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董山曇(十一)1Q「楢崎哲郎」

 小学四年の夏休み、臨海学校の授業中に海で溺れた楢崎は、ライフセーバーに助けられ、九死に一生を得た。

 自分が助かった経緯を知った楢崎は、海で人を救うヒーローになりたいと、ライフセーバーになる夢を持つ。

 しかし溺れた後遺症で水恐怖症になってしまっていた楢崎は、水恐怖症をすぐに克服することが出来ず、海に入るどころかコップに入った水さえ見ることが出来ない。子供ながらに自分の症状が重いと察した楢崎は一度夢を諦めかけるも、大人たちとの会話の中で、水難救助員という資格があることや、海上保安官という職があることを知っていくと、海で人を救うヒーローになりたい思いが強くなっていき、学期が変わったのを機に、海上保安官になって、たくさんの人々を救うんだと奮起する。

 両親や周囲の協力もあり、評判のいい精神科に通いながらコップに入った水を飲めるようになったり、顔を洗えるようになったりしていった楢崎は、シャワーまで浴びられるようになる。しかし、水の溜まっている浴槽などに浸かることがどうしても出来ない。

 中学生になっても行きたい高校を目指すことができず、高校では普通科に通いながら水恐怖症と戦い続け、いろいろな病院を渡り歩くも一向に克服できず、悶々と海を遠くから眺める日々が続く。

 そんなある日、白髪でこんがりと日焼けしたおじいさんに声をかけられる。旅館を経営する傍ら、今でも素潜りでアワビを獲っているという日焼けしたおじいさんと、なぜか会話が弾んで意気投合し、毎日のように会っていると祖父と孫のような関係になり、楢崎は自分の抱えている悩みをおじいさんに打ち明ける。

 楢崎の悩みを驚きながらも、しっかり聞いてくれていたおじいさんの口から、実はおじいさんも小さい頃、海で遊んでいた時にクラゲに刺され、クラゲが怖くて海に入れない時期があったことを聞かされる。

 なぜおじいさんと意気投合したのかがなんとなくわかった楢崎は、おじいさんが滝行や坐禅、写経などを取り入れた心理療法で、海を見ると失心してしまうほどの症状だったクラゲ恐怖症を克服したことを知ると、おじいさんが通った地元の花園医院に興味を持ち、おじいさんの勧めもあって、今もあるという花園医院を訪れた。

 花園医院の四代目院長花園恵介(はなぞのけいすけ)は、裏では素質のありそうな者を曲芸過激団に紹介している医師だった。楢崎は花園院長に診察されて早々、楢崎さんのトラウマを乗り越えたいという思いは物凄く強い。それなのに水恐怖症を克服できないのは、心と身体のバランスがうまくとれていないからで、身体を心と釣り合わせるためのセミナーに参加すれば、水恐怖症を克服できるかもしれない、と言われた。楢崎は弱い身体を強くすればいいのか、絶対強くして水恐怖症を克服するぞ。という意気込みを持って、滝行や坐禅などではなく、セミナーという名のサバイバルゲームに参加した。

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