9話 聖域
主要キャラが続々登場します
お楽しみください(◡ω◡)
行けども行けども草原が続く
遠くには森のような木々も見えるが、なかなか近付かない
キースが言うには、ここは結界の中だ
明らかに神殿があった丘の頂上より広い
「丘の頂上とここは広さが同じではないんだな」
馬を進ませながらマルクスが聞いた
キースは少し振り返ると
「ここはいわゆる亜空間だ
無限ではないが、かなり広いよ」
そう答えると、また視線を前に戻した
しばらく進むと、おもむろにキースが馬から降りた
ルアも続いて降りる
草原のど真ん中だ
マルクスは馬を止めた
「どうした?」
「この先が聖域だ
降りてこの辺りを触ってごらん」
は?また訳のわからない事を…とマルクスは思ったが、結界の中に入る時も何も見えなかったので、それと同じような物がまたあるのか、と考えた
馬から降り、ナナイを抱いて馬から下ろす
二人でキースのいる所まで近付くと
「ここ」
とキースが手で何もない場所を触るような仕草をした
マルクスはキースが指し示す辺りに手を伸ばすと何かに当たり、そこから先には手が入らない
確かに見えない壁のような物がある
ナナイも遅れて同じように触れる
「本当だわ、壁がある」
「俺たちは聖域から作り出されたようなもんだから、ここの境目はわからないんだ
君たちには見えてないけど、俺たちの目の前には神殿がある」
キースが説明した
訳がわからん
マルクスはもう考えるのを止めた
「また手を繋いで入るのか?」
「いや、聖域は巫女姫によって創り出されている
だから今、巫女姫が道を開けてくれるよ」
そう言うやいなや、マルクスの目の前に黒い点が現れた
黒い点は渦を巻くように大きくなっていき、最終的にはトンネルのように穴が空いた
「ここから行けるのか?」
マルクスがトンネルを指さしながら聞くと
「あ、空いた?
オレたちには見えてないんだ
そこをくぐって」
キースがどうぞ、というようなポーズをとった
マルクスは覚悟を決めて
「ナナイ」
と言うと、手を差し出した
ナナイは自分の胸の前で合わせていた手をほどき、マルクスの手に自分の手を乗せる
マルクスがナナイをエスコートするように歩き、2人は真っ暗なトンネルに入って行った
トンネルに入る前は出口が見えない、中は真っ暗に見えたのに、一歩足を踏み入れた瞬間、目の前が明るくなり巨大な神殿が姿を現わした
よく見ると神殿は丘の頂上の神殿と同じだ
ただ丘の神殿は朽ち果てていたが、今目の前にある神殿は建てたばかりのように新しく美しい
石造りの壁も白く、所々金で装飾されている
空の青さが更に神殿の白さを際立たせていた
そしてこの神殿と丘の神殿は大きさと規模が全然違う
この神殿は丘の物よりひとまわり程大きく、ずっと奥まである
キースに促され、神殿の中へと入って行った
長い廊下を歩くととても大きな、両開きの扉に行き着いた
扉はゆうにマルクスやナナイが住まう屋敷くらいの高さがある
どうやってこの巨大な扉を開けるんだ?
マルクスがそう考えていると、扉は誰の手も借りずに静かに開いた
扉が開くと、そこからまっすぐ巨大な一枚岩の道が、部屋の奥の階段まで続いている
数段の階段の上には、これもまたかなりの高さがある背もたれの石造りの椅子があった
玉座だ
その玉座にはこの大きな椅子には似つかわしくない、小さな女の子が座っていた
女の子が座っている玉座の右側、階段の下には男が立っている
ここは謁見の間か
マルクスはそう考えながら玉座の方へと歩くが、顔は真っ直ぐ前を向けて目だけでこの謁見の間を探った
階段の側にいる男以外、人影はなかった
玉座の前まで来ると、キースとルアは立っている男の横に、当たり前のように並んだ
マルクスとナナイは女の子の目の前で立っている
「よく来てくれた」
広く石造りの建物のせいか、女の子の声が響いた
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