表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
アヴァルシス王国騒乱
25/76

騒乱終劇ノ章

 人混みを掻き分け、ゴルビスを放り投げたところに虎徹が近寄っていく、蟻のようにゴルビスに群がる民衆と怒号、熱気が辺りを包んでいた。


 そして虎徹は、ゴルビスが直接視認出来るところまで辿り着くとすぐに、千景にサインを出した。すでに死んでいると。


「天音、俺達も兵士に変装して、エルタとミレアの護衛にあたるぞ、すぐにだ」


「かしこまりました、御館様」

 

 未だに、エルタとミレアに対する、喝采(かっさい)が鳴り止まない。

それに答えるように二人はにこやかに手を振っている。


 千景は貴賓席をチラリと見ると、エンデラの国王も側にいた暗殺者も、いつの間にやらどこかに行ってしまっていた。


――まあいい、今はエルタとミレアを守り切れれば、ひとまずここはそれでいい。


 虎徹もゴルビスのところからエルタ達の所に行き、さりげなく、ミレアとエルタの横についた。


――これでひとまず安心だ、虎徹は、護衛対象のダメージを引き受ける身代わり能力を持っている。今エルタとミレアに攻撃したとしてもダメージを受けるのは、虎徹だ。


 千景はこの状態になったらむしろ、エルタとミレアを攻撃してほしいとさえ思った。そのほうが、反逆する意図があるものを事前に見つけることが出来る、そう考えたからだ。


 忍術『変装七法(へんそうしっぽう)』を使い、そこら辺の兵士とかわらない姿になった。


 千景達はエルタとミレアを中心にして囲むように護衛する。千景はエルタの耳に口を寄せ「もう十分だろう」と声を掛ける。


「そうですね、城に戻りましょう」とエルタは相槌をうった。エルタは民衆に手を振り続けながら、少しずつ歩みを進めた。


「よくやったなエルタ、大分うまくいった」


「ありがとうございます、これも千景様と天音様のおかげです。特に天音様には感謝しております、彼女に触れられると勇気が湧いてきて、自分でも思ってもみない程の声を出すことが出来ました」


「そうか、それはよかった」それは天音がかけた術のおかげだと言う言葉を飲みこんだ。わざわざ水を差すこともない。


「ただこれからのことは少し不安です」


「弱い王でも、それを民が支えようとする国は強いさ」


「そういうものでしょうか」


「そういうものさ、あとは俺達が今後、自然にエルタとミレアの護衛に付けるようにしておきたいものだな、身元を勘繰(かんぐ)られるとやばいから、なにか身分を証明するものがあるのなら後でそれを見せてほしい、偽造(ぎぞう)できるし」


「わ、わかりました、そうですね……では、千景様たちは、四大貴族の誰かの元から来たことにしましょうか、傭兵の中にいた異国の者を私が借り受けたとそうしましょうか」


「とりあえずは今のところはそれでいい、さっさと身分をきっちりして動きやすくしたいところだが、ちょっと疲れて頭が働かないんだ」


「私も大分疲れました」


「俺なんてずっと寝てないんだよ、もう三十時間は起きてる。こっちの世界に来た時が、もう寝る時間だったからそこからここまで色々働かされて」


「お察しします、御館様」


「天音さんは、御館に甘いな、2,3日寝なくても俺は平気だ」虎徹は言った。


「虎徹は状態異常に強いからだ、限界が来たらパタッと寝るよそのうち、あまり自分の力を過信するなよ虎徹、あと御館様への冒涜(ぼうとく)はこの天音が許さないからな」


「まあなんだ、天音さんはきついな」


「二人共、警戒は怠るなよ、ゴルビスが居なくなってそのままエルタに実権を握られるのを良しとしないやつらは大勢いるだろうさ、他にも甘い汁を吸ってたやつはいるはずだ」


「相手になるやつは見当たりませんでしたけどね」


「ここにいないだけかもしれない、俺達が知っているのはあくまで、一つの国の一つの都市の事情だけだからな」


「ここなんていうんですか御館? 俺は呼び出されてから、すぐに飯食わされて、ゴルビスのやつをぶん投げただけで、まだ何にも知らないし、いつもと勝手が違うんですよね……表示されないっていうか」


「ここはアヴァルシス王国の……あれっ俺も国名は知っているが、ここがどこか知らない」


「ここはアヴァルシス王国の王都アルスミラですよ」千景と虎徹の間に挟まっていたミレアが補完してくれた。


「ありがとうミレア、とりあえず、落ち着けるところはどこだろうか、玉座の間も、ゴルビスの執務室も大きすぎるし……」


「そうですね、一回では私の自室に行きましょうか、私を逃がしてくれた信用できる侍女もいますし」


 そう言ったエルタの後をついていくことにした。

 

 通り過ぎる兵士達が、エルタとミレアに笑顔で敬礼をする。不審な人物は今のところ見当たらない。


 天井が高い廊下を抜け、二階の奥へと向かい「ここです」と言うエルタの言葉を聞いた千景は天音に扉を開けさせ部屋の中へ先行させた。


 部屋の中の確認を一通り終わると、天音がこちらに向かって「どうぞ入って来て下さい」と言ったので確認作業を待っていた四人はエルタの部屋に入った。


 天音が大きな窓を順番に開けていくと、白いレースのカーテンが優し気に舞い、暖かい風が部屋の中に入り込んできた。


 部屋の中は女の子の部屋というよりも淑女の部屋といった感じで落ち着いた雰囲気のインテリアの中に、多くの花が生けられ、カーテンがはためくベランダの近くにはゆったりと座れる椅子とテーブルが置かれていて、部屋は広く手入れが行き届いていた。

 

 千景は、みんなに小麦倉庫の時と同様に「こっちを向いてくれ」と言った。今度はすぐに、エルタの半身が黄色の目と水色の髪のルルカのそれになった。


「ここからが問題だ、ここまでは力技でどうにかなったが、ある程度想定内に収まっている。ただそれはこの街だけで済む問題であったこと、こちらから襲撃をかけることが出来たからだ、相手にこちらの動きがバレず、こちらは敵を把握出来ていたから、うまくいって当然だったと言ってもいいが、ここからはエルタとミレアは姿を晒していかなければいけない、エルタに至っては女王だ、危険度は大分増す、ずっと見張ってるわけないしどうするか……ゴルビス派の貴族は、誰か見当はつくか?」


「先程もいいましたがエンデラ領近くで反乱を起こしたノーゼス公は確定でしょうね、後は四大貴族がこのことをどう思っているのか、それが気掛かりです」


「ゴルビスの家もその一つだったんだろ? 搭の守護騎士を輩出する家系とか」


「そうです、ゴルビスのアンブローム家もそうですけど残りの三家もそれぞれ塔が立っている都市を領地にしているので、王家とそこまで力の差がないのです、アンブローム家の現在の守護騎士は娘のエリシアが勤め薔薇の塔を守護しております」


「それじゃあ今回の件でそいつは敵になりそうだな、エリシアか」


「それはわかりません、あまり親子仲がよくないという話を聞ておりますので、実際のところ」


「そうか、ただアンブローム家はゴルビスのせいで他の貴族から大分,

風あたりが強くなりそうだしな、早めに会っておくほうがいいかもしれない、他はどうなんだ?」


「そうですね、一応を国王に忠誠を誓ってはおりますが、今回のことでどうなるのかまったくわかりません……ヴィスタリア家のルクとは幼少の頃遊んでいただいたので仲はよかったのですがなに……」


「よかったのですが? なにかひっかかるな」


「塔の守護騎士になって以来あってないものですから、他の者も直接顔を合わせる機会もないですし、正直なところまったくわかりません、国境線を守っている搭の者達が王都に顔を出すのは稀でしたし」


「そうか、それはしょうがない、落ち着いたらこちらから見に行くとするか、この国に隣接しているのはエンデラと帝国だったか」


「そうですね、後はコルト聖教国が西にありますが、それが、侵攻してくるとは思えません、北は山脈を越えて、ワーウルフの国がありますが、そこはちょっと距離が遠いですね」


「じゃあ当面は、エンデラと帝国とこの国の内部だけか問題になりそうな火種があるのは、結構大仕事だなこれは……ヴォルカニカいけるようになるのはいつになることやら」


「ヴォルカニカにもそう簡単にはいけぬぞ、こちらの世界とあちらの世界に行くための扉を越えなければいけないからの、扉を開けるためには歯車と、この世界の魔力の源となった聖杯が必要なのじゃ」


「ちょっと待て……どういうことだそれ、なにか特殊なアイテムを探し出してからとかどこのゲームだよ……」


「そんな簡単にいけるところに、世界を滅ぼすようなものを封印するわけがなかろう? お前はあほうか」


「ルルカ様、あまり御館様を愚弄しないで頂きたい」


「すまぬすまぬ、言い方が悪かった、天音に免じて訂正する」


「じゃあなにか、そのどこにあるかわからない歯車と聖杯を見つけ出してからじゃないと、ラスボスに会える権利がないってことか」


「そういうことじゃな」


「なにか、手掛かりみたいなのはないのか? どこら辺にあるのかくらいわかるだろ」


「わからんのお、こちらの世界に出てこれたのは、あの『黒渦の杖』のレプリカの邪気を食ったからであってこちらの世界のことは我にはまったくわからん」


「エルタとミレアはどうだ?」


 二人は黙って首を横に振った。千景はそれを見て、大きな溜息をついた。そのおかげで、押し殺していた眠気まで頭の奥から押し寄せてきて、千景の(まぶた)を重くさせた。


「どこにあるのかもわからないか……片っ端から情報を集めていくしかないか、それだけ効果の高い物ならどっかに情報は転がっているだろ」


「前向きじゃのお、千景のそういうところは認めてやらんでもないぞ」


「わかった、わかった、俺はもう眠い、ちょっと寝かせてほしい、天音と虎徹でミレアとエルタを護衛してくれ」


「かしこまりました、御館様、しかしここで眠るのですか?」


「少しだけ仮眠するだけだ、エルタ、本当すまない、ちょっとだけベッドを貸してくれ」


「わ、わかりました、こちらの部屋です」と言って、天蓋(てんがい)の付いたベッドがある部屋に通された。千景は、大分疲れていたらしくフカフカのベッドに沈み込むように倒れるとそのまま眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ