薔薇と「雑草」
ある家の庭に紅い薔薇が植えられていた。
「雨は嫌だわ。雑草が伸びるから」
美人の唇のような花弁を動かして、薔薇は言った。雨上がりに水滴を花弁に付けた姿は濃艶であった。その近くでタチイヌノフグリが極小の青い花を咲かせていた。
そこへ人がやってきた。タチイヌノフグリは人の方を向いて、一生懸命に自分をアピールした。ところが人は彼女に冷たい目を向ける。
「邪魔な雑草め、もう生えてくるな」
たちまち彼女は引き抜かれてしまった。人は辺りの草を全て取り尽くすと綺麗になったと呟き、薔薇を愛おしそうに眺めた。
それを見ていた蛙は嘆息した。
「僕にとっては『雑草』達にも、薔薇とはまた違った魅力があるのになあ!」