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第14話 追放した回復術師が、ハーレムを連れて「ざまぁ」と言いに来た②

「落ち着け」



 言って、飛び立った瞬間のモモコちゃんを、拳がクリーンヒットする直前に首根っこを掴んで止めるシロウさん。



「……ほっ」



 と思ったのも束の間。彼女のあまりにも軽い体重と、それに反比例するような身体能力の高さと、シロウさんの鋼のような肉体が謎の相乗効果を生んで、モモコちゃんは拳を振り抜いた勢いのままに、太い腕の周りを振り子のように一回転!そして、わきの下をすり抜けて上空へ駆け上がり。



「あ、サマーソルトだ」

「しかも、逆サマーソルトだ」



 ゴッ!と。クロウの脳天へ、強烈な踵の一撃を叩き込んだ!



 あまりに美しいモモコちゃんの動きに、俺もアオヤ君も目を奪われていた。だからだろうか、頭からフシューと煙を出して倒れるクロウに群がる女性たちの、異常に騒ぎ立てるような声が全く気にならなかったのは。



「クロウ様!しっかりしてください!」

「この猫女!あんた、クロちゃんに何をするのよ!」

「シャーッ!」



 吼えて、線を引くように光る鋭い眼光の先には、クロウのパーティメンバーの、やたら巨乳の女性がいる。



「多分、あの露出度の高い服装と、大きな胸が(かん)(さわ)ってたんだろうね。俺たち、機能性重視の地味で分厚い冒険服だし」



 小柄な事、地味に気にしてるっぽいし。



「それが、シロウさんへの文句で着火したってことですか。そう思うと、結構かわいいですね」



 大物だなぁ……。



「こら、モモコ。ダメだろうが、こんなところで逆サマーソルトしたら」

「……ごめんなさい」

「謝る相手、俺じゃねえだろ?」



 しかし、モモコちゃんは何も言わず、拗ねたようにソッポを向いてしまった。



「大丈夫か?クロウ。ウチの若いのが、悪いことしちまったな」

「ざ、ざまぁないな、シロウ!ホーリーロッドの適合者は、まるで野良猫じゃないか!それに、俺に言う事を聞かないなんて言いながら、そいつを全然教育出来ていないじゃないか!」



 クロウは、冷静さを欠いていて、立ち上がる事すら忘れている。



「お前は、結局自分の言う通りに動く駒が欲しいだけなんだろ!?俺は違う。俺は、みんなを……」

「それ以上は、止めとけ」

「止めとけだって!?正論を突きつけられて、耳が痛くなったか!?」



 確かに、一見正論のようにも聞こえる。でも、うまく説明できないんだけど、クロウの理由とは何かが違うような。



「まぁ、俺の命令を聞くってのは、世界救う為に必要な事だしな」

「ほら、見た事か!俺をクビにしたのはやっぱり不当だったんだ!謝れ!今すぐここで、土下座して謝れよ!」



 シロウさんは、何も言わずに苦笑いを浮かべていた。何だろう、恐いわけでも無くて、ましてや優しいわけでも決して無くて。聞いている俺だってイライラとしてくるのに、彼の感情が、全然分からなかった。



「みんなもそう思うだろう?」

「はい。クロウ様が正しいです。早く謝ってください」

「そうよ。クロちゃんに謝りなさい」

「ほら見ろ!謝れ!謝れよッ!」



 声を聞いて、周りに次々と人が集まってくる。そんな様子を見て、シロウさんは眉間を親指でカリカリと掻いた後に、深いため息を吐いた。



「なぁ。お前、恥ずかしくねえのか?」



 その言葉一つで、水を打ったように場が静かになった。



「なん……だと?」

「俺さ、お前みたいに、棚の下でビスケット落ちてくんのをボケーッと突っ立って待ってるだけの人間の気持ちって、全然分かんねえんだ。だから、何にそんなにムカついてんのかも分かんねえんだよ」



 悔しいけど、俺にはクロウの気持ちが、少しだけ分かった。



「待ってりゃ、誰かが認めてくれるってか?どうして、そんな甘ったれたこと言えるのかも分かんねえし、その癖に口開きゃ正当な評価正当な評価って言うしよ。お前はなにか一つでも、俺に自分の頑張りをアピールしたのか?黙ってんのがかっこいいとかショボイプライドぶら下げて、くっだらねえ事考えて、あのアクセサリーや奥義の説明もしなかったんだろ?違えか?」

「だ、だけど!実際、効果は結果として現れていただろう!?だったらいいじゃないか!戦ってる途中に突然覚醒する事と、一体何が違うんだよ!結果を出した!それだけでいいだろうが!」

「なら訊くけど、お前の仲間って、一体どんな結果を出したんだ?どういう理由で、そこにいるんだ?」

「……は?」



 クロウは、突然のその質問に、答えることが出来なかった。



「だって、お前めちゃくちゃ強いじゃん。それでさ、その子たちと協力する事とか、ぶっちゃけないだろ?戦い見せびらかして、精々褒めて貰ったりとか、そんな感じじゃねえの?」

「あぅ……あ……っ」

「別に、悪いとは言わねえよ。だが、それを俺にやれってのは通らねえよ。こっちは、世界救ってんだぞ?」

「や、やめ……」

「論点がズレちまったな。まぁ、俺が言いたいのはさ、そのデカすぎるプライドが、世界を救うために邪魔になるってことなんだよ。俺、何回注意したよ。お前にさ、もう少し柔軟になってみろって」

「し、シロウ……ッ!」



 言うと、クロウは即座に立ち上がって、どこかから取り出した杖を構えると、シロウさんに向けて構えた。周囲の人たちは悲鳴を上げて、モモコちゃんはシロウさんの服をギュッと掴んで影に隠れている。



「なぁ、クロウ。人生の先輩として、お前を大人と認めて。一つ、アドバイスをしておいてやる」

「黙れ……ッ!」



 シロウさんは真剣な眼差しを向けて、真っ直ぐにクロウを見据えた。



「無駄なプライドなんて、捨てっちまえよ。そいつは、クソみてえなモンさ。普通、取っておかねえだろ?」



 そして、彼は踵を返すと、モモコちゃんを前に誘導してからこっちへ向かい、「肉、食いに行こうぜ」と笑ってから俺たちの肩を叩いた。



「逃げるのか!?」

「撃つなら、背中にしてくれ。これ以上、前に傷つけられたらたまんねえから」



 しかし、振り返って確認してみても、攻撃は放たれなかった。代わりに、残響のような暴言が、角を曲がるまで延々と聞こえてくるだけだった。



「……い、いつか、お前を必ず殺してやる!絶対に、後悔させてやるぞッ!」

この後、何度か出会う事になりそうですね。


「面白かった!」


「この後どうなるんだ?」


と思った方は、


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面白ければ☆5、クソなら☆1と、素直な感想をお待ちしてます!


よければブックマークして続きを待っていただけると幸いです!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 短編から流れて参りました。 何と表現するか悩みますが短編より読んでいて辛いです。 モモコが指示に従わないような書かれ方をされていますが、冒険外で咄嗟に従わないのと戦闘中で逆らってその…
[一言] なんとなくなんですが、この再会は文字数がある分テンポが短編よりあまり良くない気がする… 再会したとは言っても、あまり大きな(?)事件が起きるわけではないんですよね。だからちょっとそう思ってし…
[気になる点] >「こら、モモコ。ダメだろうが、こんなところで逆サマーソルトしたら」 >「……ごめんなさい」 >「大丈夫か?クロウ。まぁ、こいつも謝ってるし、未成年のやった事だと思って見逃してくれ」 …
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