陽光の丘
陽光の丘に着くやいなや宙音が「やりましたねっ! おやかたああ!」と言って飛びついてきた。「で、それはどうしたんだ?」ヴァンプドラゴンと漆黒の鎧を着た騎士が横たわっていた。
「いきなり、落下してきてこうなったんですよ」
「落下してきたか……死んでるのかというか元々死んでるのかややこしいな」
丘は来た時とは違い、腐臭は消え去り、夜の優しい風が疲れた体をふわりと軽くする。アールシャールの眼光が今回の戦いで酷使されたからなのか今にも消え入りそうな光の明るさになっていたが、それでも賢明に、荒れた大地を照らしていた。丘の上の方まで来た時にこちらにアタルが走ってきた。
「千景様!」
「アタルか、城の方は大丈夫だったのか?」
「はい! ぎりぎり間に合ったようで、被害はなかったです、しかし、すごいですね、話は聞きました。マスクを外してこの丘に立てる日が来るなんて夢のようですよ、本当に、雲も晴れて星も月も見える、ここでパーティーを開きたい気分ですよ」
「そうか、そいつはよかった、一応ボスみたいなやつは倒したんだが、もう不死族が迫ってくることはないんだろうか」
「どうなんでしょう……あれらは『腐神の大井戸』と呼ばれる大きな穴が、あの山を越えたところにあるらしいんですが、不死族はそこから来ているという話だったんです、何分あのような状況で、黒い大地に足を踏み入れること自体、自殺行為だったもので確かめる方法なんてなかったものですから……」
「そうか、そこに行ってみる価値はありそうだな」
「今すぐにですか?」
「流石に夜が明けてからかな、色々と万全にするために」宙音の第三の目スキルのクールタイムと、ステータスが完全に戻るにはもう少し時間がかかる。
「なら、お疲れでしょうから近くの宿まで案内しますよ、それでも結構時間がかかりますが、城よりは近いです」
「そうして貰うとありがたいな、そうだ一つ聞きたいことが」
「なんでしょうか」
「教会についてのことなんだが、聖魂騎士団って知ってるか?」
「名前だけはですが、我がエンデラ王国自体、あまり教会と接点がないものですから、それだったらアヴァルシス王国に戻ってから聞いた方が話が早いと思いますよ」
「今日そいつらを見たということはないんだな?」
「私が知る限りは」
「そうか、わかった、ありがとう」
それから、千景は、陽光の丘にいる魔導部隊の全員から握手を求められたり、泣きながら抱き着かれたり、慌ただしい歓迎を受けながら、魔導飛空艇に乗り込もうとしたその時、不意に水音が「御館様!」と呼び止め「あれっ!」と言った方を見ると、漆黒の騎士がよろよろと立ち上がった。動けたのか。すぐさま、千景はタラップから飛び上がり漆黒の騎士の目の前に立った。




