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83.強者同士は何を語る

1


「準々決勝勝者は、プロト・ネロぉぉぉ!!!!」


 この試合、見ていた結果を言葉に表すならば、ただただ「圧巻」としか表現できなかった。

 一秒と経たずに入れ替わる戦況、次々と繰り出される攻撃の数々。

 正直、観戦していた人たちの中ですべての状況を把握できた人物はいないのではないかと思うほどだ。


「凄い……!」


 隣ではケーナちゃんがキラキラとした瞳でプロト・ネロの後姿を見ている。

 ……確かに、この試合、見入ってしまうのもうなずける。


「まさか、魔法使いなのに格闘までできるとは」

「確かに、あそこまでのレベルとは驚きました。……ですが、魔導士だからと言って格闘ができないというわけではないですよ?」

「そうなのか?」


 てっきり俺はドラクエとか、FFみたいな魔法使いを想像してたから、格闘できる魔導士がいるのは意外に感じた。


「はい。本来魔導士というのは魔法と格闘の技術を磨いたもののことで、魔法使いとは別の存在なんですよ」

「それじゃあ、魔法使いっていうのは格闘戦が苦手な人のことを言うのか?」

「全員が近接戦闘できないわけではないですが、概ねその解釈で間違っていません」


 会場では次の選手の紹介が行われているようだが、アインツとヴィオラの試合以上に白熱する予想ができない。


「Cブロック代表はプロト・ネロの同郷にしてライバル関係! ビクトーリア・ロビンソンッ!!」


 会場に歓声が沸くが、その声は先ほどに比べると小さい。


「対するDブロック代表は、ならず者出身からサフラン・サフィランの宮廷騎士にまで上り詰めた実力派の戦士! クローク・クルーガーぁッ!」


 紹介が終わり二人の戦士が会場に入るが、熱気はやはり先ほどに比べるとイマイチだ。

 ほどなくして戦闘が始まる。

 その腕は確かに素晴らしかった。

 が、しかしやはり先ほどの試合に比べると見劣りしてしまうのも事実だった。


◇◆◇


 救護室に入ると、ちょうど起き上がったアインツと目が合った。


「どうした、プロト・ネロ」

「おや、男呼びからは卒業ですか?」

「私をここまで痛めつけた男は初めてだ。そんな人物の名前を呼ばないのは、失礼に値するだろう?」

「なるほど」


 全身に包帯を巻いた姿でこちらに微笑みかけるアインツ。


「それにしても、かなり痛めつけてしまったようです。申し訳ありません」


 傷の様子を見て頭を下げると、アインツは顔をしかめて口を開いた。


「おいおい、やめてくれ。私に勝った癖に、そう謝罪されると私が惨めになるだろう」

「それも、そうですか。では、ここはいい勝負でした、と」


 私がアインツに向けて右手を差し出すと、アインツも包帯が分厚くまかれた右手を差し出す。


「幸いにも医者は後遺症は残らないと言っていた。貴様が心配しているようなことは起こらないということだな」


 アインツは私の心を読んだように言葉を紡ぐ。


「おや。大事には至ってないと。それはよかった」

「責任を取る必要がないからか?」


 アインツは嫌味のように笑う。


「これは痛いところを。確かに、それもありますね」


 アインツの状況も確認したところで、私はここにやってきた本題に入る。


「アインツ殿。本題に入らせていただきたいのですが、あなたは一体優勝した時に何を望む予定だったのですか?」

「ふっ、それを聞いてどうする? 私の代わりに頼んでくれるとでもいうのか?」

「いえいえ。どんなものを望んでいたのかなと、ただそれだけですよ。他意はありません」


 アインツは少しだけ悩むそぶりを見せ、一度うなずいた。


「申し訳ないがいくら私に勝ったネロとはいえ、これは私が自分で解決するべき問題であり、他言することはできない。理解してはくれないだろうか」

「……どうして、と伺いたいところですが、なるほど。でしたら今は詮索するのはやめておきましょう」

「話はそれだけか?」

「ええ。療養中に押しかけてしまい申し訳ありません。次会うときはぜひ共闘してみたいです」

「……ああ、そうだな」


 私はアインツのセリフを聞くと、そのまま踵を返す。


「ああ、それとあと一つ」

「なんだ」

「あなたの魔術は相当なものだと思いましてね。ぜひ我々の魔術協会に入会を」

「無理だ」


 私が勧誘をすると、アインツはそれを即答で否定する。


「私は魔術師という器ではない。それに、今は王国騎士団で国王に仕えている身だ。ほかの部隊に現を抜かしている暇はない」

「そうですか。実にいい人材だと思ったのですが」

「私より良い魔術師など、この世にごまんといる。そんな奴らを勧誘した方が魔術協会にふさわしいと思うぞ」

「あなただからよかったのですが……。まぁ、もし心変わりいたしましたら是非ご連絡を。それでは、私はこれで」


 出口を開き、そのまま病室を後にする。

 アインツはそれを無言で見つめていた。


「さて、それでは大会に優勝し、あの少年を指名させていただきましょう……」


 誰もいない病棟の廊下で一人、私はにやりと笑った。

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