デカラケ
「なんだ、これ?」
友人の奇声に俺はモニタから思わず、顔を上げてしまい、
ちッ、と舌打ちした。
これで高得点は・・・
ボルグ?
アナウンサーは彼をそう呼んでいた。
短い短パン、金髪にヘヤバンド。
ウインブルドンの決勝?
彼は昭和の時代のテニスプレーヤーだった。
俺はまた視線をモニタに移し、
Tポイントのもぐらたたきゲームを続けた。
結局45点。
本当は69点くらいをたたきだせたのに。
たかがゲームと思うだろうが、そうではない。
金になる。
500点で1ポイント、1円になるのだから。
「ラケット小さ~」
画面を見ると、確かにラケットの面が小さい。
現在のラケットの半分以下?
それからデカラケが出現したと、解説者は言った。
デカラケはラケットの面が大きい。
以前はラケットのフレームの素材は木材だった。
しかし、軽量で強度があるカーボンファイバーがフレームに採用され、
デカラケが登場したのだった。
それからテニスが変わった。
ラリー戦からサーブ&ボレーに。
ラケット面が大きくなることで、スイートスポットが大きく・・・
俺はいつのまにか見入っていた。
でも、頭は別の思考回路がフル回転していた。
現在のデカラケを作ろう。
スイートスポットが超大きい。
これなら今の2倍は稼げる・・・
翌日。
半日かけて作った秘密兵器を友人に披露した。
ゲームが始まった。
友人は、俺のプレーを見て、あ然とした。
そして、言った。
「超ヒキョー。
何それ?」
「卑怯じゃない。
技術の勝利だ」
俺はニヤリとした。
「皆殺しじゃん」
穴から出てきたモグラをすべて打ちもらすことなく、
引っ叩いていた。
「デカっ。
そんなん、インチキじゃん」
「スイートスポットを大きくしただけだ」
そう俺はマウスの示すポイントを広げたのだ。
それによって、すべての穴の1クリックで叩けるようにしたのだ。
やった85点。
これまで見たこともない点。
デカラケならぬ、デカマウス。
「スゲー。
そのアプリで、一儲けできるじゃん」
俺は首を横にふる。
「公開したら、もぐらたたきみたいなゲームがなくなる。
だから、ひっそり楽しむ」
俺はデカマウスを振るい、今ももぐらたたきゲームを楽しんでいる。