番外編短編・2023年12月
命を救うために医者になった。
そう、ミチルは最初はそのつもりだった。こもパンデミック騒動も一人でも命を救いたいと思っていた。そう、初めは。
しかし、2021年9月。
私が担当して予防注射を打った患者が、あの後すぐに自殺したと聞いた。
そう、自殺。自殺よね?
警察の話によるとうつ病患者のアラフォー男。奥さんを一人残して自殺したらしいたが、これが因果よね?
あの注射が悪いなんて反●●の人間が言っていたけど、陰謀論や都市伝説よね?
ミチルはそう言い聞かせて、さらに3回、4回、5回、6回、7回と患者に注射を打ち続けた。
そして2023年5月。
5類になり、あの注射のおかげで亡くなった人も報道されていた。
ぐ、偶然よね?
予防注射って神様みたいにすごいんだから。まあ、パンデミックを止められるのなら、少しの犠牲は仕方ないよね? そうよ、少しの犠牲は生贄みたいなものよ。
そう言い聞かせていたが、年の瀬もせまった12月。
7回目を打った患者が即死した。
「この人殺し! 殺人者!」
患者の遺族に責められ、首を絞められそうになった。
でも事前に同意書にサインしたのは、あなたの家族よね?
反●●をカルト信者とか陰謀論者と決めつけてバカにしてたよね?
「人殺し! 地獄に堕ちろ!」
今日も患者の遺族に罵倒されたが、ミチルは天国に行けるのか。万が一彼らの言う事は本当だとしたら、ミチルは殺人犯ということになるが。
わからない。
あの注射と死の因果関係は不明。
そうだ、そういう事にしておこう。