78.こいつやば♡
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「……サイエンさん」
隣で湯船につかるケーナちゃんが、俺に声をかける。
「なんだい」
俺はさすがに裸を見るわけにもいかないので、虚無を見つめたまま返事をする。
「私、最初にサイエンさんが召喚されたとき、少し不安だったんです。この人がもしも怖い人で、痛いこととかをいっぱいされたらどうしようって。でも、サイエンさんは私が思った通りの人でした」
「……そうだったのか」
冷静に考えてみれば、こんな年頃の女の子が男と一緒に生活をしていて、何も感じないはずはないのだ。
それを、俺は「彼女が何も言わないから」と、彼女の態度に甘えていろいろな無茶を通してもらったりしたのではないだろうか。
「じつは、サイエンさんの手の甲にある契約の紋は、束縛の紋でもあるのです」
「束縛の紋?」
「そうです。その紋で主人とつながった使い魔は、主人の命令一言で殺すことができるのです」
なぜその話を今、と思った。
え? もしかしてこの子今俺を殺そうとしてるの?
「出会ったばかりの頃、私はサイエンさんの前であえて水魔法を誤爆させ薄着に着替えたことがあったじゃないですか」
「……あー」
そういえば、そんなことがあったような、なかったような。
「実はあの時、私のあの格好を見て襲い掛かってこようものなら、即座に殺そうと思ってたんです」
「……」
怖すぎかよ。俺が変態紳士を貫いていなかったら今頃帰らぬ人じゃねぇか。
「でも、今はもうそんなことしないってわかってますから」
そんな風に信用していると言葉に表されると、改めて照れる。
「……その、なんだ。俺もそんな不安に感じてるなんて知らなくってな。……申し訳ない」
今までは俺は他人のことを考えて行動できる奴だと思っていたが、それはただの慢心だった。
どうだ? 現状を見てみれば初めのほうはケーナちゃんをこんなにも不安にさせていたではないか。
……これはもう本格的に謝罪をして、今後の行動を悔い改める必要がありそうだな。
「その、俺も行動に気を付けているつもりではあるんだがな……。自分では気づかないことっているのもある。……俺は、ケーナちゃんをこの修学旅行中に傷つけたりはしていないだろうか?」
「……そうですね。直近の問題なら、今私の隣で入浴していることですかね」
「……申し訳ないですッ!!」
そういえば、いい話の雰囲気になってて忘れてたけど今一緒に入浴してる最中だったわ!
俺は慌てて立ち上がろうとして、ケーナちゃんに腕をつかまれた。
「……これは仕返し、ですっ」
そして俺の頬に当たる柔らかな感触。
「……!?」
驚きそちらに振り向くと、そこには頬を紅潮させながら口元を抑えるケーナちゃんの姿が。
うっそぉん、今ケーナちゃんもしかしてキスしたんかぁ!?
「さよならバイバイ」
俺は、風呂の熱さと想像していなかったところからのアプローチに、思わず意識を手放してしまった。




