69.望まぬ邂逅
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数時間ほど魔法を練習したあたりで違和感を感じた。
……魔法が全く身についていない。
「『低周破動』」
魔法を発動してみるが、以前の感覚で唱えたそれは全くと言っていいほど反応を示さなかった。
光が現れるとか、キーンという音が聞こえるとか、そういうわけでもないのに、ただ魔力が吸われている感覚。
……この魔法だけは、他の魔法と勝手が違うのか?
「『低周破動』」
今度は別の体勢で魔法を使ってみるが、同じく魔力を消費して全く反応が返ってこなかった。
……まぁ、これは音響兵器と言って差し支えなく、発動者本人に一瞬だけでも体をうごかせなくなるような音が届くのは問題だから聞こえていないだけかもしれないが、それにしたっておかしい。
とにかく今日の練習はここまでにして夕食を摂ろうと振り返り少し歩いたところで、後ろから声がかけられた。
「君が噂に聞く器の少年だね?」
こいつは、いつ俺の後ろに立った?
先程まで魔法を練習していた時には人影は微塵も見えなかった。
そして、振り返った直後に後ろから声をかけられるとは、それこそ瞬間移動して現れたとしか思えない。
「……人違いだと思いますよ」
振り返って一応シラを切っておく。
見たところ日本人っぽいイケメンの顔立ちの青年だ。
髪は黒く、肌は白い。瞳の色も黒。
転生者かその類か? それにしても、放たれているオーラが尋常じゃない。
闘技場で戦っていた四人、あの人たちが全員束になってチート並みに連携が取れていたとしても勝てる相手には見えない。
「隠さなくてもわかるさ。僕も君と同じ器を持った男だからね」
男はそのまま腰を折り曲げながら礼をした。
「申し遅れました、僕はハヤト・クレセント。本名は橘花隼人、僕も君と同じ召喚者だった」
そう言って目の前に立っていたのは、今俺が手に持っている魔道書の著者本人だった。




