説ノ章
極和風体験型VRMMO 『倭国神奏戦華』
このゲームは、日本政府が後押しをして多数の企業がパートナーシップを組み、リリースされた体験型VRMMOである。なぜ政府が積極的に関与したのかというと、東京に作られたカジノが当初の想定した業績を大幅に下回り、向上する気配さえ見せてはいなかった。そのためカジノ街の目玉とテコ入れとして、『倭国神奏戦華』の上位ランカーのバトルを、東京のカジノ街にある『二ナクレイ・東京ベイ』にて隔離プレイルームに用意されたコクピット型VRシステムと独立サーバーを設置して、全世界に賭け試合を放映しようとしていた。それは一試合で莫大な収益を望めるラスベガスのボクシングに相当する何かを東京のカジノでもほしがったためである。
そういった経緯もあり、開発にはかなりの金と技術が注ぎ込まれることとなった。そのためゲームとしての完成度は未だかつてない程の高水準となっており『倭国神奏戦華』の世界は、日本の原風景と地獄や妖かしの雰囲気を取り入れた和風ファンタジーの世界が融合された架空の日本である『ウキヨヒノモト』が舞台であり、仮想世界に於いて、日本の地形が十分の一のサイズに縮小されてはいたが、人里離れた部分などをカットしつつ忠実に再現され、そのマップにはプレイヤーキャラが現実と同じサイズで用意され自由に歩くことが出来た。
職業も『侍』『忍者』『巫女』『陰陽師』『修験者』『僧兵』『義賊』などの基本職から、他ゲームではお馴染みの職業に、日本風な名称が当てられて存在していた。例えば、イリュージョニストに相当するのは『幻想言霊士』、ネクロマンサーは『死霊士』とそれらしく見えるように。
緻密に描かれた日本の地形の仮想世界であったので、やろうと思えば、史実の合戦を再現することが出来るまでになっており、ゲーム中の職業と技能を縛って、武田上杉川中島対決イベントや、姉川の戦いイベント、決戦関ヶ原等が運営や、有志による突発的イベントとして催されたりもしていた。
ゲームが開始された初期の頃は、開発された経緯により、対人戦に重きを置かれ、城塞戦や合戦等が盛んにおこなわれる硬派な内容のゲームであったが、その殺伐とした内容のためライトユーザーから敬遠され、ユーザー数が伸び悩んだこともあり、新規ユーザーの裾野を広げるため『倭国神奏戦華』は旧来の古風な日本のイメージに基づく世界観や、硬派で殺伐とした対人世界からの脱却を狙い、農業等の生産系スキルや、芸能や料理系スキル等、仮想生活を充実させるスキルや雑貨、家具の実装、水着スキンや、メイド服スキン、各種アニメとのコラボレーション等が次々と実装され、更に、上位職になると持てるようになる、配下や、眷属、召喚物をプレイヤーの趣味趣向に合わせることが出来る、専用クリエイトツール『KAIBYAKU』が実装され、所持NPCの基本行動や設定、言動、見た目を自由に改変できるようになり、そのおかげで、多くのユーザーを獲得することに成功し、今では極和風型というよりも、数多のアニメや漫画の産地としてのネオジャポニズム型といえる『倭国神奏戦華』独自の世界観が構築されつつあった。
そんな『倭国神奏戦華』内において、千景が異世界に飛ばされる元凶となったノブナガは、一か月前に、太平洋上に新たにウキヨヒノモトと同じ規模の島が出現するという大型アップデートが行われた時に追加された最新のボスであり、もちろんそれはゲーム内における過去最高難易度に設定されていた。
その詳細なアップデート内容は、異界ネノクニ列島Ver.1,3
邪神の加護を受け第六天魔王となったノブナガが黄泉の国から、悪霊となった戦国武将と悪鬼羅刹を伴い、異界ネノクニ統一を果たし、次なる侵略の地としてウキヨヒノモトに侵攻することを目論み、第六天魔王ノブナガは、その悪鬼神となった神代の力をもって太平洋上に異界ネノクニごと降臨、ウキヨヒノモトに進軍を開始するというものであり、ネノクニマップとウキヨヒノモトマップの間には五本の大きな橋が架けられ、相互に行き来出来るようになった。
第六天魔王ノブナガを今回初めてゲーム内で攻略した千景が所属するギルド『空前絶後』は、大規模戦でも常に第一線で活躍している東側最強のギルドであった。ギルドマスターは罠罠であり千景はこのギルドにベータテスト版から参加をしている。その同盟として『白い放物線』ギルドマスターは愛炉裏愛があった。
それに反抗する勢力として、西側最大ギルドで『空前絶後』に至る所で対人戦を仕掛け、視界に入ってきた東側のギルドのやつは全てキルと滅殺系ギルドが、九州を本拠地にする『Q衆』であり、ギルドマスターは修羅川羅刹、千景と同じ職業は忍者を基本ベースにしていて常に千景のことをつけ狙っている粘着体質であった。ただそのプレイヤースキルは高く、カジノ試合では決勝まで進む実力者であるが、千景に敗北を喫した。さらに西側は東側よりも纏まりがなく、多くの中規模勢力が乱立していた。
『舞姫と俗物の群れ』『呪撃』『日刀八十万』『儀典六法全書』などが有名どころのギルドとして存在している。
後は、後発に参加した外国人勢力は新規追加された島に拠点を構えるギルドが多く、その中でも外国人ギルド最大手の『カンナビス』ギルドマスターはガンジャチューンが一番有名であった。
ネノクニ実装当日は、その数時間前からプレイヤーの発言が文字化されて全員が閲覧することが出来る『煩悩百語り』という全体チャットツール欄は荒れに荒れていた。
初期からいる『倭国神奏戦華』のプレイヤーは、対人が目当てであり、常に煽り煽られを繰り返し、その日も、鼻息を荒くし、お前画面の前で真っ赤になってるだろを地で行くような会話が『煩悩百語り』の中で繰り広げられていた。
罠罠:今回も我がギルドが最速で攻略させていただきますね^^
修羅川羅刹:うち攻略興味ないんでいつも通りキルに徹しますんで千景わかってるよな
あんこちゃん:Qの字みたら逃げていいよ^^^^^^^^^^^^^^
舞姫:妾の下僕共が先に攻略しますえ
絵霧:Qと舞姫まじうざ
愛炉裏愛:えむちゃんちゅっちゅ
日刊助平:^^^^^^^^^^^^^v
楽々螺良:今回は俺らもガチで行くんでよろしくーカジノ試合の時と一緒だと思うなよくそ千景
印度人さぷらいず:aaaaaaaaaaaaaaaa
ガンジャチューン:
こんなやりとりと対人戦とネノクニ攻略を同時に行い、千景が所属しているギルド『空前絶後』は実装から一か月でノブナガを攻略した。