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シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
要塞国家エンデラと不死族
33/76

天音ノ優秀性

 ヒリングが部屋を出た後、千景(ちかげ)は、今後(こんご)のエルタとミレアの護衛担当(ごえいたんとう)を決めることにした。当分の間は、千景と天音(あまね)でエルタを護衛して、虎徹(こてつ)はミレアを、夜当番には宙音(そらね)水音(みずね)白狐(びゃっこ)赤狐(しゃっこ)が交代で護衛するということにした。


「ということでいいか、俺と天音は、エルタのサポートもしなければならないからな」


「あっしがミレア様の護衛ですかい」虎徹の(こし)くらいまでの背丈(せたけ)のミレアを、チラリと見る。


「よろしくお願いします虎徹様」


「かしこまりやした! 小さなお姫様!」


「夜、護衛するのはいいのですが、それ以外の時間は何をしていればよろしいのですか? 主様」


「『黒渦(くろうず)の杖』に関する情報収集かな、それ以外にも俺達にとって重要だと思える情報があったのなら報告をしてほしい、今のところはそんなもんか、またなにかやってほしいことがあったらその都度伝えるよ、白狐、俺達の最終目標は『黒渦の杖』の撃破(げきは)だそれだけは覚えておいてほしい」


「かしこまりました、主様」


「ああ……後白狐には、重要な任務があった」


「なんでしょうか、主様」


千景が指さした方向に、赤狐が庭園を爆走して横切っていくのが見えた。


「かしこまりました、主様」そう言って、ゴルビスの部屋の大きな窓を開け放ち、白狐は外へと出て行った。


「御館様、お食事の時間なのではないでしょうか?」天音がそう言うと、少しばかり空腹を覚えた。


「そうだな、いい時間か……エルタとミレアはいつも、どうしてるんだ?」


「いつもは侍女(じじょ)が呼びにくるのですが……昨日と今日はいつもとは違う行動をしているので、私とミレアの事を捕まえられないのかもしれませんね、時間は少し過ぎていますが、食事をするところに向かいましょうか」


「おっしょくじ!」「はーい!」「おっしょくじ!」「はーい!」宙音と水音のテンションが上がっていくのが見て取れる。


「というかそもそも俺達は、この世界ではイレギュラーな存在なんだから、俺達の分の食事が用意されてると思うなよ」


「大丈夫です、御館様、食材さえあればこの天音がすぐに、この程度の人数分の朝食をご用意します」


「天音様の料理は、美味しいですものね、では向かいましょうか」千景達はエルタの後に続いた。

 

 部屋に着いて給仕係(きゅうじがかり)りに聞いてみると案の定、千景達の分は用意されていなかったが、天音がすぐさま調理に取り掛かり、長い机は、天音が作った料理で埋め尽くされることになった。


 食事が終わる頃になると、ヒリングの使いの者がやってきて、反乱を起こしていたノーゼス公は、打ち取られ、鎮圧されたということが、アルザック男爵から早馬が送られてきて報告があったということを伝えに来た。それと、女王陛下は、準備があるのですぐにでもこちらに来てほしいと言うことも加えた。


「じゃあ俺達は行ってくる」と言って、エルタと千景と天音は、席を立ちあがり、ヒリングが指定した部屋に向かった。


 その部屋に着くと、ヒリングの指示で運び込まれたらしい、山積みの資料が、千景達を出迎えた。そこの資料には、アヴァルシス王国の国内事情や、法務(ほうむ)政務(せいむ)財務諸表(ざいむしょひょう)等の資料があり「女王陛下の側にいるのであるならば、これくらいは読み込んで頂かないとお話になりません」と千景と天音に向かってヒリングは言った。


「わかった……それでエンデラ王国への、魔晶石の輸出はどうなった?」


「先程、使い者に報告させた通り、反乱を起こしていたノーゼス公が、打ち取られたので、エンデラ王国への輸送ルートは確保されましたので、今そちらの方に早馬を出して、輸送を再開するように指示を出したところです、私は女王陛下と今後の打ち合わせがあるので」と言って、ヒリングはエルタの方に向き直った。


 千景はとりあえず、一冊、近くにある本を、めくってみた、数字の羅列(られつ)が目に飛び込んできて、げんなりとした。それとは対照的に、天音は、涼しい顔で、一定のテンポを崩さず、資料を驚くべき速度で読み込んでいった。


「天音、それ、わかってるのか?」と千景が聞くと「ええ」と目を合わさず短く返事をした。その様子に、エルタと話していたヒリングも気づき、天音のあまりの読み込みの速さに、初めは(まゆ)(ひそ)め、厳しい表情で見入っていたが、見る見る読破されていく本を読む姿をいつのまにやら、そこにいる、天音以外の三人はその姿を見入っていた。


 そして最後の本を読み終わると「終わりました、御館様」と天音が千景に声をかけたところヒリングは、見計らって「では、私からいくつかの質物をさせて頂きます……」と言って、質問を投げかけるが、それを天音はすぐさまバットで打ち返すように答えた。


 ヒリングの質問に対する答えはどれもホームラン級の答えだったらしく、十個くらい問いかけた後すぐさま打ち返してくる天音に、ヒリングはノックアウトされ「もしかして天音様は、ゴルビス様以上ではないですか……女王陛下が信頼を寄せるのも頷けました」と震える声で言った。


 それに対して天音は平然と「私よりも御館様の方がもっとすごいですよ、ヒリング様」と柔らかな笑顔で微笑みかけた。ヒリングはその笑顔に、心の方までノックアウトされそうな勢いであった。


 その後は、戴冠式(たいかんしき)と、枢密院(すうみついん)会議、最上位国務会議と目まぐるしい速度で、行われたが、ヒリングは、ゴルビスに一人だけ付いていた政務官(せいむかん)ということは飾りではないということを、その円滑(えんかつ)な進行で実証(じっしょう)して見せた。千景達に対して、協力的だったのは、ヒリングに備わっている、感覚というか、備わった才能、本能と言うべきものか、わからながいが、千景達の事を信頼しているというわけではなく、誰の元に居たら安全なのかを瞬時(しゅんじ)()ぎ分けている、そんな印象で、寄らば大樹の陰、長い物には巻かれろを、無意志に体現(たいげん)しているような男であった。


 そして、ヒリングに、それを実行させているのは、天音の存在が大きく占めていて、多くの資料を読み込んだ知識に裏打ちされた的確な助言を、時に耳元でエルタに(ささや)き、エルタに発言をさせ、時に堂々とした態度で自ら発言をしている、姿があったからだ。


 そのおかげで、あらゆるところで、女王陛下にはすごい女騎士が側に付いているということが、囁かれるようになり千景は少しだけ複雑な気分になった。


「本日の予定はこれで最後です」とエルタに謁見(えっけん)していた貴族が出て行ったあとに、ヒリングが言うと、一同の顔には流石(さすが)に疲れの色が、色濃く出ていた。


「流石に毎日これだとしんどいな」


「きょ、今日は王位が変わったからということで特別ですよ、特別、そうですよねヒリング」


「そうですね、式は今日だけで、会議は定期的に開かれますが、それが重なるのは今日だけですね」


「よかったです……」そう言って、エルタは玉座のひじ掛けに(もた)れ掛かった。


「天音もすごかったな、大量に食事を取るのも(うなず)ける」


「い、意地悪を、言わないで下さい、御館様……」


「食事ということなら、準備できておりますが」とヒリングが言うと、天音は、目を輝かせた。


「俺は、みんなの様子を見てくるから、先に行っててくれと」千景は、そう言い残し、玉座の間から出て行った。

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