64.試合開始ィィィ!!
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「さぁ、今年も始まりました、剣戦祭! 今年は腕利きがたくさん集まっているようで、私も今から興奮してますよ!」
先ほどまで会場内で注意事項を伝えていた男性に変わり、女性の声がどこからともなく聞こえる。
「この声が聞こえる奴も魔法なのか?」
地球ではこういうのはスピーカーがあったが、こちらの世界にそんな電気工学的なものは無いように思える。
初歩的なことかもしれないが、俺は気になったのでケーナちゃんに質問してみた。
「そうですね。風魔法の一種で、拡声という初級の魔法になります」
ケーナちゃんはかなり早口で説明してさっさと視線を会場に落としてしまった。
……俺より試合の方がそんなに大事なのか。
「それでは本戦Aブロック決勝戦の対戦カードを紹介致しましょう! はじめに、隣国サフラン・サフィランからの刺客、王国騎士団団長のアインツ・ヴィオラァッッ!!」
ワァァァッッっと歓声が上がる。
それに続いて左側から真っ白な甲冑姿の人物が入場してくる。
その人物は頭部の鎧を外し髪をかきあげると、客席に手を振りファンサービスをした。
「アインツですか!?」
ケーナちゃんが驚きに声を上げる。
「そんなに有名なのか?」
俺はこちらの世界に来てから一度もそんな名前は耳にしていないので、聞き返す。
「有名も何も、前回大会の優勝者ですよ! 最新のチャンピオンなんですから皆の記憶にも新しく、注目度も高かったんですが、まさか一回戦でお目にかかれるとは……!」
キラキラとした瞳でアインツという女性を凝視するケーナちゃん。
入ってきた時には男性なのかと思ったが、素顔があらわになってみると強そうには見えない。
もちろん前回の大会で優勝していて騎士団長? とかをやってるらしいからその腕に偽りはないんだろうが、女性の強さなんてたかが知れてるのでは? とも思ってしまう。
「続きまして、予選を全戦全勝という驚異の記録で勝ち進んだチェグノール連合国出身のダークホース、ボブ・アーゴラッ!!」
こちらは、先ほどのアインツよりは歓声がまばらであるが、それでも応援している人間が多いことはわかる。
「す、すごい緊張感です……」
グランツェは自分の肩を抱きながら挙動不審になっている。
「こういうのは初めてなのか?」
「あ、はい。今までは誰も誘ってはくれませんでしたし、自分からは行こうとは思わなかったので」
……おぉう。聞かなきゃよかった。
本人は気にしてないみたいだけど、どんどんこの子の過去があらわになっていくに連れて俺が悲しくなっていってる気だするんだが?
俺は哀れみながらそれを悟らせないようにそっと視線を代表の二人に戻す。
「それでは、Aブロック決勝戦、開始です!!」




