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73.なんだこのおっさん!?

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────剣戦祭二日目────


 昨日とは違い、今日は一日の頭から剣戦祭の本戦が行われるらしいが、俺は考え事に脳のキャパシティを割かれ試合に集中できなかった。

 剣戟音をBGMにしながら、俺はただひたすらに今後の戦闘をどうすればいいか考えていた。

 もちろん、試合が始まってはじめのうちは戦闘方法を盗もうと注視していたが、見ているうちにほとんどの参加者が型に倣った一辺倒の似通った戦いばかりをするもんだから、飽きてしまった。

 確かに参加している武人たちが偏った型を使用しているというのは普通に考えてみればそれだけ応用の効く強いものなのだろう。

 しかし、俺はそれほどまでに鍛える時間もなければ基本もない。

 数の教団から答えを出せと急かされているこの状況で、彼らのレベルまで鍛えてなおかつ技を習得するというのは不可能だろう。

 こういう時に魔導師でも参加していれば戦闘に活かせるのかもしれないが、初日に見たプロト・ネロ以外に魔導師は参加していないようだ。

 まぁ、確かに最強の武人を決める大会みたいなものに魔導師が参加するというのは、ルール上厳しいものがあるのだろう。

 しかし、こちらとしてはもう一人くらい参加していて欲しかったものだ。

 そうやって何か戦闘に活かせないか考えているうちに、気がつけば本戦の残りの面子も終盤に差し掛かっていた。


「さてお待ちかね、本日最後の挑戦者! その美貌で倒れた男は数知れず、そして力も併せ持っているなんて天は二物を与えるという最たる例じゃないのか!! ティレア・マーティン!!」


 闘技場の端から優雅にやってきたのは、これから戦闘するとは思えないフレアスカートでピンクのドレスを纏った超絶美人。金髪のドリルツインテがいかにもお嬢様という感じだ。

 見た目の年齢で言えばケーナちゃんたちよりは年上に見えるが、それでも子供っぽい。年齢でいったら十七、八歳くらいか?

 そして、その右手に握るは黒い日傘。

 筋肉はドレスの下が見えないのでなんとも言えないが、あまり鍛えているようには見えない。

 闘技場の真ん中まで歩いてくると、スカートの端をつまんでそっと会釈をした。

 本物のお嬢様っていうのはああいうのをいうのかも知れない。


「マーティン嬢といえば、あのティレア商会会長の孫娘に当たる方でしたか?」


 グランツェがボソリと呟く。


「ティレア商会?」

「ええ。ティレア商会というのはヴァラン国で創立され、今や全世界で宝石商のトップに君臨しているまさに豪商ですよ。噂だと麻薬の密売人もやっているとか」


 ほう。実際に本物のお嬢様といった感じなのか。

 ならば、このお嬢様がこの戦いに参加する理由はなんだ? 名声……はすでに得ているようだし、違うだろう。

 それにしても、あんな少女が本戦に出てくる程この祭は弱者が多いわけではないだろう。

 ……考えられるのは、賄賂でここまでのし上がってきたか、もしくは……、見た目通りの実力ではないかのどちらか。

 俺的には後者だと嬉しいんだがな。

 なんか、如何にもな魔法を使いそうだし。


「対するは、街でこの男を知らない人間はいない、女たらしの頂点、フィアー・ディエゴ!!!」


 紹介され、ティレア嬢の反対側から入場してきたのはなんと、屋台でパイをおまけしてくれたおっさんだった。


「おっさん参加者だったのかよ!!」


 その顔を知っていたはずのケーナちゃんも、目を見開いて固まっている。この様子だとおそらくあのおっさんが参加者であるとは知らなかったんだろう。


「それではHブロック決勝戦、始めッ!!」


 司会者の合図によって、戦いの火蓋は切って落とされた。

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