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董山曇(五)

 エレベーターの扉を塞ぐように団員が二人、柱の陰に隠れている団員が一人、未果さんの車の後方に隠れている団員が一人、その反対側の車の後方に一人。計五人、国花警備保障のガードマン姿で、麻酔銃を携帯している。谷川たちよりも訓練された者たちとはいえ、交渉決裂した時のために配置されていただけの一般人。いろいろ鑑みても、続けて一般人相手は嫌気が差してくる。

 右上の階数表示がB1に変わり、エレベーターの扉が開いていく。自分が通れる隙間が開いた所でトオッと隙間に突っ込むように踏み切り、エレベーターから飛び出す。

 実際に行く手を阻むように団員が二人立っていた。ヘルメットと一体化した左目のレンズで、エレベーター内の映像を見ていたことにより、二人ともすでに麻酔銃を両手で構えている。

 飛び出た董山は発射される前に団員二人の間をすり抜けるのと同時に右手で右側の団員①、左手で左側の団員②のヘルメットを掴み、董山の肘を折りたたんで二つのヘルメットを董山の腋まで持ってくると、手首を返さずに両腕を振り払って目前にある壁に団員①②を投げつける。

 踏ん反り返るようにして、ゴンっとヘルメットから壁に叩きつけられた団員①②は、その衝撃で気絶した。なんという弱さ。

 次は柱の陰に隠れている団員③。

 ちょっと待っててね、すぐに倒してくるからと未果さんに背中で語り、倒れた時に転がった麻酔銃の一つを足で踏み潰して使えなくし、もう一つは手にとり、団員③のもとへ向かう。

 団員③④⑤とも、①②のヘルメットについていた小型カメラの映像を共有していたが、直接聞こえてきた音しか把握できていない。真っ暗になった映像と通信できないことから、三人とも①②はやられたと察するも、まさかという気持ちが拭えずにいる。「力」の存在を知らないからか。いいね秘密主義で。

 ちょっと動揺している所に、これはどうだ? と董山は通路をいっぱいに使ってバレエのように爪先でステップを踏みながら、阿波踊りというよりかは昔流行ったパラパラの振りで前へと進む。

 アン、ドゥ、トロワ、カトル。アン、ドゥ、トロワ、カトル。

 防犯カメラの映像に切り替えた団員③も④も⑤も、董山のステップにポカンとするかと思いきや、なにをするんだという意識で董山の動きをじっと観察している。

 そんなに華麗か? と董山は踊りながら一つ目の柱を過ぎる。③が隠れているのは右側にある二つ目の柱の陰。董山はパラパラとステップを踏みながら団員③に気づかないふりをして、二つ目の柱も通り過ぎる。

 団員③が、董山の姿を目視で捉えると、ここぞとばかりに麻酔銃を構え、(さよなら)と引き金に手をかけた。

 お前がさよならだ。と董山は③が引き金を引く瞬間ピタッとステップをやめ、③が狙っていた軌道の反対側から麻酔銃を放つ。

 カチッと静かに発射された麻酔の針は、団員③が引き金を引く前に③が構えている銃をかすめるよう通過して、③の首にプスッと突き刺さった。

 団員③は首の痛みに気づき針に気づき、(ひええ)と針を抜くも、即効性のある麻酔が仇となり、貧血でも起こしたかのようにふらっと倒れた。

 はい、三人目終了。やりがいもくそもない。

 次は未果さんの車の後方に隠れている団員④と、その反対側の車の後方に隠れている団員⑤。④⑤は③がやられたと察し、手ぶりだけで会話すると、一気に二人で董山を捕獲する作戦に変えた。

 ならこっちも一気にトオッと董山は地面を大きく蹴ってトオッ、トオッと足にバネがついているかのように大きな歩幅でトオッと進んでいく。角に来た所でクイっと右に方向転換し、トオッ、トオッと進んでいく董山の動きを、④も⑤も映像で捉えきれていない。未果さんの車の後ろに団員④、その反対側の後ろに団員⑤、二人の場所も変わっていない。

 トオオッと董山は強く踏み切って低い弾道で車の屋根を何台も飛び越え、柱にワンバウンドして目的の車の後方に着地する。ギョッ、といきなり目の前に現れた人影に団員⑤は目を丸くした。そりゃ驚くかと董山は団員⑤の上腕に麻酔銃を押し当てて撃ち放ち、すかさずトオッと飛んで同じ柱を足場にして車の屋根一台分を飛び越え、未果さんの車の屋根も越えてまた柱にワンバウンドして車の後方に着地する。⑤と同じように屈んで待機していた団員④もギョッ、と驚いた。だよなと董山は④の上腕にも麻酔銃を押し当て発射し、未果さんの車に当たらないよう寝かせ、はい終了。

 なんだ、この茶番は──。ゔ、うそだろ? いきなり董山の腹に、激痛が走った。


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