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シノビーツ・ナイトコア  作者: 駿河ドルチェ
アヴァルシス王国騒乱
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尋ノ章

 ビマの姿に変装(へんそう)した千景と窓越しに目が合ったとき、ゴルビスは、爪を噛むのをやめ満面の笑みを浮かべた。


 その様子を見つつ千景は、ビマから受け取った銀の飾りナイフを上に向ける、ゴルビスはもうそんなことまで気にすることはない様子で、急いで窓を開け「お待ちしておりましたぞ! ビマ殿! さあ! さあ! 中へ、早くこちらに!」ビマの姿をした千景を疑いもせず部屋の中に迎え入れた。


「流石にビマ殿は仕事が早いですな、で、どうでした? エルタはいましたか?」


「ええ、一番奥にいましたよ、簡単な作業でした、そちらの国の兵士の方が数名亡くなっていましたが、なにも問題はなかったです、これがエルタの死体を確認してきた証拠です、こちらをどうぞ」


 そう言って千景は、エルタから無断で拝借(はいしゃく)してきた、宝石が散りばめられたティアラをゴルビスに渡した。


「これはまさしく、流石ですな、エンデラの国の方々はみな優秀な方ばかりだ、つまらないことを聞くようですけど、あの建物の一番奥には他になにかいませんでしたか?」


「何かというと、あれでしょうか、人間ではない怪物に、襲われましたが、ついでに処分しておきました、そのことでしょうか? それについてなにか問題がありましたか?」


「いえ、いえ、そうですか、倒して頂けたのならなにも問題はありません、これでミレアとの婚姻の儀とその後の王位継承の戴冠式(たいかんしき)もなんの(うれ)いもなく行えそうです」


 ゴルビスが千景から目を離し、自分の手の中にある、ティアラを()でている隙に、千景は『傀儡操針(くぐつそうしん)』の針をゴルビスの首に差し込んで、ビマの時と同様に一方的に行われる尋問(じんもん)を始めた。


「俺の質問に真実で答えろ」


「わかった」


「『トライセラトリス』にはシンツー以外にどのような者がいて、お前に協力している?」


「シンツー以外には、三角(さんづの)の残り二人のハクルとシャザに協力をして貰っている、彼らが、街の荒くれ者を、纏め上げてくれるのでとても助かっている」


「二階の奥に結界が張ってあったが、あれはなんのために張ってある? そして誰が張った?」


「あれは、各国から来ている要人達を守るために、守護魔法を展開させることに長けている者が多い教会の者に頼んで行わせたものだ、我が国は今、帝国の侵略に備えてそちらに兵力を送っているので人手が足りないのでね」


「その口ぶりだと結構魔法を使えるのは普通のことなんだな」


「そうですな」


「他に魔法に長けている者がどれほどいる?」


「この国ですと四搭の守護騎士達、それに魔導士を育成する魔導学院関係者、そこを管轄する私兵団に所属する者たちですな、エンデラには魔導暗殺部隊『紅月(あかつき)執行者(しっこうしゃ)』がいますな」


「お前はエンデラの国の者に国王を殺してもらう代わりに、なんの代償を支払った」


「エンデラ領の近くにある港町とアサル鉱山の一部割譲(かつじょう)です」


「それでは、この国は、エンデラに大きな借りを作って、お前の政治がやりづらくなるのではないか?」


「そんなことはありません、あちらはまだ旧式の部隊が多い、暗殺者にしてもそうだ、こそこそやる仕事には長けているが、集団戦での戦力では魔法力で上回るこちらが上、エンデラは不死者の集団の度重なる襲撃により国力を大分落としていますからな、要塞国家エンデラなんて言われていたのも昔の話です。それに、ワーウルフ共にも、根回しは済んでいて、準備が整い次第、エンデラに挟撃をかけて、割譲した部分は取り戻すつもりですよ、なにも問題はない」


「最後だ、お前が拷問にかけた少女達に謝罪の言葉はあるか?」


「ないですな、私は支配する側の人間だ、支配される側の人間に対して謝罪など」


「そうか……ではミレアを目立たない服装にしてここへ連れてきてくれ、あと兵士の服装、一式持ってこい」そう言いつつ、千景はゴルビスの手の中にあったエルタのティアラをひょいっと(かす)め取った。


「わかりました」そのままゴルビスは、ゆったりとした足取りで部屋から出て行った。


 ゴルビスが部屋を出て行ったあと、千景が窓の外を見ると、白い雲がゆっくりと流れて行くのが見えた。空の色というのは、どの世界でも似たようなものだなと千景は思った。


――色々と聞きなれない言葉が出てきた。これが終わったら色々と調べる必要があるか、どの程度まで魔法が進歩しているのか確かめるために、時間があるようならば、思い切って配下NPCの誰かを、魔導学院に入学させてみようか、そのほうが、こそこそと嗅ぎまわるよりは、怪しまれないだろう。


 一人で考え事をしていると、少しだけ眠気が襲ってきた。千景は徹夜で作業していることを思い出した。


――もう少しだ、きっちり締めの作業をする、俺と配下NPC達の安全が確保されるまでは寝ることは許されない。


 千景は待ち時間が少し苦手だった。ミレアの着替えに手間取っているのか、中々、部屋の扉が開くことはなかったが、そこから十分程経った後、扉が開け放たれた。


 目線の先にゴルビスとその横に、先程見た兵士と侍女達に囲まれていてエルタを一回り小さくしたような少女が、怯えた顔つきでおずおずと歩いてきた。


――目立たない服装と言っても、貴族の思考からすればこんなものか。ぱっとみてわかる材質のよさ。


 ゴルビスはミレアを引き連れて、千景の側まで来て用意してきた、兵士の服装を渡した。


「ゴルビス、これが最後だ、一時間後までに、城と街から人をかき集めるように指示しろ、可能な限り多くの人をだ、一世一代の大演説をすると各国の要人達にも伝えろ、そして人が集まったのなら演説台に向かいお前は、自分が王にやったことと『トライセラトリス』と協力してやった悪趣味の事を、集まった全ての人に、聞かせなくてはいけない、大声で誠実に自分の気持ちを話せ、そうしたら自由にしていい」


 そう言って千景は、もう一本、針を首に刺して術の効果を延長した後、ゴルビスの背中を押した。


 ゴルビスは(うなが)されるままに、黄金の細工が施された白い扉を開け部屋を出て行った。

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