巨大手裏剣『ガシャ丸』
「後はあれだけか、宙音ちょっと戻ってこい」
「一気にやらないんですかあ、おやかたあ」宙音が不満そうな声を出した。
「何かあったらすぐ『飛び蛙人形』で屋敷に戻ればいいし、これだけやれば力の差もわかっただろ、少しあそこにいるやつと話がしたい」
「わかりましたあ」と言いつつ、まだ開眼状態の時間が大分残っているので宙音の表情から不貞腐れているのが見て取れる。
――黒い化物の体内から出てきた、一際大きなヴァンプドラゴンに騎乗している騎士、職種はパイルエスカルネと同じレプリカ―ズドの使徒となっているが、鉄仮面に覆われているので顔は見えない、声からすると女だとは思うが、話をしたいと言っても、どうするか……倒すのは簡単なんだが……
こちら側を見ながら空中で旋回しているヴァンプドラゴンに騎乗した一団は、帰還する気配がなかった。
「話がしたいって言ってもどうするんすかあ、あれえ」と宙音は胡坐をかいて、どっかりと座りこんで、その横に水音が、ちょこんと座っている。二人は完全に休息モードに突入しているようだった。
「一応まだ敵地の中で、あそこに敵が残っているわけだから、気を付けてくれよ」
「大丈夫、大丈夫、防御の陣、三重に重ね掛けしてあるから、例えおやかたが殴ってこようとも、三発までは防げますよお」
「そうか」と言って千景は、巨大手裏剣『ガシャ丸』をイベントリから出して思いっきり水音に向かって振ってみた。
ギギィーンという、金属音とはまた違った硬質な音が鳴り響き『ガシャ丸』は見事に弾かれた。それを見た宙音が飛び上がり「こわっ、何してるんですかっ! おやかた! 防御の陣、張ってあるっていっても怖いものは、怖いんですからね!」
「信用してるけど、ちょっとした耐久性の実験だよ、一応ね、一応だ」
「まったく……その味方同士で実験するの、悪い癖だと思うんですよね! でどうするんですか、あれ? もうやっちゃっていいですか? 降りてこないし」
「もうすぐ日が暮れるから夜になるのを待ってるんですかね、ああいうのって夜になると強化されますから」水音が言うことも、もっともだった『倭国神奏戦華』だけではない、大抵のゲームのアンデッドモンスターは、夜になるとステータスが強化される。情報がほしいということや、帰還されると厄介だとか色々なことを考えて、時間だけが過ぎていく。
「もういいじゃないですか! 倒しちゃえば!」宙音がそう言いながら、修鬼の払子を片手に、立ち上がった。
その時少しだけ地面が揺れた。
――待っていたのはこれか
地面の揺れが更に大きくなり、千景達の体はそれに反応するように、少しだけ地面から浮き上がった。自分達にかけておいた敵の攻撃を自動で避ける強化の術が、どうやらその地面の揺れを敵の攻撃と認識したらしく、自動で浮き上がったようだった。
更に揺れが大きくなるのは見るだけで分かった。そして次の瞬間、大きな音と共に地面が割れ土煙が舞ったかと思うと、そこから巨大な異形の者が姿を現した。




