レガリスタ
「それでだ千景……」
「なんだ」
「あれのことなんだが……」手に持った武器らしき十字架で賢石をもう一度さした。
「賢石のことか?」
「賢石……そうか、うん、そうだな、あの賢石のことなんだが、俺が持って帰ってもいいか?」
――賢石にあるドロップ情報等はすでに取得してるが、文字化けしているのか字が読めない
「あれが必要な理由はなんだ?」
「俺達に必要なものなんだ、それ以上は答えられない」
「それじゃあ、あれは渡せないな、ヴィネリアを倒したのは俺だ、あれにはまだ利用価値がある」
「そうか、じゃあどうしたら譲ってくれる、あれを持っていくのが俺の仕事なんだ」
「情報がほしい、まずはザックフォード、お前が何者かだ」
「情報か、答えられる範囲のことは誠実に答えようじゃないか、ただ言えないことは言えない、俺は聖魂騎士団所属聖遺物回収特務部隊『レガリスタ』のメンバーってとこかな」
――聖魂騎士……虎徹がアジトを潰した時に、そこにいたやつらを引き取ったやつか、聖遺物……
「賢石が聖遺物ってことか?」
「そうだ、だから俺が回収する」
「なぜ俺とヴィネリアがここで戦っているのを知っていた、タイミングがよすぎる」
「言葉を貰ったかな、俺が言えるのはここまでだ」
「聖杯のことについて何か知っているか? どこにあるのかとか、俺はそれを探してるんだ」
「聖杯か……ありかは知らない、俺達も探している」
ザックフォードは自分が言った通り、誠実に答えているように見えた。
「他になにか?」
「知りたいことは大体そんなところか」
「そうか、ならもういいか」ザックフォードが手を振ると、崖の上の岩陰から数人、ザックフォードと同じような鎧をつけた者たちが出てきた。そして「おいっ、運び出せ!」と命令をした。千景はその様子を見て、水音と宙音がいる丘のほうに向かった。
――賢石が持っている情報は抜いてあるから、ザックフォードが持っている情報を聞き出せた分得したか。聖杯のありかは知らず、探しているか……そういえば『アルタヴァンピエスタ』の生き残りが水音達の方に突っ込んでいったが、まあ心配ないか
千景は、加速して丘に向かっている途中背後から、強烈な爆発音が響いた。なんだ、と後ろを振り返り、身構えると、賢石が粉々に砕かれ、中から人型の何かが出てきた。なんだあれ、千景はザックフォードの元に加速して舞い戻る。どこかの司祭のような聖職服を身に纏った少女が、ザックフォードの仲間が担ぎ上げ運び出していた。
千景は、ザックフォードの近くまで行くと「俺は石はくれてやるといった。ただその中身には言及していなかった。違うか? こちらが知らないからといって、騙しうちのようなことは許せないな、それはアンフェアーだ」
「おいおいおい、冗談はよしてくれよ、お前は、箱だけ渡して中の商品を渡さないというつもりだったのか、俺はお前の質問を受けてそれにきっちり答えた。そうだよな? お前は一回立ち去ったんだから、俺の答えに満足したんだろ? これはもう終わった取引だ」
――しくじった。賢石と勝手に決めつけて、ゲーム内と同じようなものだと思い込んでた。中に人がいるなんて想像すらしていなかった。無理矢理連れ帰るか。
「沈黙だな、納得してくれたと俺は取るぜ、わかってくれてなによりだ、心配するな、俺達は騎士だ、下種な扱いはしない」
「本当だな」
「約束しようじゃないか、このザックフォードの名にかけて」そう言いながらザックフォードは周りにいる騎士たちに引き上げるように手で合図した。
――しょうがない、今回は引く
「わかった」
「わかってくれてなによりだ」と言ってザックフォードは悠然と騎士たちの後ろをついていった。
――思い込みはだめだ、聖魂騎士、教会の手の者か、あそこは何かを知っている
千景は一回深呼吸をして、水音達がいる陽光の丘をもう一度目指して加速した。




