災禍の魔典の顕現者
職種不浄蟲神、千景は千里眼のスタータス確認でそう読み取った。地面から出てきた胴体は、天高く伸び、大量の足が二列並び、せわしくなく動いていた。
「気持ちわるっ」
「虫いいいいいい」
「あれはムカデの腹側か」
でかいムカデと思われる異形の者は、地面から体が全て出るやいなや、そのまま千景達の方に倒れ込んできた。それを三人は、左側に避けつつ躱すが、ムカデは体を捻って、多数ある足ですくいあげるように追い打ちをかけてきた。ガキィンと先程聞いた宙音の防御の陣が、攻撃を弾く音がした。
千景は空中に舞う宙音と水音の襟首を捕まえ、後方に加速して一気に距離を取る。そしてムカデの化物の体全体が視界に収まるところまで来た。
そこにいたのは、黒光りした固そうな甲殻を身に纏ったムカデの体の上に、自由の女神くらいの大きさがあるんじゃないかと思えるほどの女性の半身が乗っかっていた。ただ手に持っている物はたいまつではなく、これまた大木かと思えるほどの黒い木の杖を握っていた。
「時間が……」宙音が不安そうに言った。
「開眼状態解除まであと何分だ!」
「五分ない」
「話を聞くとか言ってられなくなったな、蜜柑玉撃て!宙音!」
宙音はこくりと頷いてすぐさま「開眼方技『多重隕石麒麟玉』あああああ」とムカデの化物に蜜柑玉を放った。
五連隕石が、ムカデの化物に向かって降り注ぐ、化物は、それを黒い杖で受け止めたが隕石は杖と接触した後すぐにはじけて飛び散り、防ぎきれていないようだった。『ルナヴァンピエスタ』のメンバーも巻き添えを食らっている。
――不浄蟲神という職種といい、あの黒い杖といい、こいつが『災禍の魔典の顕現者』ヴィネリアと見て間違いなさそうだな、隕石が当たったところから、黒い煙が出てるからダメージは、通ってそうだが……ただレベルまで読み取れないのが気になる……
千景は『倭国神奏戦華』内でただ一振りの刀、神滅刀『天奏一華』をイベントリから取り出した。鞘なしの抜身の刀は、常に、その刀身から花びらが舞い散っていた。




