開眼道士
三人は、ビルのような巨体の黒い化物の周りを疾走して、攻撃を躱す。黒い化物は、その巨体に見合うだけの音量を持った咆哮による攻撃、そしてどこからともなく伸びてくる、伸縮自在な鞭のようにしなる攻撃や、さらにはその巨体を存分に生かした踏み付け攻撃等を行った。そしてその合間を縫うように『ルナヴァンピエスタ』と呼ばれた、ヴァンプドラゴンに騎乗した漆黒の騎士達の巧みな連携攻撃を受けたが、三人は躱しながら反撃を加えていった。
「でかいだけあって、うすのろっすね、あいつ、だいたい最後に巨大化するやつは負ける運命なんですよ」
「そんな情報どこから手にいれたんだ、宙音」
「しかし、この匂いはどうにもなりませんね」と鼻を塞ぎながら水音が言った。
強烈な腐臭が鼻をつく、どうやら、黒い物の正体は、腐った肉のような物が集められて出来ているようであった。
「俺達が死んだら、あの黒い化物に取り込まれそうだな」千景は会話をしながらも、忍術を乱れ撃って、的確にヴァンプドラゴンに騎乗しているものを打ち落としていく。
「またまた御冗談を」
「いや、見ればわかるだろ」
「ふふ、ふふふ、」
「なに笑ってるんだよ、こんな時に、気持ち悪い」
「あ、あー、こんなかわいい女子にそういうこと言っちゃうんですかああ、おやかたあああ」
「もう開眼ゲージ溜まっただろ、宙音……」
「そうなんですけど、しっくりくるのがこなくて……ねっ水音ちゃん」
「いや、私は知らないし、宙音ちゃん、さっさとやりなよ」
宙音は「ひどい」とか「なんなん本当にもう」とかぶつぶつ言いだした。宙音のキャラ設定に突っ込んだ、ヴォイストレースログを供給した絵霧さんも、ちょっと冷たくされるとそんな感じだった。そういうところまで似てくるのか……
「もういい、わかった!」と言って宙音は、自分のおでこに手を当て
「我の第三の目よピカレスク! 開けサードアイズ! ふぉおおおおおおお!」
「宙音ちゃん真面目にやって! そんなこと言わなくても発動するじゃない!」
「特殊上位スキル『第三の目開眼』よおおおおおおお!」
――あいつ、ピカレスクの意味わかってつかってるのか……
特殊上位スキル『第三の目開眼』は爆発的な自己強化と、開眼時だけ発動できる特殊な術を発動できる状態になる、開眼道士だけが持つ特殊上位スキル。効果は絶大だが、発動までの時間の長さ、効果時間、次の使用時間までのクールタイムの長さと諸々の時間制限がある。
そんな開眼状態になった宙音はすぐに「こっからは私のターン! 圧し潰せ! 開眼方技『多重隕石麒麟玉ああああ』」と五連隕石の範囲技、通称『蜜柑玉』をぶっ放した。蜜柑玉は、空から勢いよく、黒い化物に落ちていき広範囲にわたって炸裂した。無属性の貫通ダメージなので、相手がなんであろうとダメージを食らわせられる、例えそれが不死族であろうとも。
巨大な黒い化物は的が大きく、蜜柑玉が当たったところは、焼け焦げ、ただれていく。辺りに立ち込めていた強烈な腐臭に肉が焼け焦げた匂いが混ざる。
「この匂いだけはどうにもならんな」今度は千景がそう言ったが「そうですね」水音は意に介していないように返事をして、宙音を強化する舞を舞い踊っている。
「最高だよお、水音ちゃーん!」宙音は額に開いている第三の目をせわしなくぎょろぎょろさせた。可愛い顔つきの宙音には不釣り合いに見える第三の目。
「そうお?」と水音は『虎月の舞』を踊り、更に宙音を強化する。
宙音の勢いは衰えず、開眼方技『鬼神雷撃輪』を発動して、半径五メートルの丸い輪っか状の車輪型稲妻を、大量に投げつけた。投げつけられた円に入った者は、凄まじい雷撃攻撃を受けていき、カメラがフラッシュをたいているような閃光があちらこちらで瞬く。大きかった黒い化物の巨体は、もう、宙音の攻撃によって二回りも三回りも小さくなった。




