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シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
要塞国家エンデラと不死族
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小太刀『不之字切り』

「わたくしには効いてないのはわからないのですか? えっ――」


 パイルエスカルネの口から、驚きの声が()れる。天音に切られたところから血が(したた)っている。天音は、手に持っていた小太刀(こだち)から、長物の刀に素早く切り替え、更に斬撃を浴びせる。


「不死族のわたしくしが……血を……どういうことだ、何をした!」


 天音(あまね)は、その質問には答えず、首を切り落とした。パイルエスカルネは、菊一(きくいち)が切り落とした時とは、明かに違う、苦悶の表情を浮かべた顔を、地面に落とした。天音は、そのまま勢いを殺すことなく、空中に残った体を細切れにして、その後、床にある顔に向かって落下し、刀を突きたてた。


「天音その小太刀は……」


「これですか? お忘れでしたか、御館様、これは小太刀『不之字切り(ふのじぎり)』です」


――――【小太刀】『不之字切り』思い出した。乙ノ序級(おつのじょきゅう)クエストだったか確か、そこまでランクの高くないクエストの『死なない尼僧(あまそう)を、極楽浄土(ごくらくじょうど)行きの船に乗せろ!』というクエストで使う、クエスト作成アイテムの一つだ。不死の『不』の字だけを切り取る小太刀。クエスト作成アイテムだから、その時にしか使う用途がないし、強くもないガラクタだったのだが……


「この世界に来る前、御館様が、天音のイベントリを倉庫代わりに使っておりましたからね……色々と所有しております」


「そ、そうだった済まない、倉庫もパンパンになちゃって……どうも使わないと思っていてもゲームの中の物は捨てられないんだよ、また使う時があった時に作成し直すの面倒臭いし、しかしよくそんな物があると覚えていたな」


「ええ、御館様が携わった全てのクエストから、作成アイテムの材料まで全てを記憶しております。後は、ありとあらゆる化物への最適な対処行動(たいしょこうどう)も理解しております」


「な、なるほどな、そうか……」お互いレベルはカンストしているから、化物相手には、天音の方が強いんじゃないかと思えてきた。そんなことを考えていると天音が、このドラゴンはいかがいたしますか、と聞いてきたのでそのまま処理を頼んだ。


「俺はエルタの方に向かう」と天音に言残し、走り出した。千景は忍術『天稟千里眼(てんぴんせんりがん)』を発動して辺りをぐるりと確認する。妖しい気配は、ない、空中にも視線を走らせてみるが、他にエジュラのようなヴァンプドラゴンは見当たらなかった。


――後は、他の者が無事であるかどうかだけだが、流石に、あの人数の配下が向かって、やばい状況なら、一回下がらなければいけない


 千里眼の視線は、エルタ達を探す、食事をする部屋、玉座、エルタの自室の順番で覗いていった。


――居た、あの部屋か、襲われていたのはエルタの自室。


 ただもう、そちらの化物の処理も終わっているようであった。部屋の中心に水音の巫女スキル『実存照鏡(じつぞんしょうきょう) 破魔ノ型(はまのかた)』から生み出させる大型の四角い鏡が、高速で回転して、光を照射している。そしてその光を浴びたワーウルフ達は毒気を抜かれ、力なくへたり込んでいる。


 その部屋には菊一や虎徹の姿が見てとれた。千景はその部屋の様子を見た後、走る速度を落とし、城の敷地全体を索敵(さくてき)することに集中した。魔導医務室(まどういむしつ)に白狐の姿が見える。その周りにも異変はない。どうやら、パイルエスカルネは、少人数でここまで来たらしい。他に妖しい気配というものは見つからなかった。


 敷地内(しきちない)にくまなく視線を走らせている最中に天音と白狐(びゃっこ)が、千景の側によってきた。


「大丈夫です、主様(あるじさま)、城にも街にも、その周辺にも、私達に危害を加えてきそうな、存在は見当たりませんでした」白狐が言った。


「そうだな、俺も見回してみたが他に見当たらない、ただ、空間転移を使えるやつがいるかもしれない、一応そういうことも頭の中にいれておいてくれ」


「かしこまりました、主様」


 千景達は、エルタ達がいる部屋に走り出した。到着するとすぐに


「おやかたあ、遅いですよお」と水音が両手を、前に差し出して鏡を操作しながら言った。


「大丈夫そうじゃないか」


「そうなんですけどね、宙音ちゃんが格好ばかりして、仕事しなかったんですよ、叱ってやってください」


「水音ちゃん、そういうことを言うのはイクない、非常にイクない」


「『開眼道士(かいがんどうし)』の第三の目の開き方のポーズが決まらないって……」水音が話を続けていると、宙音が口を押えた。


「ポーズが決まらないってお前……別にそういうのはいらないだろ」


「こっちはかっこいいところを、エルタちゃんとミレアちゃんに見せようと思ってたのに、水音ちゃんが『実存照鏡』出しちゃったから、やることがなくなったっていうね」


「御館様、僕が首ちょんぱしたのに、切った感触なかったやつどうしました?」菊一が、パイルエスカルネの事を聞いてきた。


「天音が、殺したよ」


「そうですか、切った感触なくて、僕の役目じゃないなと思ってこっち来たのは正解でしたね」と悪びれる様子もなく言った。


「作業終わりました、御館様」と水音が言うと、大きな四角い鏡が消えうせた。そして、ワーウルフ達はピクリとも動かなくなった。


――このワーウルフ達は『リヴィングロスト(生を失った者)』元々死んでいたものが操られていたようなものか、この部屋を狙ったのは、エルタの中に居るルルカを狙ってきたと考えるのが妥当なところか、そしてパイルエスカルネは顕現者(けんげんしゃ)の俺を迎えに来た。ヴィネリアの命令によって。

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