全てはサッカーボールで始まる
ずがぁん
「いってぇええええええええええ」
突然後頭部から激しい衝撃を感じた。
あまりの衝撃に、俺の頭はパニックになる。
なんだ、なんだ、俺寝てたはずだよな!?
寝ぼけた頭で現状を把握できないまま、頭を抱えて転がりまわる。
幸い、思ったほど痛みはなく、若干ジンジンする頭を押さえながら布団から起き上がる。
「サッカーボール?」
部屋にあったものをいくつか薙ぎ倒した先に転がっていたのは、白と黒の模様が特徴的な、どこにでもあるサッカーボールだった。
棚の上から転がり落ちただけじゃあんな衝撃は来ない。
というより、そもそも俺の部屋にはサッカーボールなんかない。
だいたい、どっちかと言えば野球の方が好きだ。
だからと言って、野球ボールがある訳ではないが……。
って、そんなことはどうでもいい、なんで俺は朝からサッカーボールに強制覚醒させられなければならないんだ。
うーん、周囲の状況から推理してみよう。
……
…………
………………
さっぱりわからん。
普通の高校生にこの状況から理解できるわけがない。
まだ若干痛む頭をさすりながら、キッチンに向かう。
「なぁ、母さん、突然サッカーボー……え?」
「あらケンジおはよう、今支度してるから先に顔洗ってらっしゃい」
「支度って、なんの?」
俺は思わず返してしまった。
「見ればわかるでしょ、朝ご飯よ」
「は?」
「なにあんた、まだ寝ぼけてるの? 」
母が変なものでも見るような顔をする。
あれ、俺がおかしいのだろうか?
とりあえず、こういう時は深呼吸だ。
目を閉じて
スー
ハー
スー
ハー
目をしっかりこすって
頬を叩いて
カッと目を見開き
もう一度母を見る
しかし、やはり朝食作ると言っている母は何故かキッチンでリフティングをしていた。