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77.入浴タイムズ

1


 濃密だった一日を終え寮の部屋に入室すると、これまでの緊張が一瞬で緩んだような雰囲気になり、ついため息が出てしまった。


「……ふぅ」


 俺は床に敷いてある毛布の上に横になり、肩の力を抜く。

 その横では今日のことを思い出すように目をつむりながらケーナちゃんがベッドに腰かけた。

 そこで、俺は少し気になったことを質問してみる。


「ケーナちゃんは残ったA~Hブロックの代表四人の中で、だれが優勝すると思う?」


 俺の質問にケーナちゃんは閉じていた瞼を少し持ち上げ考えるそぶりを見せた。


「えー……っと、正直私には予想できません。前回優勝しているという意味では一番有力な候補としてアインツさんが優勝しそうな気がしますが、アインツさんの次の対戦相手のプロト・ネロという男性。彼は名前も聞いたことがなければ戦闘も一瞬しか見ていませんから、もし彼があの『視界簒奪サンド・ストーム』よりも強力な魔法を持っていた場合は勝ち目はわからないですね……」


 ケーナちゃんは答える。


「結局、ケーナちゃんの考えだと今年の剣戦祭は荒れに荒れているってことか?」

「はい、その認識で間違いないです。正直、あのティレア嬢ですらあれほどの強さを持っていながら何故これまで剣戦祭に出場してこなかったのか謎ですし。私程度では、だれが優勝するのかすら予測できません……」


 ということは、今回の戦いは俺の学びの場としては十分すぎるくらい最適ってことじゃないか?

 ……それにしても、今日のティレアとかいう美少女。彼女によって手数が変わるだけで強い敵にすら敵うってことが分かる戦闘をされてしまった。

 俺も、魔法以外に何か対抗方法を編み出したほうがいいのか?

 例えば、俺には自分の偽名の由来にもした現代の物理学がある。それに、化学や生物学だって多少は納めたんだ。それらをつかって爆弾みたいなものを作ったり、拳銃みたいなものを作ったりしてみるっていう手もある。


「サイエンさん?」


 危うく意識の海に漂流するところだった俺の目の前に、突然顔が現れる。


「……ん? あぁ、どうしたんだ?」

「えっと、私はそろそろお風呂に入ろうと思いまして」

「あぁ、行ってらっしゃい」


 ケーナちゃんは俺にそう伝えるとバスタオルを抱えたまま笑顔で走り去っていく。

 そして、ケーナちゃんに言われて俺も遅まきながら体が汗でべたっとしていることに気が付いた。


「さぁ。それじゃあ俺も風呂に行くとするか」


 こちらに来てから流石だと思ったのは、地球の歴史にあるいわゆる中世の技術では再現しえなかったものが魔法によって存在しているということだ。

 例えば、この浄水技術だって魔法らしい。詳しい方法はあまりわからないがなんでも錬金術を応用したらしく、水を生み出すことができるらしい。なんだそれ。チートかよ。

 ただまぁ、錬成できるのはお湯ではなくて水なので、入浴というよりかは行水といったほうが感覚的には近い。

 ケーナちゃんは大浴場のほうに向かったはずで、俺もこの都市に来てから大浴場は利用してなかった。ということで、この機会にと今日は大浴場を利用することにする。


「入り口は一つなんだな」


 なんとなくそんなことを思いながら暖簾をくぐり、そこで気づいた。

 入り口が一つ……? それって混浴なんじゃ……?

 気づいた時にはもう遅く、その足はすでに脱衣所へと侵入を開始していた。

 目の前に広がるユートピア。

 あぁ……、これが俺の求めた理想郷なんだ……!!

 とか言っとる場合ちゃうぞ!!

 一応混浴だから俺が入ったところで悲鳴なんて上がることはないが、それにしたって同い年くらいの子たちは顔を赤らめてるじゃないか! というか、見られたくないなら自室の浴室を使ってほしいのですが!!

 そして、俺の視線は目ざとくケーナちゃんを見つけた。

 見つけてしまった。


「ワーオ、ビューチフル……」


 思わずつぶやいて、慌てて口を閉じる。

 今までも何度かケーナちゃんの肌を見てきたことはあるが、ケーナちゃんが意識をもって肌を晒していたというのはあまりにも少ない。

 というか、今までのは看病とか、そういうやむを得ない理由があったしその場その場で必死だったから意識をそらしてきたけど、今回のこれは完全にやむを得ないものではない。

 あぁ、すっごい。すっごいよ、ケーナちゃん。あぁ、すっごい。


「あれ……、サイエンさん?」


 どうやらこちらに気づいてしまったケーナちゃんは、タオルを胸のあたりまで引っ張って隠す。

 ふーん、エッチじゃん。という感想を漏らしながら、努めて平静を装いながら俺はケーナちゃんに話しかける。


「俺と気持ちのケーナちゃんが時間で乗っていくんだな」

「……はい?」


 ケーナちゃんが呆けた顔をした。

 まずい。心を落ち着かせようとするあまりまともに言語を扱えてない気が、あーこれエッチだ。すっごいエッチ。


「だから、それはシトロンちゃんに俺がケーナちゃんと為せば成るってことよ」

「……サイエンさん、なんか怖いんですけど……」


 あーだめだ、えっちだこれすっごいえっち。

 ……、って、いけない!! これじゃあ俺がただの変態になってしまう! とにかく、今はケーナちゃんを視界から外しただひたすらに無心で入浴するんだッ……!!


★次回、サイエン死す────!

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