第二十二話 修行終わり
「はぁ〜、終わったぁ〜!」
「疲れたぁ〜!」
天俊熙と天光琳はそう言って床に寝転がった。
さすがの天光琳も疲れてヘトヘトだ。
天俊熙もよく最後まで着いてこられた。
「よくほぼ毎日こんだけ出来るなぁ」
「でも小さい頃は必ず毎日修行してたことない?」
「いや、小さい頃は一日三時間程度だったよな...今日なんて十時間も頑張ったじゃん...」
五歳から十歳まで必ず修行二時間、舞の稽古一時間で一日三時間していた。
しかし今日は修行七時間、舞の稽古三時間の合計十時間もやっていた。
十八歳になると、国の仕事の手伝いや、行事などで忙しくなるため、毎日はできないのだが、それでもほぼ毎日十時間はさすがにきつい。朝食、修行、舞の稽古、夕食、湯浴み、寝る。これで一日が終わってしまうのだ。
人間の願いを叶える仕事がある時は、もう少し時間を減らすのだが、それでもきつい。
「草老師も疲れないんですか?」
「あぁ、疲れる」
「え、あ、ごめんなさい...」
天俊熙が聞いたあと、草沐阳は即答えた。
そのため天光琳は謝った。
「だが、天家の神が全員成長してしまって......修行や稽古に来る神が居なくなると、俺はやることがなくなり暇になる。だから光琳がほぼ毎日来てくれると助かるんだ、話し相手が増えたしな」
「おじいちゃんみたいなこと言いますね」
「はっはっは、俺はもう年だからな」
天俊熙が聞き、草沐阳は笑いながら言ったため、否定しないんだ...と二神は思った。
夏休みに来る孫が待ち遠しい祖父のような感じでいつも待っているのだろう。
草沐阳は天家専属の老師のため、今教えているのは天光琳しか居ないのだ。
「そろそろ帰らないと夕食の時間に間に合わないのではないか?」
「あ、やばいっ!」
「本当だ!いつもよりゆっくりし過ぎた!」
二人は勢いよく起き上がった。
「ごめん、俺が休憩取りすぎたからだ」
「うんん、久しぶりに修行しに来た俊熙に合わせず僕のペースでやっちゃったのが行けない...」
「でも俺は勝手に着いてきただけで......」
「はいはい、言い合いしてないで、早く行くぞー」
言い合いが始まったため二神のことをよく知っている草沐阳は割り込んで言い合いを止めた。
「「はーい」」
二人は笑いながら返事をし、小屋を出て、城まで走っていった。
草沐阳はいつも天光琳を城まで見送っている。そのため今日も城まで着いてきてくれた。
「草老師、今日は久しぶりに教えてくださってありがとうございます」
天俊熙はお辞儀をして言った。
「また何時でも来ていいからな」
「はい!」
草沐阳は楽しみにしているだろう。人数が多ければ多い方が賑やかで楽しい。
「老師、今日もありがとうございます!また明日!」
「あぁ、また明日」
天光琳はいつものようにお礼を言い、草沐阳に手を振ってから二神は草沐阳と別れ、食事部屋に向かった。
✿❀✿❀✿
食事部屋にはみんな集まっていた。
......何故だろう。皆暗い顔をしている。
「どうしたんだろう...」
「さぁな...」
ゆっくりとテーブルの方へ歩きながら、二神は小さな声で言った。
「光琳、俊熙、お帰り」
さっきまで暗い顔をしていた天麗華は少し微笑みながら言った。
「二神とも、早く席に着きなさい。大事な話があるのよ」
「「分かりました...」」
天万姫が言い、二神は早歩きで席に着いた。
しばらく沈黙の時間が流れた。
(なんだろう...)
天光琳は緊張してきた。表情からすると、良い話では無いだろう。
そう思っていると、天宇軒が話し始めた。
「午前11時頃、花見会の時の犯神らしき者が目撃されたそうだ」
「えっ」
天宇軒が言うと、天万姫以外驚いた。
天万姫は既に知っているのだろう。
「目撃した神は、幸い無事だったが......」
天宇軒は一度喋るのを辞め、またゆっくりと話し始めた。
「『明日天家の神を三神連れてこい、連れてこなかったらこの国はお終いだ』と......言われたそうだ」
皆は息を飲んだ。




