第28話 追放されたSSS級チート回復術師~美少女たちが復讐しようと言うので、仕方なく旅に出た~②(クロウ視点)
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シロウが現れたと言う噂を聞いて、俺たちはギリギスの街へやって来ていた。ここには、セシリアに聖女繋がりの友人がいるようだ。その人に話に聞けば、何か手掛かりが見つかるだろうか。
「勇者様とは、シロウさんの事ですか?」
どうやら、知っていたようだ。
話によれば、奴はこの近くの孤島で呪術師をブチのめした後に、何故か街中の肉を粗探しした挙句、教会の司祭たちをす巻きにして、このマルティナを含むブィー・グワンという菜食主義の宗教の信徒の前で晒上げにしたらしい。
「ですので、街の中であの人の名前を呼んではいけませんよ。みんな、彼を恐れていますから」
彼女、マルティナは、何かを隠しているようだった。しかし、それが何なのかは大体予想が付く。どうせ、シロウの奴が「この方が都合がいい」などと、偽善ぶったことを言ったのだろう。
「とんでもない話ね。あの男、本当に正義の味方なの?」
セシリアは、シロウの顔を思い出したのか、少し怯えたように言った。
「いいや、あいつは正義の味方ではないな」
「どういう事ですか?」
ヒナに聞かれ、何故か俺の口から言うのは恥ずかしかったため、アカネに目配せをして語りを代行してもらう事にした。
「えっとね、シロウさんは命の信仰者なんだよ。だから、あの人は絶対に人を殺さないんだけど、その代わりに、悪い人に対しては殺す以外の方法なら何だってする人なの」
「そんなの、ありなの?」
「分からないよ。でも、あの人がそうでなければ……」
聞かなくても、その先の言葉は分かった。だから、俺は割って入るように口を挟んだ。
「別に、アカネが悪いわけじゃない。俺たちは、元々ただの一般市民だったんだ。あいつが異常なんだよ」
「……うん、そうだね」
「それはさておき、ならヒナたちも後を追った方がいいですよね?マルティナさん、あの暴力勇者は一体どこへ向かったんですか?」
「ハードポイントへ向かったはずですが、それも随分と前の事ですよ。シロウさんに、何か用事があるのですか?」
「ありますっ!あいつと猫女をぶっころ……っむぐ!」
言い切る前に、俺はヒナの口を塞いだ。ピコピコとケモミミを動かしながら、普段から高い体温を更に沸騰させている。本当、見た目に寄らず物騒だな。
しかし、なるほど。どうやら、ここへ来ていたのは俺と再会するよりも前だったみたいだ。
「どうしたのですか?」
「何でもないわ。それより、マルティナ。他に、勇者が行きそうな場所を知ってるかしら」
「恐らく、カチョー以上のクラスの悪魔幹部が住んでいるダンジョンを回っているんだと思いますけど。何かあった時の為にって、ホットラインクリスタルを渡してくれているから、連絡は取れますよ」
ツイてる。シロウめ、偽善ぶって痕跡を残すとは。バカな奴だ。
「しかし、あなたたちは彼らとどういう関係なんですか?」
「えーっとだな……」
昔の仲間だとは、絶対に言いたくなかった。しかし、都合のいい嘘を吐こうにも、どうしても王家を交えたモノになってしまう。何を言うにも、必ずあいつの力を借りてしまう事が、心の底から腹が立つ。
「あたしたち、実はシロウさん達の知り合いで」
「……アカネ、それは」
「会いたいんでしょ?なら、そこは意地を張るところじゃないよ」
言われ、どうしてか俺は黙ってしまった。
「そうですか。なら、連絡を取ってみます。少し、待っていてください」
そして、マルティナはカーテンの奥へと入って行くと、十分くらい経ってから戻って来た。
「お待たせしました。少し、話し込んでしまいまして」
「それで?あいつは今どこに?」
「フェルミンという街に居るようです。もう少しの間は、そこに滞在するみたいですよ」
「なるほど、分かった」
言って、俺はすぐに彼女の家を出た。しかし、歩いている途中に妙に胸がモヤモヤとしてきて、だから一度立ち止まってからため息を吐くと、扉の所まで戻った。
「ありがとう」
そして、再び歩き始める。まぁ、わざわざ連絡までしてくれたんだ。お礼くらい言っても、バチは当たらない筈だ。
街は、至って普通の様子だ。レストランの軒先には、肉の食感や味を追求した野菜の料理が宣伝されていたり。逆に週に一度だけ、提供する料理に一切肉を含まない『フレッシュデー』というキャンペーンが開催されていたり。
風の噂で聞いていたような、雰囲気の悪さは感じられない。あそこに居るのは、この街を訪れた冒険者たちだろうか。ブィー・グワン信徒と席を交えて、それぞれの料理を楽しそうに食べていた。
けど、これは決して、シロウがもたらした結果なんかじゃない。この街の奴らが、自分たちで平和に向かって行ったんだ。あいつがやったのは、ただ暴力を振るっただけ。
ほら、あそこの教会を見てみろ。入口の所に、「勇者お断り」なんて看板が立っている。あいつが、この街の人間に全く好かれていない証拠だ。
「クロウ様、お腹が減ってるんですか?」
そんな事を考えながら街並みを眺めていると、隣に駆け寄って来たヒナが甘えるような声で言った。
「……あぁ、少し早足でここに来たからな。お前たちも、減ってるのか?」
「はいっ!折角だし、ヒナたちも食べていきましょうよ!」
まぁ、マルティナはシロウたちがもう少し滞在すると言っていたし、ちょっとくらいゆっくりしていても大丈夫だろう。……別に、会いたくないわけじゃないぞ。
それに、金はギルドの仕事で稼いだ分がたくさんある。明日には馬車を借りて、フェルミンに旅立てば問題ないはずだ。
待っていろよ、シロウ。今のうちに、精々偽善ぶった活動でも続けているがいいさ。
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