2話 そして生き返り
第2話です
どうぞお楽しみ下さい
メーデイア帝国の首都カルラ
そのカルラ警備を任されている騎士団はいくつかの騎士団で構成されており、平民出身の騎士団は主に平民や商人が暮らす辺りを警備し、貴族で構成されている騎士団は貴族の屋敷が連なる辺りを担当する
神殿のある丘は貴族の屋敷が集まる辺りと商家との間に位置しており、今まさに貴族で構成されている紫騎士団の騎士達が丘の頂付近に来ていた
紫騎士団の副団長であるマルクス・ジェファソンはぶつぶつ文句を言っていた
「なんで俺たちなんだ?
黄騎士団の管轄じゃないのか」
深いダークブルーの髪をクシャクシャしながら事故があったという場所まで来ていた
道の真ん中に荷馬車が停まり黄色を基調としたマントを付けた騎士達が荷馬車を囲んでいる
馬のいる辺りでは小柄な男をマルクスと同じ紫のマントを付けた2人の騎士が男と話しをしていた
馬車の後方には白い布を被せられた物が道の真ん中にある
マルクスはそれが人であるとすぐにわかった
マルクスはそれに近付き跪くと頭とおぼしき方の布を取り、そっとめくった
プラチナブロンドの髪の、まだ幼さが残る少年だ
マルクスは自身の髪と同じ色のダークブルーの瞳をしかめた
まだ15〜16歳の少年の顔は馬車に轢かれたため泥だらけですりキズもある
だがマルクスはそのキズよりも少年の身体にあるキズを凝視した
少年の左肩から腹部にかけて斬つけられた痕がある
マルクスの後ろに立つ彼の補佐官が説明を始めた
「馬車の御者が言うにはあそこの崖から転がり落ちてきて、間に合わず轢いてしまったと
最初は黄騎士団が駆け付けましたが、この傷痕を見て我々に連絡したそうです」
「なるほどな…
あの御者の仕業か?」
「あの男や馬車からは刃物は見つかっていません」
マルクスは少年に再び布を被せゆっくりと立ち上がった
「どこか別の場所で殺して運んで来たのではないか?」
しかし補佐官は首を横にふり
「血痕がありません
落ちてきた辺りにからここまでの血痕は見つかりましたが、それ以外には今の所どこにも見つかっていません」
「…」
御者はたまたまだったのか?
誰かがこの少年を斬つけ崖から突き落とした?
頭に手を当てながら考えていると後ろがザワついている事に気がついた
後ろを見ると紫騎士団の部下達と赤い髪をひとつにまとめた女性が話をしている
「ナナイ!」
マルクスが声をかけるとナナイと呼ばれた女性がマルクスを見つけた
スカートを持ち上げ、およそ貴族の令嬢とは思えぬ仕草でマルクスに向かって走って来た
「ケガ人は!?」
ナナイは手に鞄を持っている
これは応急処置用の道具が入った鞄だ
ナナイは貴族の娘でありながら医学を学び、今は自分の屋敷の横に診療所を建ててそこで数人の医師と外科や内科と分野を別けて治療している
ナナイは外科医だ
そしてマルクスの幼馴染でもある
マルクスは道路に横たわり布を被せられた少年に視線を送り
「ダメだ、死んでる」
とだけ呟いた
ナナイはすぐに少年のそばに行き、布をめくって脈をとったり瞳孔を確認したりする…がすぐにそれも止めた
「まだ子供なのに…」
ナナイはガックリと項垂れた
マルクスとナナイも若い
まだ27歳だが、この少年はどう見ても10代だ
少年の側で項垂れているナナイの後ろに立ち、マルクスもまた少年を見つめる
とその時、少年の口がかすかに開いた気がした
辺りは薄暗く、見間違えかと思った
「ナナイ…」
呼ばれたナナイは後ろに立つマルクスに目をやった
マルクスは恐る恐る指を指し
「ナナイ、動いてないか?」
ナナイはマルクスの指の先、少年に再び目をやると
「がはっ!!」
突然、少年が血を吐き出した
次回、ようやく主人公が喋ります(•▽•;)