報告
千景は自分の部屋に戻るとすぐに、天音にグループヴォイスチャットを送ってみた。夜も12時を過ぎ、時間も時間だったことからすぐに反応が心配だったが、すぐに天音は反応した。
「お疲れ様です、御館様」
「お疲れ様、そっちはなにか変わったことはあったか?」
「反乱を起こしていた貴族の鎮圧に出ていたアルザック男爵が城に戻ってこられて報告を受けました。それ以外に特に報告すべきものはありません」
「そうか、無事でなによりだよ、こちらはまだ時間がかかりそうだ」
「そうですか……それは少し寂しいです……」
「天音は今どこにいる?」
「屋敷の自室ですが」
千景は『飛び蛙人形』をこの世界に来て初めて使って屋敷の転移の間に飛んでみた。使うと同時にゲーム内の時のようにすんなりと屋敷に設置された転移の間まで到着した。こちらの世界でも問題なく飛び蛙人形も転移の間も正常に機能しているようであった。屋敷に到着するとすぐに千景は、天音の部屋に行きノックをした。ドアから顔を出した天音の顔が、千景の顔を見て花開いたのがわかった。千景がそれを見て「大丈夫いつでも会える」と言った。帰還地点作成の『定点十字石』を宿に打ち込んである。そして天音の後ろから「それで主様、私がここにいることは想像出来ました?」と白狐が言ってきた。
「白狐もいたのか」
「ええ、世間話を少々、それであちらの国はどうでした?」
「とりあえずの危機は去ったかな、もう一歩踏み込んでみるが、そうだ教会のことをちょっと調べておいてくれないか、聖魂騎士団についてだ」
「承知しました、主様」
「ただあまり無茶はしないでくれ、あちらはどうやら俺達のことを少なからず知っているようだ」
「少しずつ相手の戦力を削ぎますか?」白狐がどうやら聖魂騎士団を敵と認識しているような口ぶりだった。
「いや、今はそういう段階じゃない、相手が敵か味方か、どうでもいいものかすらわかってないからな」
「この世界は色々とやりづらいですね」白狐は、腰かけているベッドから投げ出している足を組み替えてつまらなそうにそう言った。
「御館様は、この後どうするんですか?」と聞いてきて、千景は自分が腹を空かせていることと眠いことを思い出した。
「そうだな…… 天音、悪いんだがご飯を作ってくれないか、何にも食べてないことを思い出した…… そしてネムイ……」
「か、かしこまりました、すぐに!」と天音が部屋から飛んで出て行った。
「お疲れのようですね、主様」
「まあな」緊張の糸が切れると、色々なことを思い出す。
「少し横になっては?」白狐がベッドから立ち上がり、千景を促した。千景は白狐の言葉を素直に聞き入れ、重力に負けるようにドカリとベッドに腰を下ろした。
「うーん……」
「どうしました主様、浮かない顔をして」
「白狐に頼みたいごとがある」
そう言って千景は顔を上げた。




