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鬼使神差  作者: あまちゃ
-光- 第三章 旅の後
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第三十九話 鬼神...?

「あ...」



天麗華はなにか思い出したようで、手をポンとさせた。



「あの悪神、この神界のものでは無いと思うわ」


「何故だ?」



天宇軒は目を細めて言った。



「今までたくさんの術を見てきたけれど、あの悪神の術は全て見た事がないものだったの...」


「しかも奇跡の神である麗華様の攻撃を軽々と交わした......俺の得意な防御結界でさえ、簡単に壊された......絶対にただの神ではないと思います」



天麗華に続き、天俊熙が言った。



鬼神(きじん)......」


「?」



天宇軒がそう呟くと、皆は驚き天宇軒を見た。



「今...鬼神...と言いました?」



天浩然が恐る恐るそう聞くと、天宇軒は小さく頷いた。



「鬼神って......本当に存在するのですか!?」



天麗華は青ざめた顔で言った。

鬼神とは神界で古くから語り継がれている説話に登場する悪神だ。



内容は突然神界に鬼神と呼ばれる悪神が現れ、ある国を一日で支配してしまった。その国の神々は全員殺されてしまった。しかしそれだけでは終わらなかった。一カ国、また一カ国とどんどん国を支配していき、ついには神界を支配した。


神は神界から滅び、この世から神は消えてしまったのだ。

そのため人間の願いを叶えず人間達は神への信頼を失った。神は消えてしまったと知らない人間達は神へ怒りをぶつける。その気持ちが多ければ多いほど、鬼神は強くなっていく......そして人間たちから笑顔が消え、世界から全ての光が消えてしまう......。


しかし数百年後、なんとある一神の女神が復活した。女神は神界の中で神の力が一番高く、優秀な神だった。そして復活して直ぐに鬼神を封印することに成功した。


そして神界で一人残された女神は、世界を戻すことを決め、自分の力を全て使って世界を元に戻した。

世界から光が戻った。神々は復活したのだ。


しかし女神は力を全て使ってしまったため消えてしまった......という悲しい終わり方の説話である。


......が、この説話にはもう一つある。

それは神界を滅ぼしたのは鬼神だけではなく、鬼神に取り憑かれた神界の神が滅ぼした......という説話もある。

この説話を"鬼使神差(きししんさ)"と皆は呼んでいる。


しかし神界の神が鬼神に取り憑かれる......ということはあるのだろうか。

恐ろしい話だ。そのため、皆は鬼使神差を口にすることは無かった。


......まさかこの世界に本当に鬼神が現れたのだろうか。説話で出てくるだけで、本当には存在しない...と思っていたのだが。




「まだ分からない。鬼神じゃないと良いが......」



天宇軒がそう言うと、しばらく静かな時間が流た。





「そう言えばあの悪神、光琳に力を移していたが、なにか変わりはないか?」



しばらく経ち、天宇軒が天光琳を見て言った。天光琳は首を傾げだ。



「力を...僕に移していた......?」


「あ、そうか。あの時、光琳は気絶していたから知らないよな」



天俊熙がそう言うと、天宇軒はそうだったな...とぼそっと呟いた。



「何も変わりはないのですが......えっと...どういうことですか?」



天光琳はさっぱり分からなかった。



「お前が俺たちを庇って倒れたあと、あの悪神はお前に力を移していた。おそらく回復の術を使っていたのかもしれない」



回復と聞いた途端、天光琳はバッと包帯を軽く解き、服の中を覗き込むかたちで胸元の傷を見た。


......色が違う、変な模様がある...などの変わったところはなく、普通の傷だ。



「今の所大丈夫です...」



...まぁ傷を見ただけで大丈夫とは言いきれないのだが。



「なにか異変を感じたら直ぐに言って......隠すんじゃないぞ!」


「は...はい...」



天光琳はよく自分の体の状態を隠すため、天俊熙は天光琳にはっきりと言った。


これに関しては、黙っておくと大変なことになると分かっているため、隠すことはないのだが......。






しばらく話し、眠くなってきた天光琳は目を擦った。



「あら、もうこんな時間ね」



眠そうにしている天光琳を見て、天万姫は時計を見た。午後十一時半だった。



「そろそろ解散にしよう。他にも何か思い出したら教えてくれ」



「「「分かりました」」」



天光琳、天麗華、天俊熙は声を揃えて返事をした。






報告は終わり、解散した。

お茶を注いでくれた男神がお茶を片付けている。



「ふわぁ〜、眠い」



天俊熙はあくびをしながら天光琳の近くへ来た。



「僕も...今日はもう寝よ......」


「そうだな」



二神は目を擦りながらゆっくりと歩き出した。すると、天宇軒が後ろから声を掛けてきた。



「光琳、俊熙」


「「はい!」」



二神は名前を呼ばれ背筋を伸ばし、シャキッとした。



「麗華にも話したが、神界では一週間に三回、人間の願いを叶えろ...というルールなのは覚えているよな」



二神は頷いた。

天宇軒が話すことはだいたい予想できた。

......怪我をしていたため、舞が出来なかった。


また、人間の願いを叶えるため、塔へ行かなければ行けないのだが、その塔は一つの国一つしかない。城から近く、玉桜山から離れているため、その塔にすら行けなかったのだ。


...ちなみに玉桜山の近くに住んでいる神や、さらに城から離れた場所に住んでいる神々は、一週間に一度は必ず塔へ行かなければいけないため、とても大変である。


塔から離れているということは、行ける日数が少ない。そのため、塔の近くに住んでいる神より人間の願いを叶える回数が少なく、神の力が低いものが多いのだ。


天宇軒は何度も色々な場所に塔を作ることを考えたが、これは神界全体のルールなので、天宇軒がどうこうできるわけではない。


...話が少しそれだが、天光琳、天麗華、天俊熙の三神は一週間に最低でも三回人間の願いを叶えるというルールを破った。その事を今から言うのだろう。しかし天宇軒の表情は怒っている訳では無かった。それはそのはず。仕方がないことなのだから。



「神王様に事情を話しお許しを頂いた。だから安心しろ」



天宇軒がそう言うと二神は安心してホッと息を吐いた。



神王と言うのは、神界で一番偉い神様だ。神界をまとめ、ルールを決めたりしている。


ちなみに神王は、評価が一番高い国、佳宵星国(かしょうしんごく)の王、星連杰(シンリェンジェ)だ。四十代ぐらいの男神で、几帳面な性格だ。


口数が少なく、多くの他国の王は星連杰に苦手意識を持っていたりする。


月に一度開かれる神界の全国の王の会議は...それはもう地獄でしかない。王であるのに、緊張で胃が痛くなる神だっている。


しかし同じく口数が少ない桜雲天国の王天宇軒はなんとも思っていない。むしろ口数が少ない方が楽でありがたいと思っているぐらいだ。



「また、悪神のことも報告した。一応全国に伝えるそうだ。そして今日聞いたことも全て次の会議の時に伝えるつもりだ。他にも何かあったら明日でも良いので教えてくれ」


「「はい」」



今の所悪神は桜雲天国にしか目撃されていないが、あの悪神ならおそらく他国にも行くだろう。他国に天光琳達を呼び出し、危険な状況になったとしても......助けずらい。

そう考えると次は他国かもしれない。



これからどうなるのか......天光琳は不安になった。


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