第百十三話 星玉風
なんと封印の儀はもう始まっているようだ。
天光琳は着くと走り出した。
天光琳の走る速さは天宇軒ですら追いつかない。
だが皆は天光琳を見失わないように追いかける形で走っていった。
封印の義は玲瓏美国の広場で行う。
祭りの時、舞台があったところだ。
向かう途中各国の王とぶつかりそうになった。
ぶつかりここで足止めされるのは一番最悪なパターンなのでなるべく端を走るようにした。
「おい、あれ天光琳じゃないか?」
「なんで来てるんだ......」
各国の王たちは首を傾げた。本来なら来なくて良いのに、なぜいるのだろう。
天光琳が広場に到着すると、広場には各国の王たちでいっぱいになっていた。
そのため、よく見えない。
身長が低く小柄な天光琳は頑張って前へ進もうとしたが、神が多すぎて潰されそうになる。
「では美梓豪"様"、お願いします」
星玉風の声が聞こえた。
まだ封印されていないようだ。
天光琳は潰されそうになりながらも一生懸命前へ進んだ。
もう天宇軒たちは天光琳のことを見失ってしまっただろう。
......と突然、美梓豪が手から光を出し、その光を眺めた。
これは緊急のお知らせが送られてきた合図だ。
美梓豪はその光を眺め、辺りを見渡した。
そして、星玉風の方に視線を戻した。
「何か言うことはないのですか?」
時間稼ぎをしているのだろうか。
天光琳はその間に急いで前へ進んでいく。
「そうですね......。もう一度......光琳さんに会いたいです」
星玉風がそう言うと、各国の王は驚いた。
「あんな無能神様に?」
「なぜ......?」
すると天光琳は大きく息を吸った。そして......
「玉風様っ!!!」
皆は声が聞こえた方に目を向けた。
そこには息を切らせた天光琳がいた。
天光琳は何とか前へ進み、星玉風と美梓豪が見える位置まで来たのだ。
「光琳さん......!」
星玉風はまさか天光琳がいるとは思っておらず、目から涙が溢れてきた。
「お祖父様、玉風様は悪い神ではないのです......神界を良い国にするために......星連杰様を殺したのです......なので!」
「知っているぞ」
「え......」と天光琳は驚いた。
美梓豪は寂しそうな顔で言った。
「光琳さん。私が頼んだのです」
何故だ。生きたくないのだろうか。
てっきり皆は神王を殺した悪い神だと思っていて、星玉風を封印しようとしているのかと思った。
だが違った。
「どうして......」
「今の神王は私です。私が死ななければ美梓豪様は王になりません」
そうか。そうだった。
まだ神王は星玉風なのだ。
星玉風は神王になりたくないと言っていた。
ここで封印されなければ神王になり続ける。
「でも......少し待てば玲瓏美国が追いついて、玉風様は神王にならなくても済むのではないですか......?」
「それでは遅いのです。追いつくと言っても、あと一ヶ月以上はかかるでしょう......?」
星連杰は神の力が弱い神を殺し、強い神だけを残らせ何年もそうやって繰り返してきた。
当然力の強い神子供も増え、弱い者は消えていった。
そのため、追いつくと言っても、玲瓏美国と佳宵星国の差は結構ある。一週間では無理だろう。
「美梓豪様。神王の最後の命令です」
星玉風は息を吸った。そして
「私を封印してください」
神王の命令は守らなければ行けない。美梓豪はそれに従わなければ行けない。
美梓豪は本当はやりたくない......と思いながら、ゆっくり封印の儀を進めた。
そして星玉風は金色の光に包まれた。
「玉風様!」
天光琳は護衛神を押し抜けて、星玉風の近くまで走ってきた。
「光琳!近づくな!光琳まで封印されるぞ!」
美梓豪は心配し、急いで天光琳の両腕を掴んだ。
「玉風様......玉風様......!」
「光琳さん......」
光に包まれた星玉風はだんだんと消えていく。もう助けられない。
すると星玉風は目に涙を浮かべながら微笑んだ。
「光琳さん、約束を守って下さり、感謝致します。......そして、笑ってください。涙は似合いませんよ」
笑えるわけが無い。しかし天光琳の笑顔は妹たちにそっくりだと言っていた。
最後に妹たちの笑顔を見たいのだろう。
「玉風様......また会いましょう!」
天光琳は無理やり笑顔を作った。
しかし涙はとまらない。
星玉風は安心したかのように微笑んだ。
「光琳さんは良い神です。神の力が使えなくたって......いつかきっとこの世界を良いものに変えてくれます。ありがとう......。」
そう言って星玉風は消えていった。
そして最後に残った光の玉は、ガラスのように割れ、パラパラと光のように消えていった。これが神心なのか?
星玉風はもう神界に戻ることは出来ない。
もう二度と会えない。
封印の儀が終わると、美梓豪は天光琳を離した。すると天光琳は地面に崩れ落ちた。
もう顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
「光琳!」
天麗華たちが追いついたようで、天光琳のそばに集まった。
そして......美梓豪は神王となった。
突然の事で美梓豪も理解が追いついていないようだ。
佳宵星国の王一族はいなくなり、国は滅びた。
佳宵星国の神々は各国に移動となる。
皆は安心している。これも全て星玉風のおかげだ。
美梓豪は星連杰のようにならないと心に決め、よい国にしていくだろう。




