6話 訪問者
土曜なので本日2度目の投稿が出来ました
明日も出来れば2回投稿したいと思います
「いきなり斬りつけるなんて、アリか?」
男は手すりの上で犬がおすわりをするような格好でマルクスに指を向けた
「黙れ、侵入者!何者だ?」
マルクスは剣を男に向けて構えた
男はマルクスを指していた手をそのまま自分の顎に当てると
「俺?俺はそーだなー
ルアの友達…ってそんな薄っぺらい間柄じゃないし……」
「ルア…彼の名はルアと言うのか」
考え事を中断して、男はマルクスに視線を戻した
「ルアは通り名だよ
本名はアシャスナルだ」
と教えてくれた
そしてすぐに
「あ!そうだ!!仲間!うん、仲間だな」
男は笑顔で答えた
「仲間?では彼を斬ったのはお前ではないんだな?」
「ルアを斬ったのはルアの兄貴」
男の返答にマルクスは驚いた
だがそれを表には出さずに、更に問いかけた
「少年の兄が少年…ルアか
ルアを斬ったのか?」
「そう
だから俺がルアの兄貴を殺した」
突然の大カミングアウトだ
一瞬マルクスはフリーズしたが、すぐに意識を目の前の男へと集中させた
「殺した…だと?」
笑顔で「そうだよ、殺したよ」と答えた男の表情は笑っているが青色の瞳は冷たかった
部屋の入口付近で恐ろしい会話を聞いていたナナイは、居ても立っても居られなくなりテラスに向かって走り出した
フィスタルは突然駆け出したナナイを止めようと手を伸ばしたが間に合わなかった
ナナイはマルクスの背後に守られているルアに駆け寄ると、自分の背中を男に向ける形でルアの両肩に手を掛けた
走り寄ってきたナナイを見ながら
「君たちがルアを助けたの?」
男はマルクスとナナイを交互に指さした
「助けたのはナナイだ
俺は捜査担当」
人を殺したと大告白した男に対してマルクスは真面目に答えた
男は「ふーん」と少し困ったような顔をして、しばらく考えてから手すりの上でスッと立ち上がった
「困ったな…俺一人で判断出来ないな」
そう言いながらルアをじっと見つめた
ルアの両肩に乗せているナナイの両腕が自然に力が入り、ナナイはルアを引き寄せた
「まぁいいや、明日また来るよ
どーするか決めてくる」
まるで知人の家にでも来ているかのような言いぐさだ
マルクスはこめかみをピクつかせ
「明日また来るだと?
このままここから逃げれると思っているのか?」
男はニッコリと笑うと
「うん、俺が逃げると言ったんだから逃げれるよ
だから明日また来るのもホントだよ?」
男の理屈がわからない
が、サラリと言うからには自信があるのだろう
マルクスは左肩ごしに後ろにいるナナイとルアをちらりと見た
ルアを守ような体制で男に背を向けているナナイの方が男に近い
部屋の出入り口のドアの前にはフィスタルが剣を構えて立ち塞がっている
だとすればコイツはナナイを人質に取り、逃げようとしているのかもしれない
まずは男をナナイから遠ざけなくては…
考えを瞬時にまとめ上げると、マルクスは剣を左下から右上に振り上げなが斬り掛かった
マルクスは男が剣を避けて自分の右側の懐に飛び込んて来ると予想していた
だが男の逃走経路はマルクスの予想をはるかに裏切った
男は後ろに飛び退いたのだ
えっ!?
マルクスは本日2度目のフリーズをしてしまった
ここは…3階だよな
3階だ、やっぱり3階だ
1秒にも満たない瞬間でマルクスはここが3階である事を3回も確認出来た
人間、時間が止まって感じる時があると聞いた事があるが、こーゆー事か!とマルクスは納得した
後ろに飛び退いた男は当然下に落ちる
マルクスの視界から男が消えると、マルクスはテラスの縁に駆け寄った
3階から落ちれば大怪我だ
悪ければ死んでしまう
マルクスは手すりから身を乗り出して下を見た
すぐさまナナイもマルクスの隣に来て、同じように下を見た
だが男は何事もなかったように立っている
身を乗り出して下を見ているマルクスとナナイに気が付くと、手をブンブン振って林の中へ消えてしまった
マルクスとナナイは身体を戻すと、ポカーンとしながらお互いを見つめ、それから二人同時にルアを見た
突然、二人に見つめられたルアはビックリしながら愛想笑いをするしかなかった
明日も2回投稿を目指しますが、もし出来なかったらすいません…