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67.サイエンの決意

1


「し、勝者はプロト・ネロ!! 一瞬、まさに一瞬の出来事でした!」


 なにが起こったのかわからない。

 確かなのは煙幕に包まれた途端、一瞬にして相手が敗北したということだけだ。


「ケーナちゃん、このレベルはどうなんだ……?」


 俺にはこれが本当に高いレベルなのかどうかが判断できない。

 いや、レベルが高いことは火を見るよりも明らかなんだが、これが例年に比べてどうなのかということだ。


「正直、あの人物に勝てる人は少ないと思います……。それこそアインツさんや、歴史に名を残しているような英雄でないと……」


 ……。異常だ。

 この剣戦祭、たしかに世界で指折りの強者しか集まらないとは聞いていたが、格が違いすぎるだろ。

 今後でてくるであろうもっと強い人物たちの常軌を逸した戦いが見れるというのはなかなかおもしろいが、それと同時に怖くもある。

 もし戦争が起きたとして、今後この戦いに現れるような人物と戦うことになったとしたら?

 俺はどんな風に過ごせばいいのかわからない。

 大人しく投降するのだろうか? それとも勝てないとわかっていて戦いを挑むのだろうか?


「……サイエンさん?」


 ケーナちゃんに袖を引かれて振り向くと、不安そうな顔をしながら会場を指差していた。


「喧嘩でも売ったんですか?」


 見れば、ネロがこちらを凝視しながら立っている。


「おいおい、んなわけねぇだろ。あんな人間に喧嘩売ってたら今頃俺はここにいないぞ」


 俺は全力で否定する。

 しかし妙だ。どうして初対面のはずなのに俺を見た?

 人違いの可能性も捨てきれはしないが、おそらくあれは俺を見ていたものだろう。ならばなぜ?

 ……考えられる理由としては北の魔女の手先がこの剣戦祭に参加していて、俺を排除しにきたとかだろう。逆に、現段階で俺が狙われるような理由はそれしか思いつかない。


「とりあえず、警戒はしておこう」


 俺は自分を戒めるようにポツリと呟いた。


「本日の試合はここまでとなります。明日はBブロック本戦を行いますので、是非ご来場ください。繰り返します────」

「……今日は終わりみたいですね」


 気づけば空は赤く染まり、まもなく夜が訪れることを知らせてくれる。


「帰るか」


 周囲からは解散を惜しむ声が聞こえる。

 だが、俺は一刻も早くここから離れたい気持ちでいっぱいだった。

 いち早く、新たに魔法を習得するために。

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