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鬼使神差  作者: あまちゃ
-光- 第一章 神の力
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第十七話 神殺し

「どういうこと...?」



天光琳は震えながら言った。



「とぼけるな!!お前、俺の妹を殺しただろっ!!」


「...え?!」



男神は大声で言ったため、各国の王一族や、広場付近にいる神々は皆会話をやめ、天光琳達の方を見た。天万姫と天麗華も心配そうに見つめている。



「僕...誰も殺してない......!」


「光琳が神殺し...?ありえない。神違(ひとちが)いではないのか!?」



天俊熙も信じられない...という顔をして言った。



「じゃあ誰が俺の妹を殺したって言うんだよ!俺が『お前は誰だ』って聞いた時、『俺は天光琳だ』って答えたじゃないか!!」


「違う......僕はそんな事してない!」


天光琳は誰も殺してはいない。そしてこの男神が言った言葉の中に一つ気になる点がある。


それは、一人称だ。天光琳は『俺』とは言わない。証拠がないため、絶対に天光琳ではない...と言いきれないのだが、天光琳はそのような事はしない。...むしろずっとここで座っていたため、そんな事する暇すらなかった。



恐らく何者かが、天光琳の名前を利用して男神の妹を殺したのだろう。


でもなぜ天光琳なのだろう......。


神の力を使えず、みんなにバカにされたり笑われたりしているため、恨みが溜まり殺した......と言う理由を作りたかったのだろうか。



「隠しても無駄だ!!今ここで白状して死ね!」



そう言って男神は持っている石を再び天光琳に向かって投げた。


天光琳が避ける前に、天俊熙は右手を前に出し、風を起こして石を誰もいない方向へと飛ばした。



「ありがとう...」


「どーいたしまして」



天光琳はホッと息を吐いた。

この大きさ...そしてこの速さで飛んでくる石にに当たったら絶対に大怪我をする。いや、大怪我では済まないかもしれない。天光琳は改めて神の力の能力は凄いと思った。



「なぜコイツを庇う!どけ!お前も死にたいのか!」



男神は顔を茹でたタコのように赤く染め、カンカンに怒っている。


男神はまだ石を持っている。ここから逃げるか男神を止めなければ天光琳は危ないだろう。


天光琳はどうしようか考えていると、突然天光琳と天俊熙の前に一人の男神が立った。



「やめろ」



この低い声は......天宇軒だ。マントをなびかせ、片手を広げ、二神を守る姿はとてもカッコ良い。



「神である君がそのような言葉を使ってはいけない。そして、石を捨てろ。もし石が頭にあたって誰かが死んだら、封印されるのは君だ」



天宇軒の鋭い視線と低い声は恐ろしい。


神を一人でも殺してしまった場合、その神は封印されてしまい、一生この世に戻って来れなくなる。


この男が桜雲天国の王だと気づいた男神は下唇を噛みながら石を投げ捨てた。



「ゆっくり話せ。何があった」



男神が全て石を捨てたのを確認すると、天宇軒は先程より少し優しい口調で男神に言った。


男神は下を向いたまま話し始めた。



「三時間前ぐらいに......俺は妹と噴水の前でのベンチで座っていたんです」



噴水は、ここから十分ぐらい歩いたところにある。そこは屋台は並んでいないため、今は神通(ひとどお)りが少ない。



「そしたら、急に黒い布で全身を隠した男神が現れて......何も言わずに俺の妹の胸を手で刺し、そのまま心臓を取り出したんです!...そしてその男は妹の心臓を...に...握りつぶし......妹は...妹は......そのまま倒れ......死んだ......」



男神は後半、泣きながら言った。


手で刺す...とは、恐らく心臓に届くまで深く手を入れられたのだろう。そして心臓を取り出されたとは......想像するだけでも痛々しい。


しかし神の力を使えない天光琳にはそんなことが出来るはずがない。それに神の力がかなり高くないと、こんな殺し方はできない。


また、天光琳は三時間前はここの広場にいた。天俊熙と一緒に話をしていたのだ。



「そして...俺は『お前は誰だ』って聞いたんです......そうしたら『俺は天光琳だ』ってはっきり言っていました。まさかあの無能神様天光琳が神殺しをするとはなぁ?!」


「......っ」



天光琳は胸が痛くなった。自分ではないのに犯神(はんにん)扱いされていること、そして『無能神様』と言われたこと。


この男神は他国の神だが、天光琳のことは顔は知らないが、名前と神の力が使えない神だと知っている。


そのため、天光琳だと聞いて、王一族のいる広場に行き、この国の神に『天光琳はどれだ?』と聞いて石を投げたのだろう。



「その黒い布を被った男神の顔はしっかり見たのか?」


「いや...目は前髪で隠れていて、口元しか見えませんでした...」



天宇軒が聞くと、男神は首を横に振りながら言った。服装すら見えていないということは、どこの国の神かも分からないのだろう。



「顔がしっかり見えていないのに、光琳だと決めつけるのは良くないだろう......波浪(ポーラン)、皆に『黒い布を被った男神を見つけたら城に報告しろ。だが見つけても近寄るな』と伝えてくれ」


「御意」



波浪とは天宇軒の側近である。大人しい性格なため、天宇軒とは気が合う。

側近なのであまり出歩かず、天宇軒のそばにいるのだが、顔立ちは整っていて、女神たちの間ではイケメンだと噂されている。



「お前は...やっていないな?」



天宇軒は細い目で天光琳の方を見て言った。



「はい...」



天光琳は天宇軒の目をしっかりと見て言った。



その後、花見会が終わっても黒い布を被った者は見つからなかった。何者だったのだろうか......。


各国でも注意を呼びかけている。

石を投げた男神は、黒い布を被った男神が見つかるまで、ずっと天光琳が犯神(はんにん)だと言い張るだろう。



「あーあ、結局屋台見て回れなかったな」



花見会が終わったため、あの席から開放された天光琳と天俊熙は、天光琳の部屋で話をしていた。



「あの男神の妹さん......本当に可哀想...」


「あんな殺され方......想像しただけでも痛いな...」



殺されてしまった男神の妹は、その男神と一緒に国へ帰った。今頃家族は悲しんでいるだろう。



「お前も犯神(はんにん)扱いされて気の毒だな...。『俺は天光琳だ』って...普通は名乗らないだろ」



確かにそうだ。名前を言ったら封印されてしまうではない

か。


余程命を絶ちたい者でないと、そんなことは言わないだろう。

天光琳は大きなため息をついた。



「早く見つかって欲しいな...」



天光琳は早く見つかって欲しい...と強く思った。


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