んだぞ」
「あー、はい。分かりました」
天俊熙はまた笑顔に戻った。
「でも...」
天光琳は嫌ではなかった。しかし、どうしても申し訳ない気持ちは消えず、不安そうに言った。
「いいじゃん。草老師に教えて貰えるしさ、また一緒に修行と稽古しに行こうぜ!」
天俊熙は全然気にしていないぞ...という顔をして言ったため、天光琳は安心して笑顔で頷いた。
「私はずっとは難しいけれど、なるべく光琳の近くにいるようにするわ」
「姉上...」
天光琳はそういい、天麗華を見ると、天麗華はウインクをした。
「貴方は私の大切な弟よ。何かあったら困るもの」
天麗華がそう言うと、天光琳の心は温かくなった。
天麗華は奇跡の神のため、毎日沢山人間の願いを叶えたり、国の仕事をしたりなどで忙しい。
本当は姉として、弟をしっかり守りたかったのだが......天麗華は悔しい気持ちになった。
「あ、あと...一神部屋って危ないわよね......また昨日の夜のようになってしまったら大変だわ」
天麗華がそう言うと、皆はまた考え込んだ。
部屋は一神部屋のため、夜は危険すぎる。
...というより、昨日のことを考えると一神で寝ている夜が一番狙いやすいだろう。
また誰かの部屋で寝るか......。
(迷惑だ...)
天光琳がそう思っていると天宇軒がテーブルに両肘をつき、口を開いた。
「一階にある浩然の部屋の近くに使っていない広い部屋がある。そこを今日から二神の部屋にしたらどうだ」
二神とは天光琳と天俊熙のことである。
すると、天麗華は残念そうな顔をした。
また自分はダメなのか...と。
「一応、部屋の外には護衛神をつけよう」
「了解です、ありがとうございます!いいよな、光琳?」
「うん...!」
こうして、一応天光琳は一神でいることは少なくなり、悪神に襲われる可能性は低くなっただろう。




