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シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
要塞国家エンデラと不死族
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アタル

「い、いや、これは……」


「まったくう、油断(ゆだん)(すき)も無いんだからあ、ご主人を独り占めとかあ、まあそんなことよりも白狐姉(びゃっこねえ)が城に来るように言ってましたよ」


「なにかあったのか? というかヴォイスチャットで言ってくれればよかったのに」


「なんかあ、嫌な予感がするから直接行って来いって言われたんですけどおおおお、早く、早く」そう言われながら、力いっぱい手を引っ張られ、そのままの勢いで城の方まで走らされたので、事情を聴く暇もなかった。そして男から漢になるタイミングを逃したのかもしれないとなんとなく思った。


「ここ! ここ! ここに白狐姉がいます、ご主人」ここは魔導医務室。すぐに扉が静かに開かれ、そこから白狐が出てきた。


「お呼びたてして申し訳ございません、主様、昨夜ゴルビスの屋敷に潜り込んでいたエンデラ王国の『白夜(びゃくや)断罪者(だんざいしゃ)』の者が街に入りましたのでご報告をと、名前はアタルと名乗っていたものです」


「そうか、丁度いいな、会いにいこうか、魔晶石のことや、パイルエスカルネのことを伝えたいし」


「大丈夫ですか、主様、もう大分時間が遅いですよ、少し休まれた方が」


「この街に立ち寄っただけかもしれないし、起きた時にこの街にいるとは限らないからな」


「では、お供します、アタルはこちらの方に馬車に乗って向かってきておりますね、格好は貴族のような出で立ちで昨夜、着ていたものとは違います」


「そうか、なんだろうな、城に向かってきているというのか」


「そのようですね、大通りを走っております」


「出迎えに行くか、城の作業は終わっているのか?」


「この部屋が最後でした」


「そうか」

 

 城を出た時に、白狐が「大通りを曲がりました、屋敷が建ち並ぶ区画に向かいましたね」と言ってきたので、そちらの方に向かうことにした。


「主様、馬車が止まりました。ゴルビスの屋敷の近くです」


「そこがエンデラの拠点の屋敷か」


「のようです、馬車に乗ってきた者達はそこに、入っていきます」


「トラップとかありそうか?」


「簡単なものですが張られていますね、着き次第、解除(かいじょ)します」


「正面から堂々と行くから、その必要はないかな、流石に正面玄関から来る客に対して、いきなり発動するような罠ではないだろう」


「かしこまりました、主様」

 

エンデラの屋敷に着くと、白狐が前に出て、木の扉についている丸形の金具を掴み、二回ノックした。するとすぐに、初老の執事風の男が出てきた。


「このような夜遅くに、どちら様ですか?」


「アタル様に昨日のメイドが来たと伝えて頂ければ話はわかるはずです」


 それを聞くと初老の男は、すぐに引き下がり、屋敷の中に入っていった。少しするとアタルが顔を出し、千景と白狐を厳しい顔を向けて視線を横切らせ、中に入る様に(うなが)した。「昨夜は、お世話になりました」アタルは険しい顔を崩すことなくそう言い、息のしづらい緊張感が漂ってくる。先程出てきた、初老の男もこちらを見つめている。「魔晶石のことは、エルタに伝えた、貴族の反乱も終わったようなので、すぐにエンデラに魔晶石は運び込まれるはずだ」千景はすぐに用件を言った。それを聞いたアタルは、そうですか、と言って、少し考えこんだ。そして「まだそちらの名前を聞いていないので伺いたい」と聞いてきたので「千景と白狐だ」と答えた。


「千景様、今回の件での我々の動きはどの程度まで知っておられますか?」


「『白夜の断罪者』のビマが国王を暗殺してゴルビスに加担していたということか」千景は単刀直入に答えたが、それについてアタルは、すぐに返事をせず、千景達から一回視線を外した。そして観念(かんねん)して「そうです」と溜息(ためいき)をするように一言吐き出した。


「もう終わったことだ、それについて俺はどうこう言うつもりはない、エルタも今回の件はゴルビスがやったという認識だから、気にするなとは言わないが、魔晶石はきちんと運ばれる、そういう指示もエルタが出している」


「そうですか……我々への制裁は?」


「ないな、ない、それは断言できる、それよりもエンデラ王国が不死族に攻められてるんじゃないのか」


「まだ『アールシャールの眼光』の光はついえていないので、それはないかと、しかし、千景様がそういうのでしたら、すぐに戻らなければ」


「戻った方がいい、さっきパイルエスカルネという不死族のやつがこっちの城に乗り込んできたんだ」


「それはまずいですね、わかりました、魔晶石のことも『白夜の断罪者』のこともこちらが知りたかった事は全てわかったので、こちらでの用は済みました。ここに着いたばかりですが、すぐに本国に帰らせて頂きます」


「それなんだが、俺達も付いて行っていいか?」


「それはどういうことですか?」


「ちょっとこちらの事情で調べたいことがあってね、エンデラ王国には、迷惑をかけないつもりだ、不死族と戦闘になることがあるのなら手も貸す」


「そうですか……こちらも断れるような身分ではないのでお受けします、千景様と白狐様が付いてくるということですか」


「いや、俺と後は白狐ではない、二人の女の子だ」


「ということは合わせて三人ですね、アヴァルシスとエンデラを結ぶ魔導飛空艇の乗れる人数が五人までですので、私とそこの者で丁度五人ですね」


「そうか……わかった、すぐに準備する」


「こちらもすぐに戻る準備をします、お時間はどの程度?」


「十五分もあれば」


「では十五分後に、屋敷の前でいいですか?」


「わかった」


 そう言うと、千景と白狐はすぐに屋敷を出て、城に向かい、水音と宙音を準備させ、エンデラの屋敷の前に舞い戻った。往復で、十分もかからなかったが、アタル達もすでに馬車の中で待っていた。

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