グレイルと白狐
白狐は倒れているグレイルを蹴り上げた。蹴った足は地面から空へ180度、美しく弧を描いた。グレイルはゴムまりのように勢いよく背中から衝突し、人間ではありえない角度に反れ地面に落ちた。
それでも白狐は、油断しなかった。
きちんと蹴った感触もダメージを与えている感触もあるが、グレイルからは血もでず、折れ曲がったはずの体が、元通りになっている。
白狐は思考する。これは超回復か、不死身か、前にあった不死族とやらはダメージを与えたらそれなりに反応があったものだが、この男はダメージを与えている感触はあるが、その感触とあいつの体の反応があっていない。その証拠にすぐにこちらに視線を向けた。
そしてグレイルはむくっと立ち上がり、手の甲で白衣から土埃を払った。ただグレイルの顔からは、ザックフォードと顔を合わせている時のような薄ら笑いは消えていた。
「お前何も……」とグレイルが口にしたときにまた白狐の膝が顔めがけて飛んできた。グレイルは膝が当たる寸前に、顔を少しだけずらし膝の直撃は避けられたが、白狐は空中で器用に蹴りに切り替え、グレイルを木の幹ごと蹴り飛ばした。
先程と同じ、まただと白狐は思った。グレイルは蹴られた直後、一瞬苦悶の表情を見せるが、すぐさま元通りになっているように見える。
グレイルは、白狐に蹴り飛ばされたが、今度は空中で回転して『グラヴィティ・コラプス』を唱えた。ザックフォードに使用した時と同様、二人の周りを包み込むように黒いドーム型の膜が形成され、白狐は自分の体重が重くなるのを感じた。
しかし、白狐はそんなこと、おかまいなしにグレイルにまた突っ込んでいった。だがグレイルは白狐の突進を、躱す素振りも反撃する様子も見せずただ立っていた。そして白狐の攻撃が当たるかという瞬間に薄ら笑いを浮かべて目の前から消えた。
「いくらお前が早く動けると言っても、この空間じゃ関係ないんだよ」と白狐の後ろからグレイルの声が聞こえた。白狐がその声を聞いて振り返るとグレイルは、10メートルくらい離れたところに立っていた。
「転移ですか」
「そんな簡単に答えを言われるとつまらないな、しかし…… 二回も蹴り飛ばしやがって…… お前は何者だ? 人の邪魔しやがって……」
「白狐です。人の邪魔ですか、貴方が先に主様の邪魔をしたのですよ、自覚があるかどうかわかりませんが」
「邪魔?」グレイルは怪訝そうな顔を見せた。
「ええ、そうです、ですがもういいんです、そんなことはどうでも」白狐はそっと手を前に出した。そして「貴方のトリックはもうわかったので」と言った。




