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シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
要塞国家エンデラと不死族
30/76

異世界ノ夜が過ぎゆく

「あの二人から聞いた話を信じるならば、エンデラの手の者が、エルタとミレアに危害(きがい)を加えることはなさそうだな、後は……このアヴァルシス国内にどれくらい反乱分子(はんらんぶんし)がいるかだな」


「そうですね、主様(あるじさま)


「……一つ思ったんだがゴルビスがいなくなったというのなら、この屋敷(やしき)貰ってしまおうか、活動拠点(かつどうきょてん)ほしかったし、でも流石(さすが)にそれは、都合がよすぎるか……いやでも、どこかしらアジトはほしいし……」


「言うことを聞かなければ、ゴルビスにそうしたように、操ってしまえばよろしいのでは? 主様なら簡単なことでしょう」


「元の世界に戻る方法もわかってないのに、そんなことしたらエルタの中に居る、ルルカが激怒(げきど)しそうだが……戻る手がかりを知っているのは、現状(げんじょう)ルルカだけなんだし、ある程度従うしかないさ」


「そうですか、まあ私はこうやって生身(なまみ)の手を主様と(つな)げるようになった世界も悪くはないと思っておりますが」そう言いながら、白狐(びゃっこ)が千景の手に指を(から)ませてきた。


「そ、そうだな……」千景の顔を、妖艶(ようえん)な顔で見つめる白狐だったが、すぐに眉を顰めた。


虎徹(こてつ)はいつから(のぞ)きの趣味が出来たのですか?」


「忍者っていうのはそういうもんだろ、しかも俺のせいかそれ、出てきづらい雰囲気(ふんいき)(かも)し出しだしてた、お前と御館(おやかた)のせいだろ」


「私の非を責めるのはいいですが、主様にまで非があると?」


「そういう言葉尻(ことばじり)(とら)らえるのやめろよ……わかったよ、わかった、そういう人を殺しそうな目で俺を見るな白狐、俺が悪かったよ……なんで御館の指示をこなして、報告しに来たのに、謝るはめになってるんだ俺は」


「それでどうだった虎徹? 『トライセラトリス』のアジトは(つぶ)せたか?」


「かんたんでしたよー、建物壊せばよかったんでしょ? そこで無理やり働かされているっぽい女と男と『トライセラトリス』のやつらとを仕分けながら、殴り飛ばすのは、面倒臭かったですがね」


「働いている?」


「アジトっていっても、遊郭(ゆうかく)みたいなもんでしたよ、遊郭、ただ遊郭っていう品のいいもんじゃなく、きったねえ部屋に押し込まれた夜鷹(よだか)の集まりみたいな感じでしたけどね、なんだ白狐から聞いてなかったんですかい?」


「聞いてなかったな」そう言って、千景は白狐の方を見た。


「場所だけ吐いて、事切(ことぎ)れましたので、申し訳ございません、主様、こちらの世界の者が、あまりにも、(もろ)いものですから、力の加減がわかりませんでした、でも今回はその失敗を()まえて、上手くやれましたようでしょう? 私もこの世界に対応してきております、主様」


「そ、そうだな、でその残った人達はどうなった?」


「そう、それなんですけどね、なんだか、その騒ぎを聞きつけた、教会の聖魂騎士(せいこんきし)と名乗る男が、教会で保護するっていったんですよ、本来なら我々の仕事だったとか、そいつに任せちゃいましたがよかったですかねえ、アジト潰せばいいって言われてたし、無茶をするなって言ってませんでしたっけ、御館は」


「そうか……それでよかったよ、任せて正解だ、俺達には現状手を差し伸べることは出来ないからな、聖魂騎士か……強さはどうだった?」


「俺が見た中では結構いかつい感じでしたよ、まっ俺の相手にはなりませんけどねありゃ」


「名前は聞いてないのか?」


「すいやせん、そこまで聞いてませんでした」


「これだから筋肉自慢の無能が、殴るだけしか能がないのですか、主様に迷惑がかかりますよ」


「なんだとお、お前、調子乗ってると……」


「調子乗ってると? なんですか? なんなんですか?」


「い、いやなんでもないです……」


「あんまり虎徹をいじめるな白狐」


「御館、そんな言い方すると俺がもっとみじめになる」


「そうだな……虎徹は一回城に戻ってからここに来たのか?」


「そうですがなにか?」


「城の様子を聞きたかったんだが」


「様子ですかい、ミレア姫囲んで三人が踊ってましたぜ」


「そうか……無事ならそれでいいんだ……俺達も城に戻るか、もうここでやることもないしな」


「そうですなあ、いやあ、あんなんじゃあ殴り足りないっすなあ」


 エルタにエンデラへの魔晶石を供給する話を通しておこう、教会の聖魂騎士というのも気になるな、その辺りの探りをいれていくか。


 城に着くと、天音の大量の料理が出迎えてくれた。


「お待ちしておりました、御館様」


 みんな思い思いに、天音が作った料理を口に運んでいた。千景と虎徹と白狐もその輪の中に加わる。


「エルタ、エンデラのやつが来て、魔晶石の供給を早めてくれって言われたんだが」その言葉を投げかけれたエルタは口に手を当て、必死に噛む速度を上げた。「ごめん、ゆっくり食べていいよ」飲み込んだ後一息つくように飲み物を口に含み「だ、大丈夫です」と言い「ま、魔晶石のことですか」と続けた。


「そうだ、ゴルビスに輸出を止められていたらしく、大分迷惑してるらしい」


「そうですね……でもその輸送ルートは、今反乱を起こしているノーゼス公の領地なんですよ、アルザック男爵次第というところでしょうか、ゴルビスも居なくなった今、ノーゼス公に後押しをする人もいなくなったので、収まるのではないのでしょうか」


「そうか、後鉱山への採掘も再開して貰わないと、と言っていたから、両方に人を派遣(はけん)したほうがいいな、エンデラは不死族(ふしぞく)がどうのと言っていたが」


「エンデラは昔から黒い大地から来る、影に生きる者達を、陽光(ようこう)の丘に巨大な魔晶石を加工した物を置き、夜を明るく照らして、侵入(しんにゅう)を防いでいるんですよ、魔晶石がエンデラに届いていないということは、その境界線を照らせなくなるのかもしれません、ど、どうしましょうか」


「どうしましょうと言われても、俺はこの国の内情もエンデラの内情も詳しくは、知らないからないからなんとも言えない」


「そうですね、そこは私が出来うる限りしっかりしないといけませんね、後でノルヴァイン侯爵に話を通してきます。彼なら、うまく貴族たちを(まと)めてくれるはずです」


「エンデラへの輸出ルート確保(かくほ)のために俺達もノーゼス公の所に行ったほうがいいかもな、話を聞いてると切羽詰(せっぱつ)まっていたし」


「なにか話がややこしいことになっていますね」


「種を()いたのはゴルビスだし、実権を握っていた宰相(さいしょう)が、いなくなったのなら、ややこしくなるのは当然だ」


「そ、そうですね……」


「そうだ後『トライセラトリス』のアジトを潰したときに、聖魂騎士というのにあったらしいんだが知っているか?」


「ええ、婚姻(こんいん)の儀と戴冠(たいかん)の儀のために枢機卿(すうききょう)が来てますのでそれの護衛に来ていらっしゃいますね」


「そうか、ありがとう、特に今は問題にならなそうだなそれじゃあ」


「千景様が色々と働いてくれるおかげで助かります、感謝の言葉もありません……これからも私のことを支えて下さい、お願いします」エルタはそう言いながら、(うる)んだ瞳で、千景の目を見つめてきた。


「も、元の世界に戻るまでだからな」


「この際、この世界に留まって、エルタと結婚すればようかろう、わらわは大賛成じゃぞ」

エルタの半身からルルカが出てきて突拍子(とっぴょうし)もないことを言ってきた。


「だ、だめです、そんなことは、だめですよねえ、御館様?」天音が横からそれを遮った。


「主様は、私の主様ですよ」


「ルルカお前が、変なことを言いだすからこんなことになるんだぞ!」


責任転嫁(せきにんてんか)かえー、じゃあわらわは水を差すのはすかんので、戻ることにする」


「おい、待て」


 異世界の初めての夜は賑やかに、過ぎ去っていった。

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