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董山曇(七)

 よく寝た。というより、ちょっと寝すぎた。

 ソファーから起き上がり、キッチンへ行って、冷蔵庫から昨日送られてきた二㍑入りペットボトルの水を取り出して、グラスに注いでゴクゴクゴクと飲み干す。「ぷふぁー」身に沁みる。

 もう一つ、冷蔵庫から小さな容器に入った乳酸菌飲料を取り出し、蓋を開けてゴクっと飲み干す。「ぷふぁー」うまい。これで胃腸も完璧だ。二度と同じ過ちは繰り返さない。と肝に銘ずることができないのが悔しい……。なりませんように、と祈るしかない。お守りとして、胃腸薬でも持っていくか。

 炊飯器の下の物入れから薬箱を取り出し、そこから胃腸薬のカプセルを一回分手にする。

 さて、世の中がどうなっているか聴こうじゃないか。寝過ぎた感じの怠さはあるが、耳の怠さがなくてなによりだ。

 バスルームに入ってシャワーを浴びながら、『聴聞』を働かせる……。

 ──なに? なにげにやるじゃないか。予定より時間が経ってしまったとはいえ、もう未果さんの居場所を掴んでいる。しばらく大丈夫だと言っていたのにあいつがアース探偵事務所に押しかけたらリトルキャンディーの信用は無くなり、未果さんを抱けなくなるという痛恨の極みを味わうことになってしまう。まずいぞ。ちゃんと車を使って移動しているとはいえ、さすがに今から董山が車で向かっても間に合わない距離感。そうそう手荒な真似はしないだろうが、アース探偵事務所を巻き添えにしてしまうわけにもいかない。ここは迅速に移動してもらうためにも、事の事情を知っている三村沙友里にお願いするとしよう。

 浴び終わった董山は衣裳部屋に行き、これ曇用ねと鈴架に言われていたつなぎに着替え、三村沙友里の記憶に纏わる不随意細胞からケータイの番号を聴き、リビングで三村沙友里に電話をかける……。

 これでとりあえず大丈夫だろう。あと鈴架は……。なんだ、まだ保護できていない。

 ゲーム場の団員たちは、場内に侵入したのが鈴架だと掴んでいる。

 臼井は……。暇を持て余して唐揚げをたらふく食べている。

 臼井に捕らわれた仲間の足取りや仲間を連れ去った臼井の足取りはまだ掴めていない。

 董山の足取りは調べても掴めると思っていないことから調べてもいない。

 ちょっとさびしいじゃないかと董山は洗面所で歯磨きやら髪やら髭やらを念入りにセットし、腹のポケットに胃腸薬を入れ、ケータイも入れ、あとの必要なものはだいたい鈴架が用意してくれているから心配ないだろう。董山は車のキーを持ち、また洗面所で鏡を見る。近距離で見る。見る。見る。よーし、アップにも耐えられる。と早急に事務所を出る。

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